
モノクロ映画『ゴジラ』をカラー化した海賊版DVDをフリマサイトなどで販売したとして、大阪府の男性が6月中旬、著作権法違反の疑いで逮捕された。
コンテンツ海外流通促進機構によると、販売されていたDVDはいずれも名作モノクロ映画をもとにしたもので、男性は「著作権保護期間の終了したパブリックドメイン」であるため、合法だと主張していた。
しかし、実際は、多くの作品が保護期間内にあったという。
近年、AI技術の進化によって、古いモノクロ映像を鮮やかなカラー映像に手軽に変換できるようになった。こうした技術を使い「名作を現代に蘇らせた」と称してカラー化DVDを販売する例も出ているが、法的に問題はないのだろうか。
AI時代の新たな著作権侵害について、桑野雄一郎弁護士に聞いた。
●パブリックドメインなら自由に使える?──元のモノクロ映画が「著作権保護期間の終了したパブリックドメイン」なら、自由に使えるのでしょうか。
著作権の保護期間が終了している作品であれば、基本的に自由に利用することができます。ただし、1971年(昭和46年)以前の旧著作権法の時代に作られた作品や、海外作品の保護期間は、非常に複雑です。
古い作品であっても保護期間が残っている場合があり、保護期間が終了したかどうか、終了したとしていつ終了したのか、終了していないとしたらいつ終了するのかについて見解が分かれる作品もあります。
今回の事件で問題となった『ゴジラ』は、旧著作権法の時代に公開された作品で、警察は旧著作権法の規定に基づいて、保護期間が終了していないと判断し、摘発に踏み切ったと考えられます。
●AIカラー化の注意点は?──仮にパブリックドメインの作品であれば、AI技術でカラー化して販売するのは問題ないのでしょうか。
作品に改変を加える行為は「同一性保持権」という著作者人格権の侵害にあたります。この権利は、著作者が死亡することで消滅しますが、死亡後も、生前であれば侵害になる行為は禁止されています。
侵害があれば、500万円以下の罰金刑が科される可能性があります。また、遺族などから差し止めや名誉回復措置を求められることもあります。
著作権の保護期間と同じではありませんから、仮に著作権が切れていたとしても、今回のような改変行為には慎重になる必要があります。
●「合法だと思っていた」では済まされない──販売者が「合法だと思っていた」と主張した場合、その責任は軽くなるのでしょうか。
著作権の保護期間が終了しているかどうかは法律で決まっていますので「パブリックドメインだと思っていた」「合法だと信じていた」としても、責任が軽くなることはありません。
今回のようなケースでは、複製権や頒布権の侵害として著作権法違反(著作権侵害罪)に問われます。有罪となれば、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科される可能性があります。
すでに述べたように、著作権の保護期間は非常に複雑で、特に旧著作権法の時代の作品や、海外作品は注意が必要です。安易に自分だけで判断するのは避けたほうがいいでしょう。
【取材協力弁護士】
桑野 雄一郎(くわの・ゆういちろう)弁護士
鶴巻町法律事務所。「出版・マンガビジネスの著作権(第2版)」(共著)(CRIC)、「生成AIの利用と著作権侵害罪」特許ニュース16045号、「小説・漫画作品の実写映像化に関する著作権法上の問題点」特許ニュース16289号等。
事務所名:鶴巻町法律事務所
事務所URL:http://kuwanolaw.com/

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