吉村洋文氏

 20日に投開票が行われる参議院選挙。各党が激しい選挙戦を繰り広げる中『ABEMA Prime』は政党研究を実施。今回は「日本維新の会」をピックアップした。

【映像】名演技?吉村氏が出演したショートドラマ

 日本維新の会は、2010年に当時の橋下徹大阪府知事が地域政党として立ち上げた大阪維新の会が母体。2012年に国政進出を目指し、日本維新の会を結成すると、その年の衆院選では54議席を獲得し一躍、野党第2党になった。

 その後は党の分裂や党名変更などを経て、2016年に現在の体制になると、馬場伸幸代表時代には野党第一党の立憲民主党を支持率で超えるほど確かな立場を築いた。しかし昨年の衆院選では議席を減らし、今回の参院選でも比例代表の投票先では10党の中で7番目と苦しい状況に立たされている。大阪府知事と二足のわらじを履く吉村洋文代表は、社会保険料の引き下げを掲げているが、これが起爆剤となるのか。政策の詳細と覚悟を聞いた。

■日本維新の会に聞く“10の質問”

社会保険料の引き下げ

 まずは、各党共通の10個の質問を聞いた。

Q1.党が一番大事にする理念は?

 現在利益より将来利益。

Q2.今回の選挙で一番の推し政策は?

 社会保険料を下げる改革。

Q3.党を推している人たちにはどんな人が多い?

 未来のことも含めて「頑張れよ」という改革志向の人。

Q4.世間のイメージの認識は?どんな党だと思われている?

 関西中心の党。

Q5.党として勘違いされている、誤解されている点はある?

 親中の政党だと思われているが、そうではない。

Q6.ネットのアンチに思うことは?

 特にない。

Q7.現時点の情勢調査の受け止めは?

 厳しいが、社会保険料を下げる改革は絶対に必要だと思うので、最後まで言い続けたい。

Q8.政策的に一番近い党、手を組める党は?

 今、選挙でバチバチにやっているので自分の政策、自分の党の政策を信じて進む。

Q9.絶対に組めない党はある?(アリ・ナシで)

 共産党

Q10.メディアに言いたいことは?

 ない。メディアはメディアで言いたいこと言った方が健全。

■吉村氏「将来のことを考える政党でありたい」「違うとなれば僕はクビ」

日本維新の会

 今回、日本維新の会は「社会保険料から、暮らしを変える。」をキャッチフレーズ参院選を戦っている。ポイントは主に4つで、市販薬で対応可能な薬の保険適用見直し、不要な病床を削減(医療費1兆円削減)、医療DX推進によるコスト削減、年齢ではなく所得に応じた公平な窓口負担があげられる。これらが実現すれば医療費は年間4兆円削減となり、手取りも年間6万円上げるとしている。

 吉村氏は「将来のことを考える政党でありたいから、社会保険料を下げる改革を訴えている。これは人気のない政策だと思うが、日本にとって絶対に必要なもので、それを正面から訴えたい。人気が出そうなことを訴えて生き延びるより、絶対に必要なものを提案したいし、それが選挙だ。『それは違う』ということになれば、僕がクビになって新しい人に代わる方がいい」と政策の重要性と覚悟を述べた。

 社会保険料を引き下げるとなれば、高齢者の有権者からの反発も想像される。「正面から訴えているが、僕らも本音はビビる。ビビるけれど言わなければいけない。それに高齢者でも子どもたち、孫たちのことを考えた政治をしてほしいと思っている人は多い。シルバー民主主義とも言われ、投票率も高く影響力は大きい。だから政治家はビビるけれど、正面からのこの政策を掲げた」と語った。

 経済学者竹中平蔵氏も、社会保険料の引き下げについては「一番重要だ」と同調する。「手取りが減っている最大の理由はこれ。GDPに占める社会保険負担の割合は10年ぐらいで2倍になり、隠れた増税をしており生活を苦しめている」と指摘した。

 改革の現実味はどれほどのものか。吉村氏は「政治で実現できる。大きなところでは保険の原理を取り戻すことを考えないといけない」と訴える。「今の社会保障、医療保険は保険の原理から外れて、給付があまりに大きくなりすぎている。保険というのは、たとえば重たい病気にかかった時にリスクが現実化した時に医療・治療を受けられて生活ができるというもの。それが軽微なものまでどんどん保険給付の対象になり、リスクヘッジのための保険ではなくなった。だから(国民医療費も)47兆円まで右肩上がりで増え、2024年には80兆円にもなる。社会保険料もそこから引かれている」。

 少子高齢化が進むにつれて、社会保険料の負担はさらに大きくなると言われる中「このままでは安心な医療を受けることすら難しくなる。それをなんとか回避したい。賛否はあるかもしれないが、給付を減らせば社会保険料が減る、ということをやりたい」と語った。

■社会保険料改革は有権者にどこまで届くか

主な公約

 身近な生活に直結する物価高騰対策などを各政党が打ち出す中、社会保険料を下げる改革はどこまで有権者に刺さるのか。2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「社会保険料改革と言われて、自分の生活がどう変わるのかわからない人が多数派だと思う。まだ国民に伝わっていない気がする」と疑問をぶつけた。

 今回の政策をわかりやすく伝えるために、党としてもショートドラマ風の動画を作成、SNSなどで展開、吉村氏自ら出演もしている。「社会保険料は負担が多くて、年収350万円の人なら、事業者負担で100万円も負担している。(個人でも)所得税なら7万円だが、社会保険料は50万円。350万円のうち50万円も引かれたら生活ができない。手取りに一番影響を与えているし、これを下げれば当然手取りは増える。これはもう『現在問題』だということを一生懸命に言っている」と、日々の生活に直結するものだと説明した。さらに事業者の負担も減ることは賃上げや雇用の増加にもつながるという。

 ひろゆき氏からは、社会保険料引き下げの対象になる若者が投票に行かず、逆に社会保険料を払っていない高齢者の有権者が多いことの難しさについて質問が飛んだ。これには「でも負担している人の方が圧倒的に多い。数としては会社員、サラリーマンの方が多いと思うが、多くの人は(社会保険料を)引かれるのが当たり前で、手取りが給料だと思っている。引かれる税金、社会保険料は操作できない、減らせないと思っている方が多いが、それは違う。これは制度だから変えられるし(額も)減らせる。その『変えられる』ことに気づかないと、論点にもならないのでショートムービーなどの入り口部分を一生懸命にやっている」と、現役世代への呼びかけにも必死だとした。

 これにひろゆき氏は「社会保険料を払う額が減り、それで子どもが増えて人口が増えたら、むしろ税金を払う労働者が増えるわけだから結果としてうまく回る。昭和の時代がそうだったように、支えられる人たちより働いている人たちが多かったから、何の問題もないシステムだった。あそこに戻すには、子どもを増やさなくてはいけない。社会保険料を減らすというのは、上の世代の人たちが困る話ではない」と理解を示していた。

 また吉村氏も「子どもは将来の消費者であり納税者であり生産者。本当はもっとそちらに投資するべきだし、そうしないと最後は日本、国民が困る。僕らは次世代の投資に力を入れている」と添えていた。
(『ABEMA Prime』より)
 

“社会保険料引き下げ”は有権者に刺さるのか 日本維新の会・吉村洋文代表「絶対に必要なものを提案」「違うとなれば僕はクビ」