ディズニープラス「スター」で、7月16日(水)から独占配信されるオリジナル韓国ドラマシリーズ「パイン ならず者たち」の製作発表記者会見が7月8日に行なわれた。リュ・スンリョン、イム・スジョン、ヤン・セジョンに加え、木浦のチンピラのチャンボルグ役ユンホ(東方神起)、運転手役イム・ジョンチュル役のキム・ソンオ、ボルグのいとこで警察官シム・ホンギ役のイ・ドンフィと韓国を代表するアクター総勢10名が、カン・ユンソン監督と共に一同に会する豪華な顔ぶれ。シリーズへの期待が高まる時間となった。

【写真を見る】仲の良さが伝わる製作発表記者会見となった

1970年代の韓国を舞台に人間の欲望が炸裂!

1970年代の韓国の港町で、漁師が海底から財宝を発見した。それは何世代にも渡って失われていたもので、やがて深海に潜る者を待っているという噂が広まっていく。鬱々とした日々に嫌気がさしていたオ・ヒドン(ヤン・セジョン)は叔父オ・グァンソク(リュ・スンリョン)と共に財宝を手に入れようと画策するが、ほかにも財宝を狙う者たちが登場し熾烈な争いが繰り広げられる。

ソウル、木浦、釜山を舞台に人間の欲望を描く本作は、仕事ドラマの金字塔「ミセン-未生-」などで知られる人気作家ユン・テホの原作ウェブトゥーンを、『犯罪都市』(18)、「カジノ」シリーズを手がけたヒットメーカー、カン・ユンソン監督によるクライムアクションだ。

韓国ドラマファンだけでなく世界中を魅了した「ムービング」からもう一度Disney+とのタッグに戻ってきたリュ・スンリョンは、執念深く一攫千金を狙うオ・グァンソク役を演じる。「すばらしい原作に、一緒に作品を作りたかった監督と俳優の皆さんが集まりドキドキして臨んだ」と、出演の喜びを伝えた。監督も「昔からリュ・スンリョンさんのファンだったので夢が叶った」と、相思相愛ぶりをアピール。

そんなリュ・スンリョンの甥オ・ヒドン役には、「イ・ドゥナ!」など話題作への出演が相次ぐヤン・セジョン。父を失い、寂しさで叔父を心から慕う青年の役柄で、これまでにないトーンを見せる。海の中の財宝を探すドラマのため、現地ロケを含めた水中での撮影が多く、「昨年一番暑い時に木浦で撮影したが、舟が小さくて怖く、とにかく暑かった」とキム・ウィソンが苦労を語った一方、ヤン・セジョンは「水中で静寂に浸れるのはよかったです」と、自分の性格を”寂しさを愛する男”と表現したことがある彼らしいコメントを口にした。

リュ・スンリョンとは『僕の妻のすべて』(12)以来の共演となったイム・スジョンは、「またもう一回共演できるとは思っていたんですが、やっぱり光栄です」と感慨深げ。財宝発掘の資金源となるフンベク産業会長の妻ジョンスクを演じた彼女は、野心を隠しながら徐々に本性を現していく女性キャラとして、これまでのキャリアをアップデート。「ジョンスクはビジュアルで見せるタイプのキャラだったので。できるかぎりその時代のメイクを再現しました。周囲のスタッフが尽力してくれました」と、ヘアメイクを手掛けたスタッフに感謝を述べた。

■多彩な方言を使い分けた俳優たち!オーディションで大抜擢された新鋭も

ソウル、木浦、釜山を拠点とするキャラクターたちの財宝争奪戦となる本作は、ソウルから慶尚道、忠清道と韓国各所の方言が登場する。ソウル出身のイ・ドンフィは木浦の警察官を演じるにあたり「専門の先生についてもらって習得しました」とビハインドを明かすと、木浦と同じ言語圏の全羅南道・光州出身のユンホも「1970年代当時と現在とでは訛りも違ったりするので、私もレッスンが必要でした。現地の方やタクシーの運転手さんに聞いたりして修正していきました」と、リアリティを追求したと語った。ユンホがそこまでこだわった理由は、リュ・スンリョンから「ユンホ、ちゃんと準備をしてくるんだよ!」とエールを送られたことで「本気にさせてもらえた」からだという。隣の席のイ・ドンフィは「読み合わせの時、すでにすべてのセリフを覚えていて、俳優としての刺激を受けた」と評価すると共に、「そんな”Lesson”があったのか!」と、最近ネットミームとして再び話題になっているユンホの2021年のミニアルバムの収録曲「Thank U」の歌詞になぞらえたジョークを飛ばし、出演者たちを笑わせた。

今回、名実ともに優れた俳優陣の中に、高倍率のオーディションを勝ち抜いた新鋭も仲間入りした。元ボクサーのデシク役のイ・サンジンと、ソウルへの上京を夢見る喫茶店店員ソンジャを演じたキム・ミンだ。キム・ミンは「ソンジャは財宝よりも、上京に対する思いが強いです。それが周囲のキャラクターとは違っています」と語る。リュ・スンリョンもまた「他の人間は金目当てですが、ソンジャはいわゆる『心にとって価値のある宝物』を欲しがっている。『欲望という名の電車』ではないですが、欲を満たそうとしてもきりがない。その悲しさも表現しているドラマだと思います」と、ソンジャというキャラクターを通して財宝をねらう面々の本質が見えてくるストーリーラインも予感させた。

■俳優陣とスタッフが互いに高め合う撮影現場

原作となったウェブトゥーンは、1975年、実際に全羅南道新安沖で発見された貿易船から、宋・元の陶磁器など莫大な宝物が見つかった実話を元としている。そのため、実写化でも最大限のリアリティが追求された。キム・ウィソンは、オープンセットについて「タイムスリップしたような没入感」と語ると、キム・ジョンスもまた「カメラに映らない空気感まで作ってくれました」と、こぞってスタッフワークを褒め称えた。

またカン・ユンソン監督がキャスティングの決め手を「やはり気が合う方とはまた一緒になりたいと思ったことと、役柄に合わせてオファーをしました」と明かしたように、『パイン ならず者たち』は原作の個性豊かなキャラクターを表現できる俳優を選んだ。「役者の性格を観察し、役者の持つ言葉によってキャラクターを作るところがありました。もちろん、最初に考えたところから性格やふるまいが変わっていくところもありましたが、それは私が脚本を変えればいいだけでしたね」と、俳優に合わせた脚本作りに、俳優への信頼がうかがえる。そのため、原作の良さを損なわない、物語の骨組みにあいているところを補う、キャラクターの余白を肉付けする作業に時間がかかったそうだ。「キャラクターは生き物なので、演技していくうちにどんどん変わっていきます。翌日の撮影のためにキャラの変化をすぐ反映させました」と監督が明かすと、キム・ウィソンは「撮影中みんな疲れているはずなんですが、監督は脚本を直してすぐに送ってきてくださいました。一体いつ休んでいるんだろうと驚きました」と、その粘り強さに舌を巻いた。

こうした製作陣の期待に応えたのが、やはり俳優陣だった。イム・スジョンは「俳優みんな演技の神様でした。自分のキャラを進化させるためにどうすればいいかを皆さんの役から学んだんです」と、切磋琢磨し完成度を高めていく現場だったことを語った。名優陣の仲間入りを果たすべく演技を磨いたヤン・セジョンは、「皆さんの役とのシンクロ率がすごかったので、自分も役に入り込むほか無かったです。作品に出演できて、俳優としても人間としてもステップアップしたように感じます」と、共演者から良い影響を受けたとを明かした。そんな”可愛い甥っ子”にリュ・スンリョンも、「ヤン・セジョンさんは、常に台本を読んでいて本当に勤勉でした」と称賛を惜しまなかった。

取材・文/荒井 南

ベテラン、実力派、新鋭が勢揃いした「パイン ならず者たち」/[c]2025 Disney and its related entities