芸能事務所「タイタン」所属のお笑い芸人2人が、オンラインカジノで賭博をしたとして書類送検されました。これを受けて、タイタンの太田社長が実名報道に苦言を呈しています。

太田社長は日刊スポーツの取材に「弁護士とも相談して自首させたのに、書類送検の段階で名前が出るのはいかがかと思う」と語りました(日刊スポーツ7月6日)。自首したにもかかわらず、書類送検で実名が公表されることの是非が問われています。

● 弁護士同伴で自首したのに…社長の怒り

タイタンの公式サイトによりますと、今年3月に実施した内部調査で、所属する4人がオンラインカジノを利用していた可能性が判明しました。4人は弁護士と同伴のうえで申告して、警察の捜査に全面協力してきたといいます。

「内部調査委で明らかになって本人たちに自首させて、今回は名前の公表を避けるということだった」(太田社長・日刊スポーツ)としています。しかし、今回の書類送検では、2人の実名が報道されてしまいました。

つまり、当局が2人の実名をメディアに「発表」あるいは「リーク」したわけですが、太田社長からすれば、不意打ちだったと言えます。日刊スポーツの取材には次のように話しています。

「弁護士とも相談して自首させたのに、書類送検の段階で名前が出るのはいかがかと思う。これが逮捕されたとかであれば別だが、名前を控えるからと自首させた意味がなくなってしまう」(日刊スポーツ7月6日

● 書類送検とは?誤解されやすい手続き

そもそも「書類送検」とは、どのような手続きなのでしょうか。書類送検をされると、「クロ」と受け取られがちですが、法律上は必ずしもそうではありません。

刑事訴訟法246条本文は「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない」と定めています。

逮捕されていない被疑者については、身柄ではなく書類等を検察官に送ることから「書類送検」と呼ばれています。警察は基本的に、捜査した事件を全件送致しなければならず、これは「全件送致主義」とされています。

つまり、送検されたからといって、有罪の可能性が高いわけではなく、罪が特に悪質であると決まったわけでもありません。送検後は、検察官がさらに捜査を進め、起訴するか否かを判断します。

仮に犯罪事実が認定されたとしても、検察官が「刑事裁判で罪を問うほどではない」と判断すれば、不起訴となる場合もあります。

それにもかかわらず、書類送検の段階で実名報道されることの影響は非常に大きいといえます。特に芸能人の場合、社会的イメージの低下は、直接的に仕事に影響を与えます。

実名報道の是非

たしかに、日本国内からオンラインカジノを利用することは「賭博罪」に該当する違法行為です。

今回書類送検の理由となった単純賭博罪(刑法185条)の法定刑は、50万円以下の罰金または科料です(なお、常習賭博罪(刑法186条1項)となると、3年以下の拘禁刑となります)。

一方で、ギャンブル依存の問題もセットで考えねばなりません。タイタンでは、該当者に対する特別更生プログラムの実施もあったようです。

タイタンは3月、実名公表を控える理由として、該当者の年齢、ギャンブル依存の程度、犯行態様の悪質性、捜査機関に対する予断排除の必要性、内部調査の実効性などを考慮したと説明していました。

また、タイタン7月8日、「『自首』による捜査協力という点を重視し、今後も実名による公表は控えさせて頂きたいと考えております」と表明しました。自首したにもかかわらず、書類送検の段階で実名が報道されることの是非は、今後も議論を呼びそうです。

オンカジで書類送検、芸人自首でも「実名報道」は必要か? タイタン太田光代社長の苦言が議論呼ぶ