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 自動車業界は、現在「100年に一度」と言われる大きな変革期を迎えており、従来の営業手法や業務プロセスでは、急速に変化する市場環境や顧客ニーズに対応しきれない状況が生まれつつあります。

 そんな中、自動車販売店向けにソリューションを提供するリバイス株式会社は、自社のソリューションにZoomの機能を統合し、営業およびアライアンス業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。

 属人化しやすい営業ノウハウや、非効率な業務プロセスなど、古くからの慣習に挑み、新しい自動車販売業界を形作ろうとしている同社の挑戦に迫ります。

自動車業界ならではの顧客のニーズ「現車を実際に見たい」

 自動車を購入する際、多くの購入者が「実際に現車を確認したい」と考えるのは自然なことです。インターネット上の写真や情報だけでは、細かなキズや内装の状態、車全体の雰囲気までは掴みきれません。特に、ほとんどの方は車の専門知識を持っているわけではないため、見えない部分に不安を感じるのは当然です。

 これは、サイズや色、スペックがあらかじめ決まっている家電や日用品などの商材とは大きく異なる、自動車ならではの特徴です。中古車は一台一台コンディションが異なり、実際に見て初めて「納得できる買い物ができる」と感じるお客様が多いのです。

 つまり、自動車の販売営業は、購入者の希望に近い車両を提案しつつ、自社から購入するメリットをしっかり伝える必要があります。その意味で、中古車の販売は、非常に難易度の高い商談であるといえます。

 しかしながら、こうした「現車を見て安心した」という感覚は、多くの場合、心理的な安心感や納得感にとどまっており、必ずしも車両自体の本質的な信頼性を担保するものではありません。とくにクルマに詳しくない初心者にとっては、判断は見た目の印象や営業担当者の説明に左右されやすく、重大な整備不良や修復歴などを見落としてしまうこともあり得ます。

 このように、「現物を見れば安心できる」という発想は、ある種の“消費者心理のトリック”とも言えるかもしれません。実際には、整備履歴、事故歴、走行距離の真偽、消耗部品の状態といった要素こそが、信頼できるデータとして重要であり、それらが適切に記録・公開・保証されてこそ、本当の意味で安心して購入できるのです。

 そうした販売現場の課題に対して、売る側・買う側の双方にメリットを提供するのが「Mobicon」です。同社は、中古車販売の仕入れから販売、アフターサービスまでをトータルで管理するソリューション「Mobicon(モビコン)」を開発し、販売店向けに提供しています。

 Mobiconダッシュボードにログインすると、販売店は、車の在庫状況や販売状況、売上の推移といった基幹的なデータだけでなく、各顧客の情報や、販売済みの車両の保証・保険・車検時期や整備記録などを一元的に確認・管理できます。

 購入者側も、スマートフォン向けのアプリから車両の保証状況や次回メンテナンスまでの期間を確認できるため、販売店と購入者の双方が、いつでも最新の車両状態を同期された形で把握できるのです。

「100年に一度の大変革期にある自動車業界において、販売店に向けのオペレーション支援をワンストップで提供します」(リバイス株式会社 山中一憲氏)

 さらに同社は、車両をIoT化するデバイス「LINKDrive」も提供しています。これを車に装着すれば、走行距離や電子故障診断といった車のコンディションがスマートフォンから確認でき、整備や点検が必要なタイミングをアプリがレコメンドしてくれます。

 これにより、購入者は安心して車に乗り続けることができ、販売店側も継続的なフォローや新たな提案につなげやすくなるなど、双方にとって大きなメリットがあります。

 こうした一連の取り組みはすべて、将来的に「現車確認をしなくても、信頼できるデータを根拠に安心して購入できる」中古車購入の新しいスタンダードをつくるための布石でもあります。テクノロジーの力で信頼と透明性を担保し、業界全体の購買体験を変えていく──Mobiconは、その第一歩を着実に築いているのです。

Zoomの組み込みによって開けた、Mobiconの新たな可能性

 同社の事業はMobiconの提供だけでなく、コンタクトセンター、修理保証のコンサルティング、CRM構築、営業代行、アフターサービス、経営支援、人材育成、再保険スキーム設計など多岐にわたります。

 単なる請負業の枠を超えて、顧客企業の戦略パートナーとして機能し続ける同社が、MobiconZoomを組み込んだ理由はいくつかあります。

 最大の理由は、「リモートでも商談を行える」という未来に向けた自動車販売の環境を整えるためです。

 従来は対面が前提だった自動車販売において、遠方の顧客とも画面越しに顔を見ながら丁寧な説明ができるようになれば、信頼関係の構築が地理的制約を超えて可能になります。この仕組みは、専門スタッフによる遠隔支援など、営業リソースの柔軟な活用にも寄与するでしょう。

 Zoomの「画面共有」機能も、視覚的な資料提示を可能にし、理解度や納得感を大きく高める要素となっています。加えて、共有中でも相手の表情を見ながら話せるため、顧客の関心や不安を察知し、それに応じた対応が可能に。

 現時点ではカメラをオフにして参加する購入者も一定数いるものの、今後は「顔を見ながら話す安心感」の価値を伝え、カメラオンでの商談を業界のスタンダードにしていきたいと同社は考えています。

 ZoomをMobiconに組み込んだことは、自動車販売業界における「ノウハウの属人化」と「教育の再現性の低さ」という構造的な課題の克服にも一役買っています。

 業績重視かつ人材の流動性が高い中古車販売業界では、営業スタッフ個人の経験やクロージング手法が組織に蓄積されにくく、新人教育の質にもばらつきが生じがちです。そこで同社は、Zoomの録画機能をMobiconから使えるようにすることで、実際の商談をそのまま教材として保存・共有できるようにしました。

 録画データと連動した文字起こし・要約機能を使えば、商談後のフォローアップも効率化され、販売店の担当者は、次に取るべきアクションを素早く正確に把握できます。特に法令遵守が求められる保険商談の場面では、有効な記録としても機能します。

「お客様へご説明する際に、視覚的な情報を提示できるかどうかで理解度や納得感に大きな差が生まれます。特に高額で専門的な説明が求められる自動車販売では、写真や資料、場合によっては車両のスペックや状態、支払シミュレーション比較などをリアルタイムで見ていただけることが非常に重要です」(リバイス株式会社 佐藤充氏)

 これらの一連の取り組みもまた、現車確認なしで安心して自動車を購入できる世界を実現するための、同社の基盤づくりに他なりません。Mobiconは今後も、その未来に向けたインフラとして、着実に進化を続けていくでしょう。

Zoomによって、商談にもシームレスに参加できる

 MobiconZoomを組み込んだことは、リバイス株式会社自身の動きにも変化を与えました。

 例えば、商材に対する専門知識が必要な場合、同社がZoomを介して商談にシームレスに参加。中古車販売店のスタッフの説明を補完することで、顧客満足度の高い提案が可能になります。

 具体的には、保険商品などの複雑なサービスについて、専門知識を持つスタッフが遠隔から直接顧客に説明を行うことで、その場でのアップセルやクロスセルにつなげることが可能になったのです。

 こうしたやり取りも、Zoomの録画機能を通じて体系的に蓄積されていきます。中古車販売店の新人スタッフは、実際の商談映像を視聴することで、ベテラン営業担当者のスキルやクロージング手法を実地に学ぶことができ、豊富な商談事例をもとに実践力を養えます。これにより、ユーザー企業における人材育成のスピードと質は、飛躍的に高まりました。

 また、ロールプレイング研修では、実際に成約に至らなかった商談映像も教材として活用され、具体的な振り返りを通じて販売手法の再現性向上にもつながっています。

「商談の録画をZoomで行い、後から見返すことで、新人のスタッフさんも、ベテラン営業のスキルを学べるようになりました」(リバイス株式会社 佐藤充氏)

Zoomが支えるのは、業界の未来を見据えた先駆的な仕掛け

 自動車は有形耐久消費財であり、購入に至るまでの検討期間が長く、顧客との接点が多くなる傾向があります。リバイス株式会社はZoomを駆使した新たな営業スタイルを確立し、この特性を最大限に活かしたプラットフォームを実現したのです。時間や距離を越えて「会う」体験を提供することは、業界全体の営業機会を最大化し、顧客満足度の向上にもつながります。

 また、ZoomBPOの連携によるワンストップ対応は、今後、自動車業界における商談スタイルの新たなスタンダードとなる可能性を秘めています。リバイス株式会社の取り組みは、業界の未来を見据えたDXの先駆的な実践であり、その変革の象徴と言えるでしょう。

クルマは「現車確認なし、データを把握して」買う時代へ