防犯カメラ設置の是非

 今、学校教育の現場で防犯カメラの設置を求める声が上がっている。長崎県佐世保市の小学校で先月、男性教諭が授業中、消しゴムを投げる児童を特定するため、パソコンのカメラで児童らを無断で撮影し問題となった。

【映像】防犯カメラから見た教室の様子

 学校側は「無断の撮影は児童への配慮に欠ける」とし、市の教育委員会によると、男性教諭は児童らに謝罪したということだが、SNSなどでは「防犯カメラがあれば、教師が撮影する必要もなかった」といった意見もあがっている。

 そして、実際に教室への防犯カメラ導入を検討しているのが熊本市。その目的は小中学校のいじめや体罰を防ぐためだという。「当事者の証言のみではなく、それを裏付ける客観的な証拠が確保できる」(熊本市教育行政審議会の答申から)。

 さらにもう一つ、防犯カメラ導入議論を加速させているのが、相次ぐ教員の犯罪だ。埼玉県所沢市では、勤務先の小学校の児童を盗撮するために、教室に侵入したとして、男性教師が逮捕。また、名古屋市横浜市の教師2人が女子児童を盗撮した画像などをSNSのグループ内で共有したとして逮捕される事件。SNSでは、防犯カメラ導入をめぐり、「娘を通わせている立場として、全教室に防犯カメラ設置を」「カメラを設置し、映像管理は学校以外の組織で」「カメラで子どもを束縛しないでほしい」との声があがっている。

 一方、文部科学省は教室への防犯カメラ設置について、慎重な考えを示している。『ABEMA Prime』では、この是非について議論した。

■「とにかく気にしてるのは保護者の声」「防犯カメラで代替せざるを得ない」

内田良氏

 名古屋大学大学院教授の内田良氏は、防犯カメラ導入について、「学校として撮影することを保護者に伝え、同意を取る」ことを前提とし、賛成の意見だ。「事件、事故が起きたとき、先生たちはほとんど見ていない。特にいじめの場合、被害者、加害者がいて、さらにその保護者が『うちの子は加害してません』となったとき、事実がわからないまま、話だけこじれていく。保護者への説明のためにもカメラが必要な側面もある」。

 また、「(先生は)長時間労働の中、子どもが家に帰って『いじめられた』と言うと、保護者が学校に電話して、加害者は事実がわからないまま止まる。だから今、校門や玄関にカメラがある場合、それをチェックする先生もいる」とのことだ。

 そうした状況の中、「防犯カメラという選択肢が思い浮かんでしまう現状はあるのではないか」といい、「とにかく気にしてるのは保護者からの声だ。それによって学校が説明しなきゃいけない状況に置かれてる。特に被害を受けた子どもの保護者が焦って、今度は加害者側が焦ってくる構造。寛容な心がなくなってきたが故に、防犯カメラで代替せざるを得ない状況ではないか」との考えを示した。

■「カメラではなく、教員の目を置くべき」

前屋毅氏

 ジャーナリストの前屋毅氏は、「カメラの有用性を発揮できるならいいが、犯人探しはマイナス面の方が大きいと感じる」と否定的な意見だ。「カメラがあることを認識してる中、いじめや体罰はやらない。逆に言えば、陰惨な形になっていく。カメラがあることで抑止ではなく、逆にエスカレートさせてしまう可能性も十分に考えなきゃいけない」。

 さらに、「『カメラがあるところではやらない』となると、証拠を撮るためのものが撮れない。そうすると、『カメラを入れたのは何の意味?』となり、証拠を撮るためにカメラを隠さなきゃいけなくなる。隠し撮りは違うところで問題になってしまう」と主張。

 その上で、「教室にカメラを置くのではなく、教員の目を置くべきだ」と提案する。「例えば副担任がいるが、それは数クラスに1人いるぐらいだ。各クラスにちゃんと副担任がいて、授業にも必ず出て、複数で担任する体制で目を行き届かせることの方がいいと思う」。

■「ハイブリッドにするのが、1番いい」

ネットで賛否両論

 防犯カメラについて、モデルで文筆家のシャララジマは「完全に反対派」だといい、「今は多分、SNSとかでいじめが起きるから、教室にカメラを付けただけで抑止力になるとはどうしても思えない」とコメント。

 アクティビスト個人投資家の田端信太郎は、「公立の学校でも、クラスによって防犯カメラあり/なしのクラスを子どもと親が選べばいいのではないか。子どもからしたら、カメラがあることで、いじめられない安心感も生まれる。弱冷房車と違う車両みたいな感じで、住み分けるしかないと思う」との見方を示す。

 コラムニストの河崎環氏は、「ハイブリッドにするのが、1番いいと思う。つまり、生徒同士の人間関係を把握している先生の目と、現実として全てをフラットに撮影しているカメラ。それは両方あるに越したことはないとは思う。ひょっとすると、そういう方向性になっていくんじゃないか」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)

生徒への注意に無断撮影、性被害も…“教室に防犯カメラ”設置はアリ?賛成派「学校が気にしてるのは保護者で、カメラで代替せざるを得ない」否定派「カメラでなく、教員の目を置くべき」