シャープは、2025年6月27日大阪府堺市のシャープ本社多目的ホールにおいて、第131期 定時株主総会を開催した。

シャープは、本社の建屋と土地を積水化学工業に売却するとともに、大阪市の堺筋本町に本社を移転することを発表しており、堺市の本社での株主総会の開催は今回が最後と見られる。鴻海傘下となり、最初の株主総会となった2017年から、ここで開催されてきたが、バスや車で訪れる必要があるため、株主からは不便さを指摘する声が出ていた。2017年には798人が参加したが、今年の参加は135人となった。

また、昨年の株主総会では、開催前日に社長交代が発表されるなど、注目を集めるなかで行われたのに対して、今年は5月12日に発表した2025年度業績見通しを減益計画としたことや、2027年度を最終年度とする中期経営計画が慎重な内容だったことなどが影響して、株価が下落したことに株主が反発。株主からは、「株価が低迷しているのは、シャープの商品に魅力がなく、会社にも魅力がないからだ」、「3年連続で無配。来年も無配になるのではないか」、「亀山第2工場を売却しても、また買い戻すのではないか。疑心暗鬼である」、「国内家電市場が縮小するなかで、シャープは生き残れるのか」といった厳しい声が相次いだ。また、「鴻海グループの60万人の社員に、シャープの商品を購入してもらったらいいのではないか」といった提案もあった。

冒頭の事業説明のなかで、シャープの沖津雅浩社長CEOは、社長就任から1年を経過した成果について報告。「2024年度は減収となったが、営業利益、経常利益、最終利益は大きく改善し、黒字化した。公表値に対しては売上高、利益ともに上回っている」としたものの、「シャープ単体での繰越利益剰余金が欠損の状態であるため、遺憾ではあるが無配とした。株主には申し訳なく、深くお詫びする」と陳謝した。「中期経営計画をやり切り、シャープの信頼を取り戻りし、できる限り早く復配したい」と述べた。

一方で、「2024年度は、ブランド事業に集中した事業構造の確立が着実に進展した1年になった。また、ブランド事業における低収益事業の構造改革を実行するとともに、成長への布石を複数打っており、再成長に向けた確かな基盤の構築が進んでいる」とも語った。

また、「創業の精神である誠意と創意は、シャープらしさそのものであると考えているが、経営危機やマネジメントの変化を背景に、近年、シャープらしさが徐々に失われつつあると感じており、中期経営計画で掲げた『再成長』には、シャープらしさを取り戻すことがなによりも重要である」とし、「シャープのDNAである『目の付けどころ』と『特長技術』、鴻海との協業以来、力を入れて磨き続けた『スピード』の3つの強みを生かす。ブランド事業には、従来比2倍以上の成長資金を投下し、独創的なモノやサービスを生み出すのに留まらず、これらを通じて、新たな文化を作る会社へと成長していきたい」と、中期経営計画の基本姿勢を打ち出した。

白物家電事業は、国内市場の成長は見込めないものの、生成AIを活用し、付加価値の高い商品を販売するのに加えて、シェアが低い商品については、シェア拡大施策を展開。これまで抑制していたテレビCMを積極化するなど、ブランド投資を加速する。また、B2C以外の新たなルートにも家電を展開していく考えも示した。海外では白物家電の普及率が50%に到達していない地域に対して、積極的な投資を行う考えを示し、とくにアジアを最重点地域に位置づけて、事業拡大に取り組むという。また、米州では、かつては電子レンジの販売だけに限定していたが、5年前からキッチン周りの品揃えを強化し、冷蔵庫、食洗機、換気扇などを用意。その結果、毎年高い成長率を遂げていることをアピールした。

一方で、テレビ事業については、「シャープはやめない」と断言。「テレビは、家のなかにある大きなディスプレイである。家まるごとという観点から、AIoTを進めるなかで、テレビ事業をしっかりとやることが大切になる。中国メーカーの追い上げがあるが、日本のメーカーとして、ナンバーワンの地位を築いていきたい」と述べた。ただ、海外テレビ事業については、戦えるところと、戦えないところを見極めて、人員をシフトし、テレビの新たな用途や、ソリューションの開発に振りむける」とした。

テレビのコモディティ商品はODMやOEMを活用した開発、生産を行い、付加価値モデルはシャープが持つ中国の工場で生産するという。

シャープでは、2025年度業績見通しにおいて、スマートワークプレイス事業で170億円の減益を想定。その理由として、Windows10のサポート終了に伴う、買い替え特需の反動や、米国における関税政策の影響懸念を理由にあげていたが、株主からは、下期からのGIGAスクール構想第2期の需要があること、Dynabookの経営トップからは、販売台数は増加し、金額は横ばいといった内容の発言が報道されており、減益の規模が大きすぎるとの指摘があった。

沖津社長CEOは、「Dynabookが販売しているPCと、GIGAスクール向けPCとは付加価値が異なり、1台あたりの利益が異なる。買い替え特需の反動はすべて挽回できない。また、MFPの販売の3割を占める米国での関税影響を硬めに見込んだ。さらに、欧州でのMFP需要の落ち込みも減益に影響している」と回答した。

また、鴻海とシャープの関係についても説明。「鴻海グループの劉揚偉董事長は、シャープの会長も兼務しており、頻繁に来日し、一度来ると3日間に渡って指導を受けている。

そこでの発言を聞いていても、鴻海グループにとって、シャープは重要な企業であるという認識をしてもらっている」と述べた。

トランプ関税の影響についても回答し、「MFPおよびキッチン家電は、タイで生産を行い、米国に輸出している。いまは在庫があるため、それほど大きな影響は出ていない。しかし、2025年度第2四半期には影響があるだろう。市場動向を見ながら売価に反映することも考える。生産拠点の移転については、トランプ大統領の4年の任期ということも考えて、物事を判断しなくてはならない」と述べた。

なお、株主総会の所要時間は92分。提出された3つの議案はすべて可決された。
大河原克行)

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