よかれと思って入ったその保険。「教育資金のため」「老後のため」と加入した保険が、家計を圧迫する原因になっていることも。本来の目的から外れた保険は、あなたを「保険貧乏」に導きかねません。本記事では、伊達有希子氏の著書『夫婦と子ども2人、世帯年収650万円。どうしたら家が買えますか?:マンガでわかる!一生お金に困らないライフプランのつくり方』(大和出版)より、無駄な保険料を払わずに着実にお金を貯める方法について解説します。

保険での貯蓄や投資がNGであるワケ

家計の相談に乗っているとよく出てくるのが「保険」の話です。保険は、死亡、病気、ケガなどにより、収入が入らなくなってしまったときや大きな支出が必要になったときに、自身や家族の生活を支えるための金銭的な保障の手段です。

ところが、たまに「教育資金を貯める目的で保険に加入した」「貯蓄するよりも保険のほうが、お金を増やせそうだから入った」という方がいらっしゃいます。これは適切ではありません。保険は、なんらかの理由で満期前に引き出すことになった場合、元本割れするリスクもあり、投資として考えるにはとても効率が悪いからです。

家計を一軒の家に見立てた場合、土台となる1階部分は貯蓄と万が一のときの保障、その上に乗る2階部分に投資がきます。当たり前ですが1階部分がしっかりできてこそ初めて2階をつくることができるので、1階の貯蓄や万が一の保障がしっかりしていない段階から2階部分にあたる投資などを検討、始めること自体がNGです。

ライフプランをつくれば必要な貯蓄額と万が一の保障の額を把握することは簡単ですから、その上で投資を始めれば安心です。

保険に入るなら毎月1〜2万円の死亡保険

保険は、投資目的ではなく純粋に保険として加入をしてください。今はいろいろな保険があり、CMやパンフレットを見ていると、どれも必要なものに思えてしまう方がいるかもしれません。ましてや子どもが小さいときは、なおさら「万一のことがあったら……」と思うと、あれもこれも加入したくなりますよね。

保険会社などで、加入した場合のシミュレーションをしてもらうと、「毎月、この金額なら支払っていけそう。この金額で手厚い保障を受けられるならいいかも」と思うかもしれません。ただ、あのシミュレーションは、一般的な家族構成をもとに算出したものをベースにしていますが、同じ4人家族で同じような年齢構成であっても、職業や特性、周りの環境など、個人や家庭によって細かく状況は異なるので、加入前にもっと検討することが大切です。

私は、保険の相談を受けた際、「どうなったとき、一番お金が必要だと思うか考えてみてください」と、お伝えしています。おそらくお金が一番必要になるのは、子育て中にママやパパが亡くなったときでしょう。保険商品の中でも死亡保険は、払い込んだ金額に対してリターンが大きいものが多いので、選ぶなら死亡保険がいいでしょう。

また、保険にかける毎月の金額は、目安として1~2万円程度に留めておきましょう。「それだけだと万一のときに不安……」と感じるなら、貯金をするなど、制約なくお金を引き出せるもので貯めておくようにしましょう。会社の団体保険は割安で手厚い保障を買うことができるので、今一度制度を確認してみることをおすすめします。

そうはいっても「どの保険を選んだらいいかわからない」「教育資金を貯める目的で保険を選択しようと思っていたが、他の選択肢も検討したい」といった場合、なかなか自分たちで情報を集めるのが難しいこともあると思います。そのようなときは、FPなどお金の専門家に相談するのも1つの手です。

「先取り貯蓄」、4つのステップ

先取り貯蓄をしてしまえば、生活はおのずと残ったお金に合わせてアジャストしていくことになり、結果的に順調に貯蓄を増やしていくことができます。このときにポイントとなるのが、順調に貯蓄が増えるようお金の流れを「しくみ化」することです。

先取り貯蓄を実行する手順を述べておきます。

1.先取り貯蓄

ライフプランをもとに、いつまでにいくら貯めるのかを把握することで、必要になるまでの時間を逆算し毎月いくら貯蓄すればいいかを計算。

2.特別支出積立

1~5年くらい先の見えている夢、目標、イベントに対して積立をしましょう。

3.家計の現状把握のために家計簿アプリを活用

1カ月分の収支を確認してみる。支出は特に固定支出と流動支出に分けてチェック。

4.管理の手順をしくみ化

給与の指定口座の変更、先取り貯蓄の設定、特別支出積立の設定、生活費の引き落とし設定などを行います。

収入が入ったら、その月に貯蓄すべき額を先取り貯蓄に回しましょう。「貯蓄に適切な額は、収入の約〇割」という考えもあるようですが、必要な額と準備期間は人によってそれぞれ異なりますよね。だからその考えにとらわれる必要はないと私は考えます。それよりもライフプランをつくって自分の貯蓄するべき額とタイミングを把握するほうが重要です。

先取り貯蓄をすると毎月の生活が苦しくなってしまうケースもあります。例えば子どもが小さく妻が働けない時期は、定額を貯蓄しながらだと日々の生活がカツカツになるかもしれません。そんなときは無理をせず、貯蓄をすること潔くやめましょう。

数年後、子どもが幼稚園や小学校に入学して妻が働き始めて稼げるようになれば、収入が増えるので家計は黒字になり、貯蓄ができるようになるでしょう。人生の中ではそういう「稼いで貯められる」タイミングと、「稼げない、貯められない」タイミングがあることを知っておくだけでも、自分を責めてしまったり、むやみに貯蓄に振り回される必要がなくなります。

伊達 有希子 フィナンシャル・プランナー

(※写真はイメージです/PIXTA)