7月10日(木)に南座にて、舞台『華岡青洲の妻』が初日を迎えた。オフィシャルレポートが到着したので紹介する。


本作は、昭和を代表する女流作家・有吉佐和子の同名小説を舞台化した作品で、昭和42年の初演以来、幾度となく上演されてきた名作。世界で初めて全身麻酔による乳癌手術に成功した医聖・華岡青洲と、その妻・加恵、母・於継を中心に、華岡家の人間模様が描かれ、青洲の愛を奪い合い、競って人体実験の被検体になろうとする嫁と姑の姿がありありと浮かび上がる。

田中哲司

田中哲司

左から田中哲司、小野洋子、武田玲奈、田畑智子

左から田中哲司、小野洋子、武田玲奈、田畑智子

物語は、加恵(大竹しのぶ)が、医家である華岡家に嫁ぎ、3年が経とうとしている所から始まる。夫の青洲は京都に遊学中で、母の於継(小野洋子)や青洲の妹・於勝(田畑智子)、小陸(武田玲奈)らと、青洲の学費を稼ぎながら帰りを待っている。特に加恵と於継は周囲が羨むほどの仲睦まじさだったが、青洲(田中哲司)が京都から戻ってくると態度は一変。まるで加恵がいないものかのように振る舞う於継に戸惑い、やがて二人はお互いを恨みがましく思うようになっていく。表面上は仲が良さそうな振りをし、言葉の端々や態度に嫌悪感をにじませる加恵と於継。嫁姑の関係性をリアルに、細やかに表現し、客席中にも二人のひりついた空気感が漂う。加恵が実母の於沢(長谷川稀世)に泣きながら於継の仕打ちを訴えるシーンでは、大竹しのぶの熱演が光った。

左から長谷川稀世、大竹しのぶ

左から長谷川稀世、大竹しのぶ

左から陳内将、曽我廼家文童

左から陳内将、曽我廼家文童

一方青洲は門人の良庵(曽我廼家文童)や弟子の米次郎(陳内将)らとともに曼荼羅華を使った麻酔薬の実験に心血を注ぎ、動物での実験は一区切りになろうかというとき、突然於継が薬の人体実験に身を捧げると言い出す。於継に対抗するように加恵も実験体として名乗りを上げ、競い合う二人を見かねた青洲は、両人に薬を投与すると宣言。最初は於継に、次に加恵に麻酔薬が投与されますが、於継に投与されたのは実は曼荼羅華の効果が弱い薬だった。一方強い薬を飲んでいた加恵には、薬の後遺症が次第に現れつつあり――。

左から田中哲司、大竹しのぶ

左から田中哲司、大竹しのぶ

水面下で熾烈な争いを繰り広げていた加恵と於継の戦い、そしてそれを間近で見ていた小陸がラストシーンで語る思いには、女性の生きづらさや恐ろしさ、家族の複雑さが見事に表現されており、観客に女性の在り方を訴えかける。カーテンコールでは、真に迫る演技で熱演を見せたキャスト陣に万雷の拍手が送られ幕となった。

左から大竹しのぶ、小野洋子、田中哲司

左から大竹しのぶ、小野洋子、田中哲司

豪華キャスト陣によって表現される60年近く愛されるこの名作戯曲の神髄は、まさに必見。和歌山弁による珠玉の台詞の数々にも注目。

舞台『華岡青洲の妻』は南座にて7月23日(水)まで(16日(水)は休演日)上演。以降7月26日(土)、27日(日)に福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、8月1日(金)~17日(日)まで東京・新橋演舞場で上演(5日(火)、12日(火)は休演)。チケットはイープラスにて販売中。

大竹しのぶ