壮絶な過去に隠された愛と罪を追うサスペンスミステリードラマ「殺した夫が帰ってきました」が7月11日(金)からWOWOWにて放送・配信開始(毎週金曜夜11時~)。DV夫を殺してその事実を隠しながら生きる主人公・鈴倉茉菜を山下美月、茉菜が殺した夫である鈴倉和希を萩原利久が演じる。今回共演3回目となる2人に、作品の魅力や現場での思い出などを語ってもらった。

【撮りおろし13枚】美脚が目立つ山下美月の全身ショット

■考察をしながら見るのが王道な見方

――かなり衝撃的なタイトルですが、桜井美奈さんの原作を読んだ感想を教えてください。

山下:二転三転する展開に静かに感情を揺さぶられつつ、これを希望と呼ぶのか絶望と呼ぶのか考え続けていました。

萩原:原作は寝る前に読み始めて、面白くてやめられず、そのまま朝になっていました。その段階でかなり難しい役だと想像できましたが、挑戦したいと強く思いました。

――台本を読んでどのように感じましたか?

萩原:まずはどのように終わっていくのか、考察をしながら見ていただくのが王道な見方かなと感じました。僕らも可能な限り、「マジかよ…」と思わせるような、観る人を裏切る展開を見せたいと思っています。ただ、原作だとスッと入ってくるものも、実際に演じるとなると成立するのかな?という部分もあって、頭を使いながら臨まないといけないなと感じました。

山下:私が演じる茉菜は主人公でありながらも、周辺の人物のアクションによって色んな人生を歩んでいくという人物で。なので、ご一緒させていただく皆さんに委ねる部分がすごく多かったです。ただ、彼女の心情の変化は丁寧にすくわなければいけないとも感じました。

登場人物への共感は「視聴者の方々も9割9分難しいと思う」

――演じる茉菜、和希をどのような人物だと思われましたか?

山下:SOSを出せない人間だと思っています。自分がこの世にいていい存在とは全く思っていなくて。なぜここにいるのか、なぜ生きているのか、分からずに大人になってしまった部分がすごく大きいです。監督からも感情をあまり出さずに演じて欲しいというオーダーもあり、そのあたりはすごく難しかったです。

萩原:和希にはDV夫という気性の荒い一面がありますが、僕が主に演じるのは記憶をなくしてからの和希。だから茉菜と再会したときから和希という人物が少しずつできていくイメージでフラットに演じました。演じる上で、サスペンスとしての見せ方と和希のリアルな見え方とのギャップのちょうどいい塩梅を探るのが難しかったです。

――どちらの役もなかなか共感できない役ですよね。

山下:難しいですよね。境遇的な共感は、私はもちろん多分視聴者の方々も9割9分難しいと思うんです。でも今の社会において、助けを求められない人は本当にたくさんいらっしゃると思うので、そのような部分では茉菜と重なる部分はたくさんあるのではないかなと思います。

そして茉菜の難しいところは、自傷行為ではないですが、心を自分自身で傷つけることによって生きる意味を見つけている部分もあって。そのような茉菜の心を抱えながら演じていました。

萩原:和希に関しては、共感はあまり考えなかったです。そもそも見ている人によっては、和希は生きている人間なのかも分からない存在でもあるので。今回はどう演じるというより、作品の中での役割的なものに対する比重の方が僕の中で大事にしてきました。タイトルにあるように存在自体が違和感で物語を作っていくと思うので。

■本作が3回目の共演、共演回数の記録にチャレンジ!?

――お2人は今回で3回目の共演ですよね。

萩原:3回目と言いつつ、実質は2回目みたいなもので、体感的には6年ぶりでした。6年前はかなりハードな現場で勝手に山下さんに対して戦友感を抱いていたので、今回はすごく難しい話だったけど不安は全くありませんでした。

山下:本当に6年前の現場は、私の中でも1番と言っても過言ではない程ハードで。それを一緒に乗り越えた同世代ということもあり、再び共演できると聞いてすごくうれしかったです。ただ同時に、6年ぶりということに気まずさがあるかなとも思っていたのですが、クランクインからそんな心配はなく、すごく楽しく過ごせました。

――現場では一緒に話しあって作品を作っていった感じですか?

山下:色んな話をしましたが、撮影中は結構オンオフを切り替えていましたね。カメラが回っているときはそれぞれの役に徹して世界観を作り上げ、回っていないときは結構ざっくばらんに談笑して。温かい空気が流れている現場だったからこそ、過酷な内容を乗り越えられた気がします。

萩原:コミュニケーションがうまく作用していた現場でした。難しい内容の話も、直接どうしようこうしようと話すことができたのでスムーズに役を作れたし。それはスタッフさんも同じで。コミュニケーションがいい現場だったからこそ、いろんな人と同じ方向を向くことができた気がします。

山下:また共演したいよね。10回とか、なんなら100回とか、記録に挑戦しようよ!(笑)。

萩原:日常を描いた作品はやったことないからやってみたい気もするけど、せっかくだからこれまでのように特殊な状態を描いた作品で共演し続けていきたいかも。とことん振り切った役を互いに極めていくとか。

山下:バトルロワイヤルみたいなのはどう? 2人で戦って。

萩原:だとしたら負けられない。何が何でも勝てるような、そんな役を演じたいです。

山下:いや、私、負ける気しないですよ(笑)。

――相手のお芝居ですごいと感じた部分はありますか?

萩原:セリフを間違えないですよね。実は僕、結構噛んでしまうんです。これは言い訳なんですが、ずっと同じ環境で集中していると段々頭が働かなくなってしまって、意図しないところでミスってしまうことがあって。山下さんはそういうことが全くない。本当にプロフェッショナルだと思います。

山下:確かにすごく噛みますよね(笑)。でも噛んでも噛んでいない雰囲気を出してめちゃくちゃ続けるんですよ。それはすごいと思います。

あと、萩原さんって結構闇を抱えた役が多いのですが、実際の本人のキャラクターはめちゃくちゃ明るく、現場ではムードメーカーだったりするので、その全く違う姿を見せるところは本当にすごいと思います。本当の姿はどれなのか…。実はめちゃくちゃサイコパスなのかな?みたいな(笑)。

萩原:そんなわけないです(笑)。

山下:サイコパスは言い過ぎですが、役に切り替える集中力はすごいと思います。

■撮影現場は和気あいあい「笑いが止まらなくなっちゃいました」

――現場で笑ったシーンを教えてください。

山下:2人で餃子屋さんに行くシーンがあるのですが、そこで「今日は晴れているね」「だね」という何気ないセリフがあるのですが、この「だね」がすごく笑えてしまって。私、ポケットモンスターフシギダネが好きなのですが、このポケモンの鳴き声が「だね」で。それに気付いてしまってからもう笑いが止まらなくなっちゃいました。

萩原:分かる。1回気になったらそれにしか聞こえなくなるし。山下さんってめちゃくちゃゲラですよね。

山下:そうです。笑うと止まらない。

萩原:なので地雷がどこに埋まっているのか分からなくてドキドキしました。僕も人が笑っていると伝染しちゃうタイプなので、笑いを堪えていることが多かった現場だったような気がします。

山下:あと寝たふりをするシーンで寝ていましたよね? 6年前も本当に寝ていたので、寝るシーンでは寝てしまう役者さんという認識でいいですか?

萩原:成長していないな~(笑)。言い訳をするとあの日は結構撮影が佳境で。その日の最後のシーンだったので体力が残ってなかったです。

山下:本番中に普通に体がビクって動くみたいなのが何回かあって笑っちゃいました。

萩原:その節は本当に申し訳なかったです。

――最後に見どころを教えてください。

山下:私的にはあまりタイトルに引っ張られすぎないでほしいというのはあります。この作品の本質は殺人やミステリーというより、社会背景や茉菜を取り囲む環境がメインになってくると思うので。

萩原:見る人によって楽しみ方が違うような気がします。どのような結末を迎えるのか、ドキドキしながら想像して見ていただくのも1つだと思います。そして言えることは、集中できる環境で見てほしいです。何かをしながら見るのはあまり適していないと思います。

山下:あとは、あまりメンタルが落ちているときには見ない方がいいかも(笑)。全話通して、人によって感じるものが全然違うと思うので。やるせなさ、悲しさ、虚しさの中にある光りを見つけてほしいです。

◆取材・文=玉置晴子、撮影=玉井美世子、ヘアメーク(山下)=吉田真佐美、スタイリスト(山下)=山本隆司(style³)、ヘアメーク(萩原)=粕谷勇介(ADDICT_CASE)、スタイリスト(萩原)=TOKITA

山下美月&萩原利久/撮影=玉井美世子