
悪循環に陥ることなく、ブレずに打ち続けている佐藤。(C)Getty Images
虎の快進撃がどうにも止まらない。
阪神は7月10日の広島戦(マツダ)に6-3と勝利。逆転された直後の7回表に森下翔太と佐藤輝明の2者連続適時二塁打で一挙5得点を挙げて勝ち越し。地力を見せつける内容で、2リーグ分立後、球団最長タイとなる11連勝を飾った。
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これで2位とのゲーム差は9.5と独走態勢を固めている阪神。リーグの貯金を独占する18で着々とV奪回へ覇道を突き進むチームの勢いは、厳しい戦いが控える8月を前に加速している。
残るセ・リーグ5球団が借金生活という状態は、今季の異常さを物語る。そんな中で、他を寄せ付けずに首位を快走する阪神にあって、頼もしいのはポテンシャルの塊だった大砲、佐藤の覚醒だ。
食い下がる広島を突き放したこの試合でも背番号8は異彩を放った。2回表に相手先発の森翔平が初球に投じた甘く入ったスライダーを軽々と右翼席に運ぶと、2死二塁の絶好機で回ってきた7回の打席ではフルカウントまで粘り、最後は外角への4シームを逆方向へと流し打ち。これが左中間を破るダメ押しの適時二塁打となった。
ここ数年は好不調の差が激しく、幾度となく壁にぶち当たってきた。攻守で精彩を欠いた昨季は二軍降格も経験するなど一軍に留まれない時期もあった。
「攻められるから振るという悪循環があった。結局その球をどう打つかではなく、どう見送るか。相当ボール球を振ってると思う」
そう、岡田彰布元監督(現オーナー付顧問)からも指摘されることがあった。安易なボール球に手を出し、三振の山を築いてしまう“悪癖”が治らなければ、特大のポテンシャルも宝の持ち腐れになるという指摘もあった。
しかし、今季はそうした悪循環に陥る素振りは一向に見られない。それは何よりも数字の安定が物語る。81試合に出場している佐藤は、打率.289、23本、60打点、長打率.600、OPS.950のハイアベレージをキープ。球団の左打者では、2010年のクレイグ・ブラゼル以来となる年間40本塁打超えも可能なペースで打ちまくっている。
また、今季の打力は近年の球界全体で見ても稀有なものだと言える。それを推し量るのは『wRC+』という指標だ。これは打者が打席あたりに産み出した得点の傑出度を表したものなのだが、ここまでの佐藤は「209」もある。これは過去10年で見ると、「233」を叩き出した村上宗隆(22年)に匹敵する水準と言える。ちなみにこのシーズンの村上はご存知の通り、三冠王に輝き、空前絶後の大フィーバーを巻き起こしている。
まさしく猛打爆発といった感がある佐藤。この球団史に残るであろう大砲が安定して打ち続けている限り、阪神の勢いは止まりそうにない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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