
この記事をまとめると
■2WDと4WDモデルを用意する
■足まわりとパワステに気になる点があるが正式発売までに熟成を期待
取り回し性能とサイズ感は日本にピッタリ
スズキ初の量産電気自動車となるeビターラのプロトタイプに袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗してきた。イタリア・ミラノで2024年11月にワールドプレミアを、インド・デリーショーで2025年1月に出展したことに続き、いよいよ日本でもお披露目というわけだ。ビターラはそもそも日本のエスクードの海外名であり、今回のeビターラも世界戦略車。インド・グジャラート工場で生産が行われ、トヨタへのOEM供給も行われる。
全長×全幅×全高は4275×1800×1640mmでホイールベースは2700mmというコンパクトなサイズながらも、力強いプレスラインが随所に散りばめられたことや、樹脂ガーニッシュ付き18インチ大径ホイールの採用などもあり、サイズ以上の存在感を実現している。
プラットフォームはEV専用となるHEARTECT-eを採用。モーターとインバーターを一体化したeAxleがコンパクトに設計されたこともあり、タイヤハウスをしっかりと確保することでステアリングの切れ角を大きくすることを可能とした。結果として最小回転半径5.2mを実現。シティユースでも取り回しのしやすい仕上がりだ。
フロア下はバッテリー容量を最大化することを目的にメインフロア下メンバーを廃止。代わりにサイドシルはかなり強固な作り込みをすることで高電圧を保護している。ただし1180Mpa級の高ハイテン材の使用率をその辺りを中心に従来の2倍とし、軽量に仕立てていることもポイントだ。
特徴としてはしっかりと4WDグレードを準備したことだろう。これから同ジャンルでライバルとなりそうな日産リーフは先の説明会で4WDは考えていないといっていたから、eビターラのアドバンテージはココになりそうだ。
スズキが採用したALLGRIP-eは、前後駆動力配分を自動で行うAUTO modeのほかに、空転したタイヤにブレーキをかけ、グリップが高いタイヤに駆動力配分を行うTRAIL modeも搭載。登坂性能は2WDの1.4倍となる26.8度(一旦停止して発進できる傾斜)を誇る。
足まわりはもう少し引き締めたほうがいい
そんなeビターラのFF・2WDモデルにまずは乗ってみる。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの容量は49kWhか61kWhを選択することが可能だが、今回は61kWhのみの試乗だ。乗り込んでみるとブラック基調にブラウンが随所にあしらわれたインテリアがなかなか上質な感覚だ。さらにインテリジェントディスプレイやフローティングセンターコンソール、そしてアンビエントライトがドアに入れられるなど、かなり頑張っている様子が伺える。
bZ4Xでもお馴染みだったATセレクターを弾きコースインしてみると、静粛性豊かに加速してみせる。EVだからと極端なトルクを出すことなく、あくまでもリニアに自然に速度を重ねるマナーのよさは好感触だ。0-100km/h加速は8.7秒とそれほど速くはないという印象だが、この手のクルマとしては必要十分な部類だろう。ちなみに最高出力は128kW、最大トルクは193Nm。車重は1790kg。一充電走行距離は500km以上を予定しているらしい。
フットワークはしなやかだ。タウンスピードではマイルドな乗り味を展開できそうだ。試乗場所がサーキットということもあり、上限120km/h辺りまで試してみたが、うねるような路面に行くと動きが収束しないようなシーンも見られる。ワインディング区間ではやや頼りなさも感じられ、悪路重視なセッティングなのか、はたまた抑えが足りていないのかが理解しにくい。
スラローム区間ではコラムアシストの電動パワーステアリングにアシストの遅れや足しすぎが見られ、左右に切り返すシーンではリニアな感覚が希薄だった。こうしたシャシーの傾向は100kg重い4WDモデルになるとより感じられ、緊急回避的に動かすとリヤがスタビリティコントロールが働く前に発散するシーンもみられた。0-100km/h加速は7.4秒とさらに速く、合計最大トルクは307Nmにもなるのだから、もう少し引き締めても良かったように感じる。
また、細かなところではあるがアクセルオフ時の回生量の3段階調整が、停車時にしか画面上の深い階層のところでしか選択できなかったり、エアコンのオンオフも画面上でしかできないことが気になった。
いずれにしてもまだプロトタイプなので、これからの仕上げに期待したいところ。あとはどの程度の価格で登場するのかもこのクルマの印象が異なってくるだろう。いずれにしても走りにも価格にもこだわるスズキなら、きっと期待を裏切るようなことはないだろう。

コメント