嵐莉菜

 俳優の嵐莉菜が、7月9日より放送開始の日本テレビ系連続ドラマ『ちはやふる-めぐり-』に出演する。彼女が演じるのは、野球一筋だったものの挫折し、目標を見失っている梅園高校2年生の村田千江莉だ。

 原作『ちはやふる』は、シリーズ累計発行部数2900万部を超える大ヒット漫画。2016年、2018年に映画化された『ちはやふる-上の句・下の句・結び-』では、瑞沢高校に入学した主人公の綾瀬千早(広瀬すず)が、仲間と共に競技かるた部をゼロから立ち上げ、全国大会優勝を目指して成長していく物語が描かれた。

 『ちはやふる-めぐり-』は、映画から10年後の世界が舞台となる。大きな挫折により青春を諦めてしまった藍沢めぐる(當真あみ)が、顧問として梅園高校に赴任してきた大江奏(上白石萌音)と出会い、競技かるた部を通して新たな仲間と共に成長していく姿が描かれる。そして、全国大会出場を目指し、強豪校の瑞沢高校に挑んでいく物語だ。インタビューでは、野球もかるたも経験がないという嵐莉菜に、撮影の裏側や、“第2の青春”だと語る本作への思いを聞いた。(取材・撮影=村上順一)

苦労を乗り越えた野球シーン

――今回演じられる村田千江莉は元野球部員ですが、野球をプレーする描写もあるのでしょうか?

 千江莉は幼少期から野球をやっていて、ピッチャーで、かつてはエースと言われていたような役柄です。実際にピッチングやバッティングをするシーンもあります。

――嵐さんは野球経験はあったのでしょうか? 練習で苦労したことはありますか?

 野球の経験は全くないです。初心者なので、ピッチングとバッティングフォームはかなり練習しました。その中でもピッチングはとても難しかったです。野球経験者の方々への尊敬が止まりませんでした。

――どのような点を意識してピッチングフォームを習得しましたか?

 先生に指導していただきました。野球選手それぞれフォームが違うので、結局は自分のやりやすさと、経験者っぽく見えるように意識しました。バッティングセンターなどで全然打てなかったのですが、フォームを教えていただいてから少し打てるようになったので、基本って大切なんだと実感しましたし、これを機に野球にも興味を持てました。

――どんなところに注目してほしいですか。

 ピッチングなのですが、足を上げて、その足を踏み出す瞬間が自分の中でお気に入りです。フォームをチェックするために撮影し、足元をアップにしたり、フォームを確認したりして臨んだので、楽しみにしていただきたいです。

――始球式への興味はいかがですか。

 撮影中も周りの皆さんから「始球式とかやったらいいんじゃない?」と言っていただくことがありました。ちょっとまだ照れくさいのですが、もしお話をいただけたら、もっとピッチングを練習して挑戦してみたいと思います。

『ちはやふる』との出会い、役への共感

――『ちはやふる-めぐり-』のオーディションはどのような気持ちで臨まれましたか?

 私はお芝居のオーディション自体、ほとんど経験がなかったので、自分のお芝居を見せることに緊張がありました。

――オーディションで受かった時はどのような気持ちでしたか?

 実はオーディションで演じた役は、今の役とは全然違って、大袈裟なリアクションをする役や、ぶりっ子のような役など色々なタイプがありました。オーディションは、1グループ5人くらいで3役を回して演じる形式でした。私のビジュアル的に学園ドラマは難しいだろうと自分では思っていたのですが、監督が純粋にお芝居を見て決めてくださったことが嬉しかったです。

――千江莉とご自身の共通点や異なる点はありますか?

 元気で明るいところです。真剣になるところ、こだわりが強く、負けず嫌いなところも共通しています。ただ一つ違うなと思うのは、千江莉は思ったことを大声で発してしまうところです。私もテンションが上がったら大声になることはあっても、千江莉のようにその場の空気を読まずに言えてしまう感じではないので、逆にそこはちょっと見習いたいです(笑)。

――千江莉の挫折や成長に共感する部分はありましたか?

 千江莉は野球部時代に壁にぶつかり、それがきっかけで野球を辞めてしまいます。その後出会ったかるた部に、葛藤がありつつも魅了されていく姿が描かれています。私自身そういった経験はないのですが、すごく共感できました。自分が追いかけていた夢が、自分以外の原因によって閉ざされてしまったり、壁ができたりするというのは、きっと多くの人が共感してくれる部分ではないかと思っています。そのシーンが放送された時の皆さんの反応がとても楽しみです。

競技かるたへの挑戦と魅力

――本作のメインとなる競技かるたはいかがでしたか?

 昨年の9月からかるたの練習を始めたのですが、最初は全くうまく札が取れませんでした。「払うだけ」と思われる方も多いと思いますが、綺麗に払うのがとても難しかったです。でも、練習を積み重ねていく度に上達を感じましたし、キャストのみんなと会える機会でもあったので、みんなとの練習もすごく楽しかったです。

――どんなところに注目してほしいですか。

 私が演じる千江莉はかるた初心者なので、最初は慣れていない感じを出さなければならなかったのですが、終盤にかけてどんどん上達していきます。私も千江莉と同じくゼロからのスタートでしたが、全然取れなかった札が取れるようになるととても達成感がありました。かるた経験がない方にも、ぜひ一度「払い」を体験してみてほしいです。礼儀正しさや上品さがあって、札を取る時のシュッという音や滑り心地、その魅力がドラマから伝わったら嬉しいです。

――好きな札、得意札はありますか?

 寂蓮法師の「村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ」です。これは千江莉の得意札で、キャストのみんな、一人ひとり決まった得意札があるんです。めぐるは「めぐり逢ひて」など、みんな名前にあった札があるのですが、私は村田千江莉の「村」がそれにあたります。「村雨の〜」と聞こえた瞬間にすぐに反応できます。

――クランクイン前からかるた漬けだったんですよね。

 はい。みんな7枚ある「一字決まり(いちじきまり)」を覚えているので、そこに「ちはやふる」の札を加えて試合をしたりしていました。空中で払いの練習をし始めたりと、みんなの頭の中はかるたでいっぱいでした。キャストの中には100首全て覚えている方もいるので、私も全部覚えられるように頑張りたいです。 (※「一字決まり」とは、百人一首の競技かるたにおいて、上の句の最初の一文字を聞いただけで、どの札かが確定することを指す)

――『ちはやふる-めぐり-』は嵐さんにとってどのような作品になりましたか?

 一言で言うなら「青春」です。私の高校時代はコロナ禍で、入学式もなくなったりオンライン授業があったりして、友達を作るのが難しい期間でした。この作品をやるまでは、高校生で青春が終わってしまうと考えていましたが、(上白石)萌音さんもおっしゃっていた、いくつになっても青春は取り戻せる、何をするかは自分の気持ち次第で、本作は「第二の青春」だと感じています。

 みんなと打ち解けて、好きなものを共有し、一緒に作品作りをして、心が繋がった瞬間が何度もありました。今後も必ず私の人生に大きな影響を与えてくれる作品になると思います。キャストのみんなは同世代の仲間でもありライバルでもあります。宝物のような皆さんと巡り会えました。みんながお仕事を頑張っている姿や活躍している姿を見ると、私も「頑張ろう」「また一緒にお仕事したい」という気持ちが湧いてきます。

(おわり)