飲食店はドタキャン(直前キャンセル)とノーショー(No Show=無断キャンセル)によって大きな被害を受けています。2018年11月1日経済産業省が発表した「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」によると、ノーショーが飲食業界に与える損害は、年間2000億円にも上るとされています。

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 レストランは来客人数を想定して準備をします。コースや料理を予約したゲストがノーショーすれば、用意した食材や料理が無駄になります。客入りを予測してスタッフのシフトを組むので、キャンセルがあれば、スタッフが余ります。

 ドタキャンがあっても、運よく直前に予約が入ったり、ウォークインのゲストが訪れたりすることもあります。しかし、同じものをオーダーしなければ、用意していた食材や料理が無駄になります。

 キャンセルされた予約があったせいで、本来は受けられていたはずの予約が受けられなくなるので、売上機会も損失します。ノーショーではゲストが遅刻する可能性も考慮して、15分から30分くらいは様子を見るので、ドタキャンよりも売上機会を逸する確率が高くなります。

嫌がらせやイタズラは厳禁

 ドタキャンやノーショーがたびたび起きると、飲食店は損失分を転嫁するため、値上げしなくてはなりません。そうなれば、困るのはほかならぬ利用者です。ドタキャンやノーショーを行う人がいるせいで、ほかの人が損害の補てん分を支払うことになります。

 もしも、最初から訪れる気がなく、キャンセルするために飲食店を予約してしまうと、偽計業務妨害罪となる可能性もあるので、嫌がらせやイタズラは厳禁です。

 大手予約台帳サービスを展開するテーブルチェックが実施した調査によれば、無断キャンセルの理由は「場所確保のためとりあえず予約」がトップであり、「体調不良」「複数店を同時に予約」「うっかり忘れ」「人気店をとりあえず予約」と続きます。

 唯一納得できる理由が「体調不良」です。無理を押して訪問し、余計に体調を悪化させたり、同席者やほかのゲスト、店のスタッフに病気を感染させたりしてはいけません。

 「場所確保のためとりあえず予約」「複数店を同時に予約」「人気店をとりあえず予約」は、飲食店の予約に対する考えが浅く、キャンセルにあまり罪悪感をもっていないことが根底にあります。「うっかり忘れ」は、スケジュール管理の不備やルーズな感覚が主因です。

ドタキャンやノーショーは悪いこと

 飲食店の準備は、予約されたときからすでに始まっています。しかし、日本では「飲食店の予約は契約である」という意識が薄く、ホテルや飛行機とは違い、飲食店でキャンセル料を支払うという考えが浸透していません。

 ドタキャンやノーショーを解決するには、デポジットやクレジットカード事前登録の機能をもつ予約台帳サービスなどが寄与します。ITツールの普及に加えて、飲食店の予約は契約であり、ドタキャンやノーショーは悪いことであると認識される必要もあります。

※この記事は『レストランビジネス』(東龍/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。

(東龍、グルメジャーナリスト)

ドタキャンが飲食店を追い詰める理由