
4気筒でも充分力強く悪くないサウンド
モデル中期のアップデートを受けた、BMW 2シリーズ・クーペ。今回試乗したのは直列4気筒エンジン版だが、6気筒の方が滑らかで強力で、美声を楽しめることは間違いない。それでも230iでも充分に力強く、悪くないサウンドを奏でてくれる。
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交差点からの発進で少し気張ると、トラクション・コントロールが目覚めるほど。最高出力の244psを引き出せば、0-100km/h加速を5.9秒でこなしてみせる。最大トルクは40.7kg-mと不足なく、中間加速も鋭い。6000rpmから、やや息苦しそうになるが。
トランスミッションは、ZF社製の8速オートマティック。小さなシフトパドルを弾くと、鋭く意欲的にギアを切り替え、デュアルクラッチATかと思わせる。トルクコンバーターが滑るような印象もない。
ドライブモードは複数あり、エコ・プロはかなりマイルド。ノーマル・モードでも、8速ATは燃費重視の制御になり、ややパワートレインの洗練性に陰りが出る。
押し出されるような感覚が気持イイ
クーペらしく颯爽と走りたい場合は、スポーツ・モード。強調される合成音は直6とは異なる響きだが、聴き応えがあり、筆者は嫌いではなかった。エンジンの反応が良くなり、ステアリングは適度に重くなり、ブレーキの立ち上がりも鋭く変化する。
ドライバー好みで設定を組み合わせられる、スポーツ・インディビジュアル・モードも用意される。ただし、ブレーキの効きは若干穏やかになる様子。
6気筒エンジンでなくても、アクセルペダルを傾けた時の、押し出されるような感覚が気持イイ。後輪駆動のシャシーバランスが秀抜なだけでなく、低い位置の着座位置も、流暢なコーナリングに貢献している。
ステアリングのロックトゥロックは、可変レシオの2.2回転。操舵感は自然で、走行中はクイックすぎない。フィードバックは薄めでも安心感のある重さで、どのくらいステアリングホイールを傾けるべきか瞬時に判断できる。
路面の凹凸を拾いやすいMスポーツサス
ただし速度域が高めのカーブでは、フロントタイヤが安定するまで、一瞬のタメがある印象。グリップ力は間違いないものの、完璧な自信までは抱きにくいかもしれない。
サスペンションは、4気筒の場合、アダプティブではない通常のMスポーツダンパーが標準。比較すると、路面の凹凸を拾いやすい傾向はある。大きめの隆起を通過すると、姿勢制御が追いつかなくなる場面も見られた。
19インチ・ホイールも、荒れた路面での洗練性にプラスではない。乗り心地が硬すぎるということはなく、普段使いもまったくの許容範囲ではあるが。
試乗時の燃費は、183psの220iでは平均で12.0km/L。高速道路を巡航させると、14.0km/Lを超えていた。230iは燃費が若干悪化するものの、筆者ならパワフルになるコチラを選ぶと思う。
適度にトラッド 適度にエキゾチック
ホットハッチよりスタイリッシュで、一体感の強い運転体験を享受でき、普段使いも可能なスポーツモデルがお好みなら、G42型の2シリーズ・クーペはうってつけ。2+2で実用性も低くない。
熟成の域へ達したパワートレインや、人間工学に優れたインテリア、有能なインフォテインメント・システムなど、訴求力は極めて高い。乗り心地や操縦性にはもう少し磨ける余地があるとしても、強みを損なうほどではない。
適度にトラッドで、適度にエキゾチックな2シリーズ・クーペ。こんな存在は、2025年では極めて希少だ。可能な内に楽しんでおきたい、1台だといっていい。
◯:インテリアやインフォテインメント・システムの人間工学 好バランスな後輪駆動の動的特性
△:若干上質さに欠けるMスポーツ・サスペンション もう少し車内は静かでも良い
BMW 220i クーペ Mスポーツ(英国仕様)のスペック
英国価格:3万6010ポンド(約702万円)
全長:4547mm
全幅:1839mm
全高:1418mm
最高速度:236km/h
0-100km/h加速:7.5秒
燃費:15.4km/L
CO2排出量:148g/km
車両重量:1490kg
パワートレイン:直列4気筒1998cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:183ps/5000-6500rpm
最大トルク:30.4kg-m/1350-4000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

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