
週末、各社の情勢調査が発表された。この調査結果をニュース番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーター、日本大学危機管理学部教授で東科大特任教授の西田亮介氏と考えていく。
調査結果を受け、西田氏は「全体的に都議選からの傾向が続いている」と話す。
「都議選の傾向をみると、自民党、公明党、与党厳しい状態にある。その風向きは変わっていない。新興政党が多く出てきているが、そちらに関心が向いているという印象が強い」(西田亮介氏、以下同)
今回の参院選でのポイントは、自公の議席だ。自公で50議席を取るかどうかが鍵となっているが、現状をどう見ているか。
「かなり厳しい情勢だという報道が増えている。この50というのは、非改選の議員と合わせた過半数確保の数字だ。参議院の選挙は6年任期だが、3年ごとに半分ずつ入れ替えていく。過半数を割ると法案が成立しにくくなっていく。そうすると政局に繋がっていく。事前には、この50は確保するだろうとみなされていて、その後、野党が主張しているように改選過半数が争点だった。だが、最近の報道をみると、全体的に非改選の人たちも含めた全体の過半数125の維持が難しいかもしれないと言われるようになってきた」
参院選で自公が過半数割れしたときのインパクトは大きいと考えていいのか。
「とても大きい。それで事実上の政権選択の選挙だと言われている。通常、参議院選挙は政権選択ではなく、直接は政局に繋がらない。だが、今回この過半数割り込むと、やはり石破総理も責任が問われることになるだろう。衆院も少数与党だ。連立の組み替え、新しい政党に連立に入ってもらうなど、いろいろなことを考えなければいけなくなるだろう。そうなると日本の政治は大きく動くはずだ」
ANNがXの全量調査を実施 西田氏「これはかなり意味、価値がある」

続いて、ネット上の動きをANNが行ったXの全量調査を通じて解説した。こうしたSNS投稿の調査結果については、「かなり賛成」と「かなり反対」という強い意見を持つ人が多い課題ほど、投稿数が多くなる傾向がある。
「昔、X(旧Twitter)はこうした投稿データをかなりオープンにしていた。ところが、この全量データをビジネス上の収益源にするようになってから、なかなか公開しなくなってしまった。今回ANNが入手しているということは、かなり多くのコストをかけているということで、これはかなり価値があることだ。有益な分析をしてほしい」
また、世論調査と全量調査は違うという。
「世論調査は、統計的な偏りをなるべく小さくする工夫が多数されている。それに対して、X上の書き込みデータはそのような工夫が全くないままだ。したがって、その結果をそのまま鵜呑みにすべきではない」
政党別の全量調査についてはこのように述べる。
「参政党に関連する投稿が多くなっている。大事なことは『賛成』『反対』どちらも含まれているということで、参政党は良くないということを書き込む人たちも増えている印象が強い。ただし、そうしたものを全て含めて今、こういう結果になっているが、このように報じられていることも含めて、(参政党は)いろいろと考えていると思う」
続いて、主な政策の比較についてつぶやかれたものをまとめた内容は「外国人問題」「消費税」などが多くなっているが、西田氏はどのように見るか。
「『外国人問題』『消費税減税』、それから『憲法改正』『少子化対策』など含めて、こうした人気がある政策を多数取り込んでいることがわかる。因果関係ではないが、参政党の勢いと同時に増えていることがわかるだけに興味深い」
無党派層の動きもポイントに

参院選では、無党派層がどう動くのかもポイントになっている。無党派層の動きについて西田氏はこのように語る。
「やはり多くの人たちが様々な不満を抱えているはずだ。例えば賃上げ。実質賃金は4年近くにわたって下がり続けている。外国人問題は今回の参議院選挙で急に争点として上がってきている。実際、訪日外国人の数や働いている人たちの数も含めて増えているのも事実。この10年で急速に増えているから様々な衝突を経験しているはずだ。そのことに対して、まず目を向けて、対策をしないといけない。これは外国人問題だけではない。景気も悪くなっているとも言われるようになった。やはりそうした問題に対して実行的な対策をしていかないと、極端なことを主張する政党がそれらを全て掲げたメニューによって人気を博する状態が続くのではないか」
「さらに問題は、少数政党の言説を大政党や候補者も真似をしながら取り込んでいくことが起きる。少数政党の意見や議席はある意味、国民の不満の表出であり、仮に議席を取ったとしても相当数になるまで法案の提出すらできない。しかし、大政党が同じ言説を模倣するようになると、法案や政策などにも影響しうるし、その懸念が分断を招くだけに、強く懸念している」
今回の選挙でテレビ、新聞、ネットなどどう影響するのか。西田氏はこのように分析する。
「多くの人たちの情報収集行動がネット中心になっているのは疑えない。新聞はもっとも低下しているが、いくら良い情報を提供しても読まれていないものは我々の情報接触行動に影響しない。テレビは世代で大きな分散がある。若い人たちのテレビの視聴時間は短いものの、年長世代の人たちがそれなりに多く見ている。なので、ネットが中心になっていく傾向は今後も続くだろう」
ANN X全量調査
調査方法:Meltwaterによる分析
調査期間:(政党別分析)7月7日 (政策別分析)7月3日~7日まで
調査対象:非公開アカウントは含まない リポスト、引用ポスト、返信は含む
(『ABEMAヒルズ』より)

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