
映画『夏の砂の上』は、雨が降らない夏の長崎を舞台に、オダギリジョー演じる伯父・治と、姪・優子がひと夏をともに暮らすなかで、互いに少しずつ変化していく物語。優子を演じた髙石あかり(22)は、その繊細で揺れ動く感情を、静かにスクリーンに映し出した。
「オーディションのとき、脚本の印象を聞かれたのですが、正直、内容も優子のセリフもわからない部分が多くて、素直にわからないと答えたんです。そうしたら、監督が『治がほんの少しだけ成長する話だよ』と教えてくださって。もっとシンプルに考えればよかったんだ、と救われました」
長崎での撮影は約1カ月。役作りというより、その地で生きることで自然と優子を演じられた。
「ホテルが山の上にあって、毎日急な階段を上り下りして現場に通っていました。終わったらみんなでご飯に行ったり、ちゃんぽんを食べ比べたり。本当に普通に生活していたんです。だからこそ、演じているというより、ちゃんと“生きていた”芝居になったのかなと思います」
少しずつ感情が芽生えていく優子の変化を強く意識したのは、ある雨のシーンだった。
「治と水を飲むシーンで、『飲みなよ』って言うだけなんですけど、あのとき、自分の中で、何かがつかめたんです。オダギリさんが『何よりも映画的だった』って言ってくださって、今もその言葉は頭に残っています」
本作の撮了から1カ月後、NHK朝ドラのヒロインに抜擢され、一躍注目を集める存在に。
「反響は衝撃的でした(笑)。でも、自分自身は変わっていないと思います。家族や身近な人との関係性も以前のまま。環境的には大阪に住むことになりますが、心は変わらないように意識しています」
話題となった『御上先生』(TBS系)での演技も、多くの人に新たな一面を印象づけた。
「この作品で初めて知ってくださった方に、過去の作品も見てもらえたらうれしいです。アクションだったり、まったく違うキャラクターだったり、本当にいろんな役をやらせてもらっていて」
役によって見せる顔が異なる髙石自身も、自分については「よくわからない」と笑う。
「理性的なところもあれば、すごく自由な面もある。人から言われることが真逆なことも多くて。大人っぽいって言われることもあれば、子どもっぽいとも言われることもある。優子も、そういう両面を持っている子だったから、近かったのかもしれません」
今、俳優として目指すのはただ一つ。
「芝居が好きっていう気持ちが変わらなければ、それでいいと思っています。ジャンルや規模に関係なく、その役にまっすぐ向き合っていける力をつけたい。経験を重ねて、もっと深みのある演技ができるようになりたいです」
そんな髙石の心に残っている言葉は、「初志貫徹」。
「昔いただいた言葉なんです。俳優という夢にずっと憧れて、今もその夢の中にいる。守らなきゃっていうより、自然とずっと心にある言葉なんです」
ヘアメーク:住本彩
スタイリング:金田健志
【衣装協力】
ドレス(seya.)/イヤリング(SAFON)、ネックレス(YArKA)、ブレスレット(four seven nine)、リング(O→KI)すべてロードス/その他:スタイリスト私物

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