
「いつかはマイホームが欲しいけど、高すぎて手が出ない」「子どもは欲しいけど、キャリアが途絶えるのが怖い」「結婚・出産したら、夫との間に見えない壁ができた」。そんな漠然とした不安を抱えるワーキングマザーは少なくありません。その悩みには「お金の不安」が共通して根底にあります。本記事では、伊達有希子氏の著書『夫婦と子ども2人、世帯年収650万円。どうしたら家が買えますか?: マンガでわかる!一生お金に困らないライフプランのつくり方』(大和出版)より、現代の女性が直面するお金の問題を紐解き、自分らしい人生を送るためのヒントを提供します。
ワーママの悩みの底にある「お金の不安」
家が欲しいけれど、そもそも私たちに買える?
「家を持ちたいけれど都内の価格はかなり高く、買っても大丈夫か」はコロナ禍でのウッドショック以降、非常に多くなったご相談です。本のタイトルにもなるくらい、状況が一変しました。それまではマンションを買うか、戸建てを買うか、という悩みだったのが、そもそも買える? 買えない?という相談に変わったのも、私にとっては印象的でした。
2020年頃から日本でも顕在化した木材価格の急騰、すなわちウッドショックの影響や、大手(財閥系)ディベロッパーによる住宅供給コントロール、具体的には超富裕層向けのレジデンスなどにつられて、不動産価格が上がっています。
「いつかはマイホームが欲しい!」と考えている人は多いと思いますが、実際には買わないではなく、買えないという事態があちらこちらで起きています。つまり、今の時代に家を買うなら、“そもそも買っても大丈夫か”を事前にシミュレーションしたほうがいいでしょう。なぜなら多くの家庭で「現実と理想のギャップを埋める」という作業が必要になってしまっているからです。具体的には、購入するエリアを都内ではなく近郊地域にするとか、新築住宅ではなく中古住宅を購入の選択肢に入れることが必要になってきています。
子どもを持つか持たないかで迷っている
現時点で子どもはいないけれど、将来子どもを持つか持たないかで迷っているという相談者の方も多いです。
DINKs(Double Income No Kids 共働きで子どもは持たない夫婦)として働いたほうが、「キャリアを途絶えさせないので今はいいと思っている。でも、いつか子どもも欲しい気がしている。子どもをどうするかを夫婦で話し合わないまま、時間が過ぎていく」と不安を語る方がいらっしゃいました。
また、不妊治療を受けていて、いつまでなら治療を続けていいのかを悩んでいる方もいました。不妊治療にはお金がかかる上、仕事との両立は時間的・体力的にも大変です。不妊治療をして成果が出なかった場合、精神的にも楽ではありません。不妊治療を何年も続けても子どもを授かれなかった場合、いつか諦めなくてはならないタイミングがきます。
DINKsを続けている方と不妊治療をしている方、反対の例のようですが、どちらも、自分が本当にやりたいこと・求めているものをじっくり考えてみる必要があるという点は共通しています。そして、自分が本当に求めているものをよく考えてみるということが、豊かな人生を送るために最も大切なことなのです。
結婚・出産を機に自分の稼ぎがなくなってしまった
ここから、結婚、出産を機に積み上げてきたキャリアが途絶え、経済的な自立が難しくなることで不安と不満を持つようになったというケースをいくつかお話しします。
高校、専門学校、短大、大学などを卒業してすぐに結婚して家庭に入るという女性は少なくなりました。今では女性も就活をして会社に入り、自分のキャリアを築いていくのが普通です。それなのに、結婚して子どもが生まれたら、当たり前のように家庭を優先させることを夫が求めてきて悩んでいるという人は多いです。
「産休・育休の期間中にいつの間にか家事や子育てが自分の役目になっていて、夫は会社へ仕事に行くだけでいいと思っている」
「2人で話し合ったわけではないのに、いつの間にかそうなり、家庭内のヒエラルキーができている」
こういったことはお客様と話していてよく相談されることですし、私自身も似た経験があります。
確か次女が生まれたあとの数カ月だったと記憶していますが、専業主婦の時代がありました。その間は家にいたいからいたわけではなく、家にいなければならなかったから家にいるという感覚でした。家にいるから家事もメインでするくらいに思っていましたが、いつの間にか子育てと家事が当たり前のことになり、仕事をする時間を捻出するのも難しい日々に愕然としました。
子どもが生まれる前から独立してFP(ファイナンシャルプランナー)の仕事はしていたので、自分の稼ぎがほとんどなくなってしまったことへのショックもありました。私の場合、自営業で育休手当てがない上に、経済的に自立していることが精神的な安定にもつながることを痛感したので、早々に独立系FPの仕事を再開することを決めました。最初は平日の日中、子どもたちを預けられる時間だけと決めて、稼いだ分で家事代行サービスやベビーシッターなどを使って、お金で解決できることはお金で解決して時間を捻出しました。
とはいえ、一度育児や家事を背負うことが当たり前になって生活が固まってしまうと、女性が覆すのが大変だということもよくわかります。どこかで思い切らないと、そのままになってしまい、フルタイムに戻ることすらなかなか難しいのが現実です。夫婦がどちらも働けば、その分の世帯収入は上がるので、お金で解決できることはお金で解決すると割り切るのも手ですよ。経済的な自立にはさまざまな手段がありますが、貯蓄や投資、副業を始めてみる、スキルアップや働き方を変えてみるなどが挙げられます。
できることから少しずつ意識してみてはいかがでしょうか。
伊達 有希子 フィナンシャル・プランナー

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