人気漫画『ちいかわ』で、主要キャラである「ちいかわ」がチャレンジした資格試験「草むしり検定5級」に合格したエピソードが更新され、Xを中心にSNSで祝福の声があがっている。

ちいかわ』はナガノ氏がXで連載中の人気漫画。草むしり検定とは、作中に登場する架空の資格で、1級から5級まである。ちいかわはこれまで草むしり検定5級に2回チャレンジしていたが、不合格。3度目のチャレンジで悲願の合格となった。

現実でも、資格試験に合格することは簡単ではない。ちいかわの合格を祝いたい弁護士ドットコムニュースの記者が、草むしり検定と日本の司法試験を半ば無理やり比較してみた。

受験資格:「誰でも挑戦可」vs「厳格な条件」

受験資格について、草むしり検定は、作中では特に条件は描写されていない。誰でも検定に挑戦できると思われる。ちいかわの友達であるハチワレも受験し、5級に合格している。うさぎも3級の資格を所持していることが明らかになっている。また、何度でも挑戦可能と考えられる。

一方、日本の司法試験は、原則として、法科大学院を修了した者、または司法試験予備試験に合格した者でなければ受験できない。2023年以降は法科大学院在学中でも一定条件下で受験可能となった。

また、受験資格を得てから5年以内に5回しか受験できない。5回不合格となった場合、再度受験するには改めて法科大学院を修了するか、予備試験に合格する必要がある。

草むしり検定5級の合格率は、作中の合格発表シーンから約7割程度と推測される。ハチワレが合格した回では受験番号「90〜110番」の受験者21名中15名が合格していた描写がある。比較的合格しやすい部類の検定と考えられる。

日本の司法試験については、近年の司法試験受験者数の減少などの理由により、近年合格率が上昇しており、2015年には22.6%だった合格率は、2024年には42.1%になっている。

●試験科目:「草の知識」vs「法律全般」

草むしり検定5級は、作中の描写によれば草むしりに関する基本知識や技能が出題される。「絶対にむしっちゃいけない草は何か?」「触るとかぶれちゃう金色の草は何か?」「根っこが長すぎる場合の対処は?」といった設問が確認できる。危険な草の見分け方や草むしりの手順、植物の知識などが出題範囲となっている。

司法試験の試験科目は憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の法律基本7科目に加え、選択科目として倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系・私法系いずれか)の中から1科目を選択する。選択式の短答式試験では憲法・民法・刑法の3科目が出題される。論文式と選択式の試験で、広範な法律分野にわたる知識と応用力が問われる。

ちいかわの草むしり検定は、司法試験でも「あるある」

実際に司法試験に合格した弁護士はどう見るのか。

司法試験から挑戦を重ね、12年越しで合格した都内の男性弁護士(40代)は「私は周りに仲間が多く、浪人中も精神的にもずいぶん支えてもらいました。この点はちいかわと同じく、環境に恵まれていたと思います」と振り返る。

一方でつらい思いもしたという。

「同期の仲間が先に次々と合格していき、自分だけが社会から取り残されていく気持ちでした。司法試験は年に1回しかありません。法科大学院を卒業した後の受験では、アルバイトなどを除いては社会から隔絶された状態で受験勉強を続けることになりがちです。2回目以降の受験は孤独との戦いだったという方も多いと思いますね」

「受験中は、何度も試験の夢を見ました。落ちる夢の方が多かったですが、受かる夢を見てしまい、目が覚めてガッカリすることも多々ありました」

●合格発表を友人と見に行って起こる悲劇

ちいかわは5年越し、3度目の挑戦だった。この弁護士は「ちいかわは、つらいことも多かったはず」と慮る。

「毎年、合格発表日に、法務省前の掲示板に合格発表を見に行っていました。最初の受験のときには、現地で一緒になった友達はみんな合格していて、私だけが落ちていました。仲間達もとても気まずかっただろうと思います」

ちいかわ』でも、一緒に受けた相棒のハチワレだけが合格してしまったこともあった。

合格後は、実務の傍ら後輩の受験指導も行っているという。「草むしり検定と司法試験の一番の共通点は、仲間が大切であるということでしょうか」と話す。

草むしり検定5級の合格率は司法試験より高く、受験回数に制限もない。しかし、どちらもあきらめない気持ちと周囲の支えがあってこその合格といえそうだ。

ちいかわ「草むしり検定」合格に、12年越しで夢を叶えた弁護士も共感「つらいこともあったはず」