リモートワークの普及とともに、勤務地に縛られない生活を可能にする制度へ注目が高まっています。海外で資産を守りつつ、自由に働いて理想のライフスタイルを実現したい……それが「デジタルノマドビザ」で実現できます。滞在する国によっては、月収35万円でも地中海リゾート暮らしできるそうで。国内と異なる環境で生活の質を上げたい人必見の「デジタルノマドビザ」について、注意点や取得しやすい国などを解説します。

働く側も国も嬉しい!「デジタルノマドビザ」の仕組み

デジタルノマドとは「デジタル遊牧民」を意味し、場所を選ばずにパソコン一台で仕事をする人々を指します。彼らが海外で長期滞在しながら働くことを支援するために誕生したのが「デジタルノマドビザ」です。

通常の就労ビザと異なり、現地での雇用を必要としないのが最大の特徴です。

つまり、自国や他国の企業に雇用されたまま、あるいは個人事業主としてその国に滞在できます。一方、受け入れる国側にとっても、デジタルノマドは現地の雇用を奪うことなく、その国での消費活動を通じて経済に貢献してくれるというメリットがあります。

このように、ワーカー側と受け入れ国の双方にとってWin-Winの関係が築けるため、世界中の国々がデジタルノマドの誘致に力を入れています。

リモートワークの急速な普及が、多様な働き方を促進し、柔軟な生活と働き方を選ぶ人々を増やしているのです。

デジタルノマドビザを取得するための4つの必須条件

デジタルノマドビザの具体的な取得条件は国によって多少異なりますが、一般的には以下の条件が設定されています。

まず求められるのは、国外で働いていることや、自営業、あるいはリモートで運営できるビジネスを持っていることです。

これは、滞在する国に移っても本業に支障が出ないことが前提とされているためです。現地で新たに職を探すのではなく、あらかじめ確立された仕事があることが重要です。

次に重視されるのが、収入源が滞在国以外にあるという点です。これは、その国の雇用市場に影響を与えないよう配慮された条件であり、たとえば日本の企業から報酬を得ているような形が望まれます。

また、滞在先での安定した住まいの確保も求められます。短期的なホテル滞在ではなく、アパートやマンションなどの長期賃貸契約を通じて、しっかりとした居住拠点を持っていることが必要です。

もうひとつ欠かせないのが健康保険への加入です。

医療費の高い国も多いため、万が一の病気や事故に備え、滞在先で有効な保険に入っておくことが義務付けられている場合がほとんどです。

移住しやすい!デジタルノマドビザが取りやすい国

それでは、具体的にどの国でデジタルノマドビザが取得できるのか。今回は人気の高い5つの国の特徴を紹介します。

1.穴場中の穴場!「アルバニア」が最も簡単に取得できる国に浮上

まず注目したいのがアルバニアです。アルバニアは、デジタルノマドビザが最も簡単に取得できる国とされています。ギリシャモンテネグロの間に位置し、イタリアにも近いという立地の良さも魅力的です。さらに、住居費が安いのも大きなポイントです。

滞在期間は1年で、更新すれば最長5年まで滞在可能。

収入条件は年間9,800ユーロ(日本円で約150万円程度)と、決して高いハードルではありません。日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、美しい自然と歴史的な街並みが魅力の国です。デジタルノマド生活を送ることで、多くの新しい発見があるでしょう。

2.税制優遇を見逃すな物価安・税制優遇・絶景あり!「クロアチア

アドリア海に面した観光地としても人気の高いクロアチア

クロアチアのデジタルノマドビザの期間は最大18ヶ月で、さらに18ヶ月の延長が可能のため合計最大3年間滞在できます。収入条件は月3,200ユーロ(日本円で約54万円程度)でビザが取得でき、充実した環境が整っています。治安が良く、物価も安く、紛争リスクも少ないため、安心して暮らせる国と言えます。

さらに、収入を受け取っている国で納税している場合は所得税が免税されるなどいくつかの優遇措置があります。日常生活では英語が通じる点もポイントで、ヨーロッパへのアクセスも良好なので、気軽に周辺国へ旅行に行くことも可能です。

クロアチアはドッグフレンドリーな国としても知られ、夫婦と犬1匹の場合でも月20万円程度で暮らせるなど、日本の都市部と比べてかなりリーズナブルです。また、不動産価格も魅力的で、プール付きの210平米のビーチフロントヴィラが8,000万円程度で購入できるなど、日本では考えられない贅沢な暮らしが現実になります。仮想通貨にも友好的な「クリプトフレンドリー」な国であり、新しい経済の流れにも柔軟に対応しています。

3. 高所得者向けで、不動産投資にも注目「キプロス

地中海に浮かぶ島国、キプロスもデジタルノマドビザの取得が可能です。滞在期間は1年間で、2年間の更新が可能なため最長3年間まで滞在できます。

収入条件は月3,500ユーロ(日本円で約53万円程度)と、他の国よりやや高めですが、その分、高所得者向けの法人税が12.5%と低く抑えられる優遇制度があります。また、個人所得税が1万9,500ユーロまで非課税となるのも大きなポイントです。

キプロスでは、外国人が不動産を100%所有できるため、将来的に海外不動産投資を考えている方にとっても魅力的な選択肢となります。ヨーロッパとアジアの架け橋的な位置にあり、両方の文化が融合した独特の雰囲気を楽しめるのも魅力です。歴史的な遺跡、美しいビーチ、豊かな自然、そして地中海料理など、多くの魅力が詰まった国です。

4.ヨーロッパの中心「チェコ共和国」は貯金がカギ

次に紹介するのはチェコ共和国です。滞在期間は1年間で、延長はできません。チェコのデジタルノマドビザ発行の条件は、チェコ人平均賃金の1.5倍以上の月収(約39万5,800円、2025年時点)」を証明することです。また、最低12万4,500チェココルナ(約63万円)の貯蓄証明も必要です。

また、業種も限定されており、自然科学、技術、工学、数学の学位または3年以上のIT業界での実務経験がある人のみと狭き門です。ただメリットも多く、まずはヨーロッパの中心に位置するため、旅行の拠点として最適です。物価も安く、治安も良好で、公共交通機関が発達しているため、車がなくても快適に生活できます。

税金面では、個人所得税が15%(600万円を超えると7%加算)、個人事業主は19%、法人税も19%と、他の国と比べるとやや高めですが、日本と比較するとリーズナブルと言えるでしょう。チェコでのデジタルノマド生活では、プラハの美しい街並みを眺めながら仕事ができ、休日にはカレル橋を散歩したり、古城を訪れたりするのもおすすめです。

5.人気国「スペイン」でもノマド生活が可能に

最後に紹介するのは、多くの日本人にとっても馴染み深いスペインです。スポーツ、歴史的建造物、美味しい食事、ダンスなど、多くの魅力が詰まった国です。

スペインのデジタルノノマドビザの滞在期間は1年間で、更新すれば最長5年間まで滞在可能です。収入条件は月2,334ユーロ(日本円で約35万円程度)となりますが、家族同伴の場合は金額が増加するので注意が必要です。

スペインの大きな魅力の一つに税制優遇制度があります。最初の4年間は所得税が15%(通常税率は23〜25%)と低く設定されており、デジタルノマド生活をしながら貯蓄することもできます。

また、スペインには「ゴールデンビザ」という制度もあります。これは、一定額以上の不動産投資をすることで永住権が得られる制度です。もし将来的にスペインに定住することを考えている方にとっては、魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。

海外移住はデジタルノマドビザを知るだけで簡単になるかも

言葉の壁や文化の違い、医療の心配もあるかもしれません。

ですが、デジタルノマドビザという制度を活用すれば、世界中を自分の職場に変えることができます。「いつか移住してみたい」と思っているなら、まずはこのビザ制度を活用し、数カ月の滞在から始めてみるのもよいかもしれません。

(画像はイメージです/PIXTA)