夏ドラマの定番の一つが「学園モノ」や学校を舞台にしたドラマ。学校を舞台にした作品といえばフレッシュな青春ストーリーの印象が強いが、この夏は、そんなイメージとは少し違う“大人がハマれる”要素を掛け合わせた個性派ドラマが続々と登場している。刺激にあふれた“マクチャン(泥沼)サスペンス”や、“夜の世界”をからめた純愛作品、学生生活を取り巻く法律問題をテーマにした学園ドラマなど、大人がハマるテイストを兼ね備えた3作品を紹介する。

【写真】Red Velvetのキム・イェリム、PRODUCE X 101出身キム・ミンギュほか美男美女が勢ぞろい

■刺激強め…韓ドラ人気ジャンル“マクチャン”×学園ドラマ

韓ドラファンなら聞いたことがあるであろう“マクチャン”ドラマというジャンル。貧富の差や出生の秘密、泥沼不倫や復讐劇といった刺激的な展開で視聴者を惹きつける人気ジャンルのことで、定番の「ペントハウス」シリーズをはじめ、いじめっ子への復讐がテーマの「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」(2022年)、日本版が制作され話題を集める「私の夫と結婚して」など、爆発的人気を博したタイトルが並ぶ。

そんな“マクチャン”要素と学園ドラマを組み合わせた衝撃の韓ドラが、今月配信開始されたばかりの「Bitch X Rich2」(ABEMAで日韓同時・国内独占無料配信)。2023年に放送・配信されたハイティーン心理スリラーの続編だ。

シーズン1では、女子高生殺人事件の唯一の目撃者になった女子高生キム・ヘインが貧しい身ながら超リッチ高のチョンダム国際高校に転校し、校内最高の権力を持つエリート集団“ダイヤモンド6”の女王ペク・ジェナと事件の真相をめぐって激しい心理戦を繰り広げる様子が描かれた。

そのラストでまた新たな殺人事件が発生し、衝撃のうちに幕を閉じたシーズン1。今回公開されたシーズン2では、1度ならず2度までも殺人事件を目撃してしまったヘインがいじめに苦しむ貧困層から脱し、一気に特権階級への加入をめざしのし上がっていく。かつて女王の座にいたジェナの転落や新キャラの登場により、学園内はさらなる混乱をきたしていく。

シーズン1に引き続き、子役出身のイ・ウンセムが安定した演技で主人公ヘインを演じるほか、ジェナ役もガールズグループ・Red Velvetのキム・イェリムが続投。新たにPRODUCE X 101出身のキム・ミンギュも出演する。

土下座を強要するセレブ親子、カッターで首を切りつけるなど主人公を襲う強烈なイジメ、といった容赦ない描写も韓ドラならでは。そして、そんな逆境に逞しく立ち向かうヘインの強さも見どころだ。

■学校が苦手なスクールロイヤー、学校問題にどう向き合う?

この夏は地上波でも、学校を舞台に新たな要素をからめた大人がハマる作品が登場する。7月14日(月)スタートの月10ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」(毎週月曜夜10:00-10:54、フジテレビ系FODTVerにて配信※初回は夜10:00-11:09)は、独特の感性を持つがゆえに人生にも仕事にも臆病だった弁護士・白鳥健治(磯村勇斗)が“スクールロイヤー”として若者たちの青春に向き合っていく学園ヒューマンドラマだ。

健治は、感覚が周囲と違うことやマイペースな性格で集団行動になじめず、不登校になった過去がある。そんな彼が、学校で発生する問題について助言や指導を行うスクールロイヤーとして「濱ソラリス高校」に派遣されることに。同校はちょうど、少子化の流れの中で男子校女子校が合併したばかりで、校内では次々と問題が勃発していた。

生徒会長副会長がそろって不登校になる事態が発生し、健治は着任早々さっそくアドバイスを求められるが、そもそも学校が苦手な健治には問題解決の糸口が見出せない。合併による校則の変更が理由では?という声が生徒から上がったことをきっかけに、健治は模擬裁判の実施を提案する――。

脚本は、連続テレビ小説あさが来た」や大河ドラマ「青天を衝け」を手掛けた大森美香によるオリジナル。文部科学省が2018年から予算化したスクールロイヤー制度はこれまでにもドラマ化されたことがあるが、本作の主人公・健治は学校が苦手なスクールロイヤー。法律で割り切るのが難しい教育現場のリアルな問題に、自らも学校に苦手意識を持つ健治がどう向き合っていくのかに注目だ。

■高校教師×夜の世界の純愛ストーリー

学園モノではないが、7月10日(木)スタートの木10ドラマ 「愛の、がっこう。」(毎週木曜夜10:00-10:54 ※初回は夜10:00-11:09、フジテレビ系 /FOD・TVerにて配信)のモチーフは“高校教師”ד夜の世界”。まじめな高校教師とNo.1を目指すホストが織りなす、“禁断の純愛ドラマ”だ。

堅い家庭で育ったまじめな高校教師・小川愛実(木村文乃)は、うまくいかない日々に押しつぶされそうになっていたある日、生徒がホストクラブにハマったことをきっかけにNo.1ホスト・カヲル(ラウール)と出会う。愛実は文字の読み書きが苦手なカヲルに言葉や社会を教える秘密の“個人授業”を始め、2人は次第に距離を縮めていく。だが、高校教師の愛実とホストのカヲルの間には、とてつもない格差と偏見の壁が…。さまざまな批判や非難、憎しみ、嫉妬が容赦なく2人を襲う。

本作も完全オリジナルストーリーで、脚本を担当するのはドラマ「白い巨頭」(2003年、フジテレビ系)や「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(2014年、フジテレビ系)、「緊急取調室」シリーズなど話題作を手掛けてきた井上由美子。高校教師とホストのラブストーリーというと刺激が強そうだが、栗原彩乃プロデューサーによれば「経済や学歴、あらゆる格差が広がり、もはや分断ともいえるような社会の中で、互いの間にある高い壁を乗り越えていく2人の愛と勇気を描きます」とのこと。さまざまな格差や理不尽を感じながら生きる大人たちの心を癒やす作品となりそうだ。

大人だからこそハマる刺激強めの作品や、繊細な心情に寄り添える作品など、カラッと明るい青春ストーリーとは趣の異なるこの夏の学園・学校ドラマに期待が高まる。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

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