トランプ米大統領7月8日、日本からの輸入品に対する25%の関税導入を正式に通知した。発効は8月1日を予定しており、為替・株式市場ではすでに影響が広がっている。日本企業にとっては、既存の10%相互関税に加え、さらなる関税負担となる可能性があり、経済への打撃が懸念されている。政府は支援策の検討に着手したが、企業には対応力と構造的な見直しが求められている。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

トランプ大統領、輸入品への25%関税を通知

7月8日トランプ大統領が日本からの輸入品に対する25%の関税導入を正式に通知した。この措置は8月1日に発効予定で、すでにその影響がマーケットに出始めている。

為替は敏感に反応し、ニューヨーク市場では一時1ドル=146円23銭まで円が売られる展開となった。これは6月下旬以来の水準で、ドル買いの勢いが増している。

一方、米国市場に上場している日本企業のADR(米国預託証券)も大きく値を下げた。トヨタが4%超、日産は7%超の下落となり、任天堂をはじめとするテック銘柄も売られた。MSCI日本ETFも同様に軟調な展開となった。

日経平均株価はこのところ下げ続けており、過去8ヵ月で最も低い水準まで落ち込んだ。市場には警戒感が広がっている。

25%の関税負担、日本経済への打撃は?

4月には、日本への相互関税として「基本税率10%+上乗せ税率14%」の24%を示していたが、今回示した新税率で25%となる。これまで米国は、鉄鋼やアルミ、そして自動車部品に段階的な関税を課してきたが、引き続きこれらへの関税措置をめぐり、厳しい交渉が続く見込みだ。

帝国データバンクの試算によると、2025年度のGDP成長率はこれにより0.5ポイント押し下げられる可能性があり、企業の倒産件数も3%以上増えるリスクがあるという。

円安でも「輸出の追い風」とはならず?

今回の円安は輸出コストの上昇がそれを打ち消し、輸出企業にとって追い風にはならないという見方が強い。特に、自動車産業への影響は重いだろう。米国向け輸出額は21兆円を超え、輸出全体の約3分の1を占めている。自動車に依存する企業ほど、関税による圧力は強まりそうだ。

加えて、為替や株式市場のボラティリティも無視できない。たとえば4月の追加関税発表時、「Liberation Day tariffs」と名付けられた施策によって、日経平均は急落した。米国でも売りが波及し、リスク資産への投資意欲は大きく後退した。

マネックス証券チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、

「4月にトランプ大統領が相互関税を発表すると、『関税ショック』で世界的に株価が暴落し、米ドル/円も150円程度から短期間に140円割れへ急落に向かった。これを参考にすると、関税発動への金融市場の反応は基本的に株価急落、円高の可能性が高いだろう」

と分析する。

政府と企業に求められる対応力

現場ではすでに「これ以上のコストは吸収しきれない」という声も聞かれる。関税と為替の二重苦のなかで、価格転嫁は難しく、取引先との交渉も厳しさを増している。サプライチェーンの再構築や物流網の見直しは避けられないだろう。そして、投資家や株主に対しては、変化への対応策をどう伝えるかが問われる。

前出の吉田氏は、

7月7日に日本への追加関税が明らかになった際、米国株こそ下落した一方で、日本株は上昇、米ドル/円も円安になった。これは、実際の追加関税発動が8月とまだ先であり、交渉次第で発動されるか分からないと金融市場は受け止めたためだと考えられる。『関税ショック』とは逆に、7日の米ドル高・円安は、追加関税を嫌気した円売りではなく、別の要因、米金利上昇を受けた米ドル買いの面が大きかったのではないか」

と説明している。

このような不安定な環境、慎重さは必要だが、手をこまねいていては中長期の競争力を失うことにもなりかねない。資本投下や設備投資、リスク分散の在り方が問われている。

政府は金融庁を通じて、金融機関に対し中小企業への資金支援を呼びかけており、影響分析を行うタスクフォースも立ち上げている。ただし、公的支援に頼りすぎることはできず、企業自らがどう動くかが鍵になりそうだ。

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

(※写真はイメージです/PIXTA)