2024(令和6)年 国民生活基礎調査』(厚生労働省)より、「平均給与」からは見えてこない、日本人のリアルなお金事情について見ていきます。

平均給与「458万円」だが所得の中央値を見ると…

令和5年分 民間給与実態統計調査結果』(国税庁)によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は458万円。令和4年分は443万円で、15万円の上昇が見られました。

ですが、上記は「給与」の平均値です。年金や財産所得などを含めた「日本人の所得」はいくらになっているのでしょうか。

2024(令和6)年 国民生活基礎調査』(厚生労働省)では、日本人の平均所得を調べています。1世帯あたり平均所得金額は、「全世帯」が536万円。「高齢者世帯」が314万8,000円、「高齢者世帯以外の世帯」が666万7,000円、「児童のいる世帯」が820万5,000円でした。

物価の上昇する昨今ですが、2022年の同調査では「全世帯」が545万7,000円という結果でした。全体として下がっていることに、衝撃を覚えるのではないでしょうか。

さらに、これはあくまで所得の平均値。所得分布を見ると、また違った様相が明らかになります。

所得金額階級別に世帯数の相対度数分布をみると、「100~200万円未満」14.4%、「200~300万円未満」14.4%、「300~400万円未満」13.1%と、所得300万円未満の世帯が最も多くなっています[図表]。

中央値(所得を低いものから高いものへと順に並べて2等分する境界値)は410万円。さらに平均所得金額(536万円)以下の割合は61.9%と、過半数を大幅に超えています。

所得300万円の場合、ひと月当たりの収入は25万円といったところです。奨学金をはじめとした借金を抱えておらず、健康であり、家族への資金援助なども行っていない単身世帯なら、問題なく過ごせる金額かもしれません。しかし、現実の日々はそうなだらかではないものです。

平均給与が話題になると、「458万円なんてもらってない!」という声が多く上がります。その実感値は表立って報道されないものの、しっかりとデータに現れているのです。

「大変苦しい」「やや苦しい」が過半数という現実

同調査では、日本国民の生活意識についてもアンケートを取っています。「大変苦しい」「やや苦しい」「普通」「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」の5択のうち、「大変苦しい」「やや苦しい」と答えたのは全体の58.9%。昨年の59.6%からほぼ横ばいです。高齢者世帯では55.8%、児童のいる世帯では64.3%。

なお総務省『家計調査 2022年(令和4年)貯蓄・負債の概要』より、年齢別2人以上の世帯の貯蓄額について見てみると、40歳未満「812万円」、40歳~49歳「1,160万円」、50歳~59歳「1,828万円」、60歳~69歳「2,458万円」、70歳~「2,411万円」となっています。

老後資金2,000万円問題が話題になって久しいですが、60歳以上の方の貯蓄額を見れば、「基準値ライン」を超えていることがわかります。順当に働き続けたら、苦しい生活を抜け出して穏やかな老後を過ごせるんだ……と考えたいところですが、平均給与や所得分布を思い起こせば、惨憺たる気分になってしまうのも無理はないかもしれません。

物価高に加え、社会保険料や扶養控除の見直しにも注目が集まる今、「働く日本人」は岐路に立たされています。

(※写真はイメージです/PIXTA)