「Makuake」でクラウドファンディングが始まるやいなや購入希望者が殺到し、用意した2500台がすぐに売り切れたケルヒャーの「OC Handy Compact」(通称:ハンディエア)。折りたたむと手のひらにのるほどコンパクトな高圧洗浄機であり、ケルヒャー ジャパン内で開発された“日本発”の製品でもある。どのようにして生まれ、どの程度の洗浄力があるのか。

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 また、同社はMakuakeでの再販予定はないとしているが、クラファンの好調を受け、プロジェクトページには今後の展開について「至急社内で協議」すると書かれており、その結果も気になるところだ。こうした疑問に対し、ケルヒャー ジャパンがメールインタビューに応じてくれた。

──クラファンの手応えについて教えてください

 おかげさまで予想をはるかに超える大きな反響をいただき、プロジェクトメンバー一同、大変驚いています。6月22日11時にプロジェクトを開始し、約20分で2500台が完売しました。ページエラーが起き、買えなかったというお客様の声も多数届いており、申し訳なく思っております。

 一方、ご購入いただけたお客様からは「こんな製品を待っていた」「届くのが楽しみ」「以前からケルヒャー製品が気になっていたので、これを機に応援購入した」といった好意的なコメントが多数寄せられ、応援登録者数は2万人超を記録しました。メディアからの取材もたくさんいただいております。この大きな反響に、大変喜ばしく思っております。

──ケルヒャー ジャパン内で「手のひらのケルヒャー」プロジェクトを立ち上げた経緯やこれまでの活動内容を教えてください

 「手のひらのケルヒャー」プロジェクトは、ケルヒャーブランドをより幅広い層に届けることを目指しました。

 これまで高圧洗浄機は、主に自宅での据え置き使用だったため、アクティブで効率的なライフスタイルを好む都市生活者の「手軽に清掃したい」というニーズに必ずしも応えられていませんでした。特にお出かけ先や帰宅前の、その場でサッと汚れを落としたい場面では、手軽さや携行性、収納性が課題でした。

 ケルヒャーは、この「ハンディエア」のローンチにより、場所や時間に縛られることなく、いつでもどこでも「きれい」を追求できる、清掃ソリューションを提供します。特にアウトドアやレジャーといった「お出かけ先で高圧洗浄機を使う」という、新しいライフスタイルシーンでの高圧洗浄機の活用を提案するために本プロジェクトを立ち上げました。

 従来のケルヒャー製品は、その高い洗浄力に定評がありますが、一方で「大きい」「かさばる」「セッティングが面倒」「電源や水源の確保が必要」といったイメージもありました。そこで、もっと手軽に、もっと自由にケルヒャーを体験していただくための製品開発がプロジェクトの原点です。

 これまでの活動としては、製品コンセプトの立案から始まり、小型化・軽量化を実現するための技術検討、デザイン開発、そして市場のニーズを探るためのヒアリングなどを重ねてきました。特に、既存のケルヒャーユーザーだけでなく、高圧洗浄機に馴染みのない層にも響くようなプロダクトにするため、徹底したユーザー視点での開発を心がけました。

──企画・開発する上でこだわった点、苦労した点などありますか?

 企画・開発において最もこだわった点は、ケルヒャーの「洗浄力」と「携帯性」の両立です。単に小さくするだけでなく、ケルヒャーとして満足のいく洗浄性能を確保しつつ、片手で持ち運べるサイズ感と軽さを実現することに注力しました。

 苦労した点としては、小型化に伴う部品配置の最適化や、バッテリー駆動でありながら安定した水圧を維持するための新しいポンプセットの開発が挙げられます。折りたたみ式を採用したことで、内部の配線が複雑になったことも開発に苦労した点でした。折りたたみ式に加えて屋外での使用を想定しているため、耐久性や防水性にも十分配慮する必要がありました。これらの課題をクリアし、ようやく「ハンディエア」が完成しました。

──小さくすることで制約も生じるかと思います。ハンディエアの最大圧力1.5MPaという数字は、ケルヒャー製品の中ではどのあたりの位置づけになるのでしょうか?

 ケルヒャーの本格的な家庭用高圧洗浄機の最大圧力が8~12MPaなので、それらと比較すると最も低い圧力帯に位置しますが、水道圧を比べた場合、直結式一般住宅の配水管水圧最大0.2MPaを基準とすると約7.5倍の圧力になります。

 この圧力は、例えば外出先の泥汚れや車のスポット的な汚れ、スニーカーやベビーカー、キャンプグッズ、趣味の製品など、日常のちょっとした汚れを手軽に洗浄するのに最適です。一方で外壁についた長年の頑固な汚れを一掃したり、車全体を隅々まで洗浄したりといった用途には従来の高圧洗浄機が適しています。

 ハンディエアは内蔵バッテリー式なので、コード式の高圧洗浄機のように長時間使えません。従来の高圧洗浄機のように、さまざまな箇所の洗浄に対応するアクセサリーもありません。その分、使用場所を選ばず、片手で気軽に持ち運べるという、これまでのケルヒャー製品にはなかった新しい洗浄が可能になりました。

──最後に、クラファンのプロジェクトページに書かれていた「至急社内で協議」の結果を教えてください

 ご支援いただいたたくさんの方々のご期待に応えるべく、社内で協議を進めております。ただ、生産に関わることなので時間を要しております。日本のユーザーの要望は随時本国へ伝え、近い将来の一般販売実現に向けて尽力しています。

 「手のひらのケルヒャー」は、ケルヒャー ジャパンの新しい挑戦であり、皆さまのライフスタイルをより豊かにする製品と信じております。今後の展開にぜひご期待ください。

──ありがとうございました

「OC Handy Compact」(通称:ハンディエア)