
この記事をまとめると
■市街地ではヒョンデのクルマが自国ブランドのビンファストに次いで人気だ
■国民の本心では日系ブランドが憧れのクルマとなっている
ベトナムではヒョンデが大人気!
ベトナム社会ではクルマだけではなく、広く韓国資本が浸透している。実際、スーパーのお菓子売り場へ行けば、ロッテやオリオンといった韓国ブランドのお菓子が多く陳列されている。
ベトナム戦争時、南ベトナム支援のため韓国は派兵し参戦していた。そして、ベトナム戦争が終結し北ベトナムがベトナム社会主義共和国となり南北ベトナムを統一した。その後、1986年のベトナム共産党第6回党大会で「ドイモイ(日本語訳は刷新)」というスローガンが提起され、1990年代に外資誘致が積極的に行われると、韓国企業がいち早くベトナムへ進出し、韓国資本は今日のベトナムで強みを見せているものと筆者は理解している。
ベトナムにおける2024暦年締めでのブランド別新車販売台数をみると、地元ビンファストと韓国ヒョンデはVAMA(ベトナム自動車工業会)非加盟となり、独自に統計数字を発表(しかもビンファストは販売台数ではなく納車台数)しているので、VAMA加盟ブランドはVAMA発表統計、そして非加盟ブランドは自主公表値を加味した、暫定ともいえる新車販売ランキングを見てみると、トップがビンファストとなり、2位がヒョンデ、そして3位がトヨタとなっている。
あくまで暫定という表現を使わせてもらうが、ベトナムではヒョンデがトヨタを抜いて2位となっているのである。そもそもハノイ市内はヒョンデのコンパクトモデル、i10のタクシーが多いのだが、i10よりひとまわり大きいセダンとなるアクセントもライドシェア車両で大活躍。つまり、フリート販売も積極的に行い、販売台数を伸ばしているということになる。
とはいってもコンパクトクロスオーバーSUVのクレタや、ミドルサイズクロスオーバーSUVとなるサンタフェなどを中心に、一般自家用需要として街なかを走っている様子もよく目にする。
やっぱり憧れは日系ブランド
乗用車では、2024年に新型になったばかりのアクセントが、そのエッジの利いたエクステリアもあり街なかでは異彩を放っていた。そもそも実用セダンであり、前述したように、ライドシェア車両などフリートセールス向けといっても過言ではないモデルではある一方で、エクステリアだけではなくインテリアでも、デジタル計器盤を採用するなど先進性を強くアピールしていた。
商用車ではLCV(ライト・コマーシャル・ビークル)ベースの小型バスではフォード・トランジットが圧倒的に多いのだが、それに負けない勢いでヒョンデ・ソラティ(Salati)も多く走っていた。
マイクロバスでは圧倒的にヒョンデ・カウンティばかりで、たまに三菱のローザを見かけるぐらいとなっている。
大型貸切バス(観光バス)についても、ヒョンデのユニバースほぼ一択といっていい状態になっており、筆者の体験した限りでは、他国では見たことのないユニバースのショートタイプボディのバスもよく走っていた。バスターミナルへ行くと、中国メーカーの寝台タイプの都市間路線バスや、中型クラスで日系メーカーシャシーがベースの車両などがあったものの、大型タイプはユニバース、マイクロバスはカウンティ、LCV派生はソラティばかりが停まっていて驚かされた。
一方タイでは、ベトナムでのソラティに代わってトヨタ・コミューター(ハイエース)が、カウンティに代わってはトヨタ・コースターが定番となっている。ベトナムでヒョンデがほかの地域より存在感が高まっている、まさにわかりやすい例といえるだろう。
ただ、フリート販売で結構台数を稼いでいるせいもあるのか、トヨタではカローラクロスあるいはヤリスクロス、マツダではCX-5、三菱ではエクスパンダーやエクスフォースと、目立って人気があり、売れている看板車種はどれかと考えるとはっきりしない。ヒョンデのなかであえて1番売れているといえば、タクシーでよく見かけるi10系となってしまうだろう。
販売台数ではヒョンデに抜かれているものの、結局のところ、ほかの東南アジア市場同様に、日系ブランドが消費者の憧れとなり、一般自家用需要では高い人気を得ているという結論にベトナムもなるのかもしれない。

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