
集英社の「少年ジャンプ+」で連載されたタイザン5(ファイブ)の漫画を原作にした、宇宙人タコピー(CV.間宮くるみ)と子供たちの切なくもハッピーな物語「タコピーの原罪」(毎週土曜夜0:00-/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Lemino・U-NEXTほかで配信)。本記事では、第1話「2016年のきみへ」を振り返る。タコピーとしずか(CV.上田麗奈)の出会いから始まる今話では、心と体の痛みに耐え続けるしずかに笑顔を取り戻すため、タコピーが奮闘する姿が描かれた。タコピーの純粋さがもたらす辛い現実や、中盤の衝撃的な展開が大きな反響を呼び、配信開始直後からSNSには視聴者のコメントがあふれた。(以下、ネタバレを含みます)
ある夏の日。小学4年生の少女しずかは、タコそっくりの宇宙人に出会う。ハッピー星から来たという宇宙人は、宇宙にハッピーを広めるために旅をしているという。宇宙人の難解な名前を聞き取れないしずかは、その見た目から“タコピー”と呼ぶことに。
泣くほどお腹が空いていた自分に、パンをくれたしずか。親切にしてくれたお礼に、タコピーは空を自由に飛べるハッピー道具“パタパタつばさ”を勧めるが、しずかは下敷きを買いにいくからと立ち去ってしまう。しずかは空を飛んだことがあるのかもしれない。そう思い込むタコピーが、しずかのランドセルに書かれていた悪口と、その意味に気づくことはなかった。
翌日、しずかはタコピーを抱きかかえて土管に隠れていた。しずかに気づかず、おしゃべりしながら歩いていくクラスメイトのまりな(CV.小原好美)とその友人たち。下敷きを折ってやったと笑うまりなたちと対照的に、しずかの表情は暗い。そんなしずかに、タコピーは今日こそお礼がしたいと“ハッピーカメラ”を取り出し、自分としずかの写真を撮影する。しかし、しずかはこの日も下敷きを買うため、「とっておきの機能」を聞く前に去ってしまうのだった。
■仲直りのためにとった行動がしずかに悲劇を招く
しずかをハッピーにするため、タコピーは会うたびにハッピー道具を紹介するが、しずかはどこか上の空。そんなある日、しずかは初めてタコピーを家へ招く。愛犬のチャッピー(CV.藤原夏海)と戯れるしずかは、これまで見せたことのない心からの笑顔を浮かべていた。父親がおらず、母親は仕事で男性と同伴しているというしずか。彼女にとってチャッピーは、どんな痛みも辛さも我慢できるほど大切な存在のようだ。
その翌日、しずかはボロボロの姿でタコピーの前に現れる。友達とケンカしたと聞いたタコピーが、友達と小指を繋ぐだけで仲直りできる“仲直りリボン”を取り出すと、しずかは進んでリボンを受け取った。ハッピー道具を使う時は、必ずハッピー星人の目の届く範囲で使うこと――タコピーの脳裏に母親の教えがよぎるが、しずかの頼みを断ることはできなかった。それが、どんな結果をもたらすかも知らずに。
しずかを心配しながらも、いつもの土管で帰りを待つタコピー。夕方になり、我慢できずしずかの家へ向かうと、チャッピーの小屋は空っぽ。静まり返った家の中で、しずかの細い足がゆらゆらと揺れていた。掟を破ったから、しずかは死んでしまった。しずかが死なない未来を迎えるため、タコピーはハッピーカメラの「とっておきの機能」で時を巻き戻す。カラフルな光が連なる光景は、しずかが信じないと言った魔法のようだった。
■身をもって知った、しずかの痛みと怖さ
記憶をとどめたまま、しずかと出会った直後に戻ったタコピーは、しずかのことをもっと知るべく学校へ同行することに。まりなのいじめが原因だとは気づかないまま、しずかを何度も手助けするタコピー。そのたびにまりなのイライラは募っていく。タコピーはそんなまりなの表情に気づき、2人はケンカしているのだろうと考える。しずかがまりなから呼び出されたのは、その翌日だった。
トイレの個室にこもるしずかに代わって、“へんしんパレット”でしずかに変身したタコピーは、仲直りするためにまりなのもとへ。ちゃんと話せばわかってくれる。タコピーの純粋な思いは、まりなの平手打ちで吹き飛ばされてしまう。まりなの言葉も耳に入らず、痛みと恐怖、逃げたい気持ちに耐えるタコピー。その目に向かって、まりながシャーペンを振り上げた瞬間、タコピーは「無理だ」と悟るのだった。
タコピーにとって二度目となる、まりなからの呼び出し。とぼとぼとまりなのもとへ向かうしずかを見つめながら、タコピーはあの時の恐怖を思い出し葛藤するが、意を決してしずかに変身。校内で助けを求めたことで、しずかは顔を殴られるにとどまったようだ。この一件を知ったクラスメイトの東(CV.永瀬アンナ)は、しずかに協力を申し出るが、しずかは大丈夫だからとその場を後にする。
まりなの父親と自分の母親が仲良くなってから、ずっとこんな感じだとタコピーに話すしずか。何もかもあきらめていたしずかにとって、純粋に自分のためだけに行動してくれるタコピーは、少しずつ心の支えになっていたようだ。「何も楽しくないと思っていたけど、最近ちょっと悪くないんだ」という言葉に、タコピーはこれからもしずかを助ける決意をあらたにするのだった。
■しずかとまりな、それぞれの事情とそれぞれの痛み
しずかに変身したタコピーに、「男に寄生して生きてるアバズレの娘」と言い放ち、憎しみに満ちた目を向けたまりな。終盤では、まりなの母親が荒れた食卓でうつむき、夫との不和とまりなへの不満を語るシーンが描かれた。まりなのいじめに耐え続けるしずかと、家庭を壊したしずかの母親への恨みを、その娘へと向けるまりな。それぞれが抱える痛みが、やるせない気分を誘った。
初回配信が始まるや否や、SNSには視聴者からのコメントが殺到。「いろんな人に見てほしい作品。各々で違う感想や感情が出てくると思うから」「前情報も無しに軽い気持ちで見たらぶん殴られたくらい衝撃だった」「『絶望』『悪意』『恐怖』の心理描写が素晴らしすぎて泣いてしまった」「タコピーの可愛さとのギャップがエグい」などの声から、それぞれに大きく感情を揺り動かされた様子が伝わってきた。
失敗を繰り返しながらも、時に体を張ってしずかを守ろうとするタコピーにも、多くのコメントが。「頑張るたびに状況が悪くなっていくのつらい」「タコピーの無邪気さとしずかの闇が交差して、感情がズタズタ」「しずかちゃん守るために必死なんだけど、自ら恐怖を経験したことで足がすくむ場面とかホント切なすぎて」など、しずかが置かれた状況との悲しいズレや、純粋無垢な姿に言及する声も多かった。
広角レンズで撮ったかのような教室の風景、笑顔から傷だらけの暗い表情に切り替わるしずかの表情、モノクロの回想で希望を象徴するかのように色を残したハッピーカメラ……。アニメだからこその巧みな描写の数々も印象深く、原作を知る視聴者を唸らせていた。
◆文=帆刈理恵(スタジオエクレア)

コメント