
ゲーミングパソコンで重要なのはCPUとGPUのバランスということはよく耳にする。ひと昔ふた昔前であれば、GPUに予算の大半を注ぎ込んだようなゲーミングパソコンも成り立っていたが、昨今はCPUパフォーマンスがかなり重要になっているのは周知のことと思う。
ユニットコムのゲーミングパソコンブランド「LEVEL∞M-Class」から登場している「LEVEL-M8A6-R97X-RLX」は、CPUにAMDの「Ryzen 7 9700X」、GPUにNVIDIAの「GeForce RTX 4060」を搭載するゲーミングパソコンだ。価格は21万4800円。
アッパーミドルCPU+ミドルレンジGPUという、CPU側が少し格上の組み合わせとなっている1台だが、この組み合わせがゲーミングパフォーマンスへどのように表れるのかはとても興味深い点だ。
今回、LEVEL-M8A6-R97X-RLXをお借りすることができたので、さっそくそのパフォーマンスを見ていくことにしよう。
置き場所の自由度が高いコンパクトなミニタワー
まず、LEVEL-M8A6-R97X-RLXの筐体を見ていこう。LEVEL∞M-ClassのPCケースは、コンパクトなMicro ATX規格対応のミニタワーPCケースで、サイズはおよそ幅206×奥行432×高さ411mm(最大突起物除く)となっている。
今回試用したのはホワイトモデルだが、注文時のカラーバリエーション選択でブラックモデルを選択することも可能。サイドパネルにはガラスサイドパネルが採用されており、RGB LEDイルミネーションファンも標準搭載。多彩な光で彩られるゲーミングパソコンを楽しめるだろう。
なおRGB LEDイルミネーションの発光はPCケース側で制御を行なうタイプで、PCケースに備わるLED切り替えボタンで発光パターンを切り替え可能。ボタン長押しでRGB LEDの消灯も可能なので、イルミネーションが不要な場合でも安心だ。
フロントI/Oまわりは天面の正面向かって右前方に配置。前方から電源ボタン、USB 3.0 Type-A×2、ヘッドセット端子、そしてLED切り替えボタンが並んでいる。
背面側のコネクターは極めてシンプルで、マザーボード側のI/Oパネルには、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.0 Type-A×2、USB 2.0 Type-A×2、有線LAN端子(1000BASE-T)、HD Audioコネクターが並ぶ。ビデオカード側の映像出力はHDMI×1にDisplayPort×3と一般的な構成となっている。
イルミネーションに彩られるPC内部。色々とカスタマイズも可能
次に、LEVEL-M8A6-R97X-RLXの内部パーツも確認していこう。ガラスサイドパネルは上辺2か所のローレットネジで留まっているタイプで、工具がなくても簡単にパソコン内部へアクセス可能だ。
内部のパーツ構成は至ってシンプル。マザーボードに「AMD A620チップセット」を搭載するMicro ATXマザーボードを中央に備え、RTX 4060ビデオカードとRyzen CPUが装着されている。各パーツから伸びる配線もしっかりと裏配線にまとめられている。電源ユニットは80PLUS BRONZE認証の550W ATX電源を搭載。
なお、試用機はもっともベーシックといえる構成で、CPUクーラーにはトップフロー型のリテールクーラーを装着しているが、注文時のカスタマイズでサイドフロー型CPUクーラー(+3700円)や240mm水冷CPUクーラー(+1万9800円)に取り換えることも可能だ。
RGB LEDイルミネーションファンに関しても、試用機はベーシック構成の状態。12cmファンが天面×2基と背面×1基の計3基、排気方向で搭載されている。こちらは前面に吸気ファンを備えないが、注文時のカスタマイズで前面に2基の吸気ファンを追加したファン5基モデルを選択(+2000円)することも可能だ。カスタム料金も安価なので、個人的にはファン5基モデルの選択をオススメしたい。
基礎ベンチではRyzen 7 9700Xの高いパフォーマンスを確認
LEVEL-M8A6-R97X-RLXが搭載するCPU、Ryzen 7 9700Xは、AMD Ryzenシリーズの最新世代アッパーミドルレンジに位置するCPUだ。ゲーミング性能を大きく向上させる3DVキャッシュは搭載しないが、8コア/16スレッドのCPUコア構成で動作クロックは最大で5.5GHzに達する高いパフォーマンスが特徴となっている。
一方GPUのRTX 4060は、NVIDIAのRTX 40世代のミドルレンジにあたる製品。CUDAコア数は3072基でビデオメモリーはGDDR6 8GBを搭載し、フルHDゲーミングを強く意識しているGPUだ。後継モデルの「GeForce RTX 5060」が登場しているものの、RTX 4060はフレーム生成技術にも対応するので、まだまだ当分の間は現役で活躍できるGPUといえるだろう。
なお、システムメモリーは16GB(DDR5 8GB×2)を標準搭載。一般的なゲーム用途であれば必要十分なメモリー容量だ。ただ、LEVEL-M8A6-R97X-RLXのマザーボードにはメモリースロットが2基しかないため増設時は全取り換えとなってしまう点に注意。
将来を見越すのであれば注文時のカスタマイズで最初から32GB(16GB×2)以上のシステムメモリーを搭載した方がいいかもしれない。
ここからは、いくつかの基礎ベンチマークを回してLEVEL-M8A6-R97X-RLXの基礎的なパフォーマンスを探っていこう。
まずは3DCGのレンダリングを通じてCPUのマルチスレッド/シングルスレッド性能を計測する「CINEBENCH 2024」を実行。
結果はマルチコアが1072pts、シングルコアが132pts。とくにシングルスコアー130pts超えはかなり高い成績といえる。CPUのシングル性能は大半の処理において動作の機敏さに直結するため、LEVEL-M8A6-R97X-RLXは様々な場面での快適な動作が期待できるというわけだ。
続いて、実アプリケーションに近い負荷でPC全体の性能を測る「PCMark 10」(Ver.2.2.2737)をチェック。
総合スコアーは9180で、その内訳はアプリ起動速度、ビデオ会議、Webブラウジングの性能を測る「Essentials」が11349。表計算や文書作成のオフィスソフト性能を測る「Productivity」が12491。写真編集や動画編集、3DCG製作などのクリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation(DCC)」が14809を記録した。
,p> Essentials、Productivity、DCCの各項目がスコアー10000を大きく超える高いスコアーを記録しており、これもRyzen 7 9700Xが持つ高パフォーマンスの賜物といえる。ゲーミング以外の用途でも快適な動作を期待できるはずだ。次に、3Dグラフィックス性能を測るベンチマーク「3DMark」(Ver.2.31.8385)を実行した。
3DMarkはGPU性能が重要なベンチなので、RTX 4060の素性がよく見える結果となっている。フルHDベンチマークのFire Strikeのスコアーが飛びぬけているのは、フルHDゲーミングをターゲットにしたRTX 4060らしい結果といえるだろう。ただ、WQHDベンチマークのTime Spyも少し健闘しており、WQHDゲーミングにも期待を感じさせる部分が見られた。
一方でレイトレーシングや4Kを含む重量級ベンチのSpeed WayやSteel Nomadはかなり苦戦しており、重量級グラフィックスのゲーミングは荷が重いという印象を受ける。
ストレージ性能も計測しておこう。ストレージの転送速度は「CrysrtalDiskMark 8.0.4」を用いて計測する。なお試用機に搭載されていたストレージは、PCI Express Gen4接続の1TB M.2 NVMe SSDだった。
結果はシーケンシャルリード4075MB/s、シーケンシャルライト3183MB/s。PCI Express Gen4接続としてはエントリークラスの性能だが、PCI Express Gen3世代で考えるとトップクラスともいえるスコアーで十分な性能が出ている。
1TBという容量も現時点では必要十分。ただLEVEL-M8A6-R97X-RLXはマザーボード上にM.2スロットを1本しか持たないため、M.2 SSDの増設ができない点は要注意だ。
フルHDゲーミングは快適!フレーム生成を武器にWQHDゲーミングも視野に
では、いよいよゲーム系ベンチマークや実際のゲームタイトルを用いてLEVEL-M8A6-R97X-RLXのゲーミング性能をチェックしていこう。
今回用意したゲームタイトルは次の通り。]
「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」:定番MMO RPGベンチマーク。動作は軽量級。
「Apex Legends」:定番人気FPSタイトル。動作は軽~中量級。
「F1 25」:毎年リリースされる恒例のレーシングゲーム。動作は中~重量級。
「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」(以下、MHワイルズベンチ):大人気ハンティングアクションゲーム最新作のベンチマークソフト。動作は重量級。
「サイバーパンク 2077」:発売後も積極的に最新グラフィックス技術を取り入れ続ける重量級AAAタイトル。
いずれのタイトルも解像度は1920×1080ドット(フルHD)、2560×1440ドット(WQHD)、3840×2160ドット(4K)の3パターンを計測。画質設定についてはフルHDで快適に動作する範囲を想定してタイトルごとに調整を入れている。
1本目は定番ベンチマークのひとつファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークから。画質設定はプリセットから「最高品質」を選択。FSRやDLSSなどのアップスケーラーは無効としている。
フルHDでは“非常に快適”の評価が得られ、WQHDでも“快適”という評価が得られた。4Kになるとさすがに“普通”の評価に留まったが、WQHD解像度までは十分実用的にプレイできそうな結果といえるだろう。
2本目は人気FPSタイトル「Apex Legends」。グラフィックス設定はすべてのオプションを最高の状態とした「最高設定」を使用した。アンチエイリアスは「TSAA」を選択。
射撃訓練場で特定のルートを移動したのちに「バンガロール」の「スモークランチャー」を射出して煙がなくなるまで待機。という一連の動きに対してのフレームレートを計測している。
フレームレートの計測には「CapFrameX」というアプリを使用。平均フレームレートの他に、データ全体を100分割し最小値から1%の数値を「min(1%)」として最小フレームレートの代わりに記載している。
フルHDおよびWQHDでmin(1%)が100fpsを上回っていることが確認できた。より本格的に挑戦するのであればグラフィックス設定を落とすべきだが、カジュアルにプレイする分には最高設定でも十分なパフォーマンスが得られるだろう。4Kでもmin(1%)が60fpsを維持できているので、プレイ自体には全く問題ないはずだ。
3本目はF1 25。毎年グラフィックスに更新を入れてくる同作は、今回のリリースでパストレーシング描画を含む超重プリセットを用意しているのだが、RTX 4060には荷が重すぎると判断しプリセットは「超高」を選択。ただこれでもレイトレーシングを含む重ためのプリセット設定だ。
DLSSはクオリティ設定。フレーム生成のDLSS FGも有効な状態とした。計測はゲーム内ベンチマークを利用する。ベンチマーク条件はサーキット「バーレーン」、天候「晴天」とした
フルHDでは問題ないパフォーマンスを見せていると同時に、WQHDでも十分プレイ可能な性能を見せてくれたのが驚きだった。一方で4Kになると急激にパフォーマンスが落ちるのはビデオメモリー容量をオーバーしてしまうからかもしれない。
4本目のMHワイルズベンチでは、グラフィックプリセット「高」設定を使用し、レイトレーシング「OFF」、DLSS「パフォーマンス」、フレーム生成「ON」の設定でベンチマークを行なうこととした。
結果、フルHDとWQHDの両方で“快適にプレイできます”との評価が得られた。一方で4Kではさすがにスコアーも大きく落ち込む結果となったが、RTX 4060のメインターゲットを考えると大健闘の結果といえるはずだ。
5本目は、重量級AAAタイトルのサイバーパンク 2077に用意されているゲーム内ベンチマークを用いてパフォーマンス計測を行なった。画質設定はクイックプリセットからレイトレーシング処理も含む「レイトレーシング:ウルトラ」を選択、DLSS FGのフレーム生成も有効にした状態で測定している。
結果はフルHDで平均フレームレートが100fpsを記録した一方、さすがにこの設定ではWQHD以上で大きく落ち込む結果となった。ただもともとWQHD以上は守備範囲外、それよりフルHDであれば重量級AAAタイトルの高画質設定でもしっかり快適に遊べる点を重要視したい。
WQHDでもイケるいいバランスのゲーミングパソコン!
以上の検証結果から、LEVEL-M8A6-R97X-RLXはフルHDゲーミングで十分なパフォーマンスを見せてくれたと同時に、多くのゲームタイトルでWQHDゲーミングも視野に入るパフォーマンスを感じさせてくれた。
本来RTX 4060はフルHDゲーミングをターゲットとしたGPUのはずだが、フレーム生成対応のゲームタイトルが増えてきたことがひとつの追い風になっていることは確実だろう。
また、高パフォーマンスCPUのRyzen 7 9700Xと組み合わせることで、RTX 4060の性能を十二分に引き出せている側面も十分あり得ると考えられる。
ゲーミングにおいてCPU性能の重要性が高まっている状況もあり、ミドルレンジなRTX 4060とアッパーミドルなRyzen 7 9700Xの組み合わせは結果的にかなりいいバランスの組み合わせのようだ。フルHDゲーミングをターゲットとしながらも、余裕のあるパフォーマンスもほしいといった場合にピッタリな1台といえるだろう。

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