長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『頂上決戦!人類VS最強AI』(フジテレビ)をチョイス

生き残ったら乾杯しよう『初耳怪談』/テレビお久しぶり#159

■うわっ…私のリテラシー、低すぎ…?『頂上決戦!人類VS最強AI』

人間とAIが己のプライドを賭けてババ抜きで対決する番組、『頂上決戦!人類VS最強AI』。霜降り明星・せいや、ロッチ、村山輝星に加え、QuizKnockふくらPマジシャンのKiLA、プロポーカープレイヤーのじぇいそるの3名が強力な助っ人として参戦する。表情、音声、視線を細かく分析し、常に最善手を選び続ける最強AIに、人類は勝利することができるのか?

ババ抜き運ゲーだ。いくら状況判断に優れていて、全員の手札を完璧に読んだとしても、自分が何を引くか、そして相手が何を選ぶかは分からない。であれば、唯一許されている”カードを引く”というアクションを常に最適化し続けるほかはない。AIは、「ジョーカーを持っていますか?」といった質問を相手に投げかけ、その反応を見て引くカードを決めていく。

実際、運ゲーだから、AIは1位にはならない。しかし、4位にもならない。「勝つこと」には少なくない運が必要だが、「負けないこと」には実力が必要。麻雀なんかと同じである。それでも勝たねばならない人類は、どのような方法でAIにババを引かせればいいのだろうか。

めっちゃ面白い番組だったよ。人の表情や声色、視線の動きでここまで読めてしまうものなのか。その分析技術は、プロポーカープレイヤーがババを引いたのを見破ってしまうほど。私って、ポーカーフェイスには自信があると思っていた(根性焼きでも無表情で耐えられる。注射は泣いちゃうけど……)けれど、こんなのを見ちゃうと考えを改めなきゃならない。すべてを見透かされているようで、こちらまでゾッとしてしまった。これからは正直に生きることにしよう。

最近、AI生成のショート動画が流行っている。動物系の癒されるものであったり、悪夢のようなホラー・コンテンツだったり、はたまた、未だ完璧ではないAIの生成技術の拙さを笑って楽しむような向きもある。これくらいなら平和なものだが、特定の属性への憎悪を煽るような悪質なフェイク動画も定期的に拡散されており、我々にはさらなるリテラシーが求められることになるだろう。私は96年生まれのデジタル・ネイティヴだが、クマに襲われそうになっている赤ん坊を犬が追い払う動画を、AI生成だと見抜くことができなかった。気まぐれでコメント欄を見なければ「本当にあったこと」だと信じ切ったままだっただろうし、すでにそう信じ切ってしまっているものもたくさんあるのだろう。私はDJ OZMAの正体が綾小路翔だということに気付かなかったし、『格付けチェック』なるテレビ番組を知らなかった。28のときに初めて知った。その程度のリテラシーなのだ。過信しないよう気を付けよう。

■文/城戸

「テレビお久しぶり」/(C)犬のかがやき