絵本『ぶたすけのラッパ』

 暑いこの時期、特に注意が必要なのが車内への置き去り事故。子どもたち自身で身を守るための方法を絵本で伝える取り組みに、ニュース番組『ABEMA Morning』は注目した。

【映像】“クラクションの鳴らし方”を伝える「たすけてブーブーのうた」

 6月に発売された絵本『ぶたすけのラッパ』。主人公は、森のほいくえんに通う、ぶたの男の子「ぶたすけ」である。

 『パンどろぼう』シリーズなどで知られる柴田ケイコ氏が描く、可愛らしいキャラクターが登場するこの絵本には、ある思いが込められていた。

「車の置き去り事故がゼロになる世界を目指したいなと思っていて」(やまざきひろし氏、以下同)

 この絵本の作者、やまざきひろし氏。クリエイティブディレクター・コピーライターとして活動しながら、作家として絵本制作を行っている。

 『ぶたすけのラッパ』は、子どもの車中置き去り事故を防止する「いのちを守るえほん」として作られた。

「閉じ込められた子ども自身も自分で助かるアクションがあるんだよってことが、そもそも知られていない。もしかしたら誰かが気付いて助けてくれるかもしれないっていうのを子どもたちに一番伝えたかった」

 毎年のように繰り返される「車中置き去り事故」。子どもが自ら助けを求めるための方法として効果的だと注目されているのが、クラクションを鳴らして周囲に知らせる方法である。

 『ぶたすけのラッパ』では、子どもたちがおはなしを楽しみながら、クラクションで助けを求める方法を自然と覚えられるよう、工夫されている。

「うちは車持っていないので、そもそもクラクションがあることを知らない子どもたち、うちの子どもは分からなくて。押していいのかも知らなかった。ぶたすけの鼻を押すとぶたすけのラッパがブーって鳴るみたいな、そういうところをまず覚えてもらう」

 自身も2人の男の子を育てるやまざき氏。3年前、相次ぐ置き去り事故のニュースに「父親として何かできないか」と考え、絵本の制作に取り掛かる。

 そして、作画をお願いしたのが、やまざき氏自身もファンだと話す、人気絵本作家の柴田ケイコ氏だった。

「子どもだけじゃなくて、大人たちにも伝えたいってなったときに、柴田さんの絵はキャラクターもそうだが、子どもだけじゃなく大人も楽しめるようになっている。柴田さんに話したら、『こういうことは絶対にやるべきだ』と協力してくれて、一緒にプロジェクトが始まった」

 そうして立ち上げたのが、子どもの車中置き去り事故を防ぐための活動を行う「たすけてブーブー」プロジェクトである。

 その柱となる絵本の制作が進む中、2023年4月には通園バスなどへの安全装置の取り付けが義務化されるなど、公的な対策も進められた。

 しかし、やまざき氏は、事故を防ぐためには、普段から大人が子どもへと伝えることが大切だと話す。

絵本に込められた思い

絵本『ぶたすけのラッパ』

「『車に閉じ込められたらどうするんだっけ』って話をしたことがある。そしたら、子どもが『あ、クラクション押すんだよね』って言ってくれた。『じゃあクラクションはどこにあるの?』『ハンドルのところだよね』。絵本を読んだ瞬間だけでなく、その後の時間にいかに話をできるか」

 「たすけてブーブー」プロジェクトでは、楽曲を制作し、ぶたすけが登場する動画を配信。子どもたちが曲に合わせて楽しく歌いながら、クラクションの鳴らし方を覚えることができる。

 今後は、企業や公的機関とも連携してプロジェクトを広めていきたいと、やまざき氏は話す。

「絵本の価値は今この瞬間だけじゃなく来年も、再来年も、またその先も伝えられる。『これを読んだよ』『おすすめしたいな』ってどんどん輪が広がっていくといいなと思っている」

(『ABEMA Morning』より)

置き去り事故ゼロへ 絵本&楽曲で伝える「たすけてブーブー」プロジェクト 作者の思いとは「どんどん輪が広がっていくといいなと」