フィアット「500」にハイブリッドモデルが年内登場! EV化からわずか1年で方向転換した理由とは?【みどり独乙通信】

EV化から一転、内燃機関モデルが再び登場

EV化が進むなかで姿を消したはずのフィアット「500」内燃機関モデル。しかし今、ハイブリッドモデルが登場することで話題になっています。その裏側には、消費者の声と市場の現実がありました。

EV化からわずか1年での大転換

ドイツには梅雨はなく、6月はカラリと晴れた初夏の陽気でとても良い季節です。緯度にもよりますが、私の住むミュンヘン市では夏至のあたりは21時過ぎまで明るく、冬とは違って暗くなる時間が短いのも嬉しいのです。ちょうど今はボタン科のお花がシーズン真っ盛りで、店先で思わず立ち止まってしまいます。

さて、約1年前の2024年の夏、フィアット大人気車種であるフィアット「500」の内燃機関の製造を終了。世界中のファンに惜しまれながら「さよなら」を告げ、次の世代を担うEVへとスイッチしたことは記憶に新しいですね。しかし、なんということでしょうか。フィアット500のエンジンを搭載したハイブリッドが、2025年第4四半期に生産開始予定という報道が入り、心躍らせた人々も多いのではないでしょうか。

その復活の理由としては、2024年の秋から本格的に大忙しとなるはずだったBEVバージョンの「500e」の受注台数が非常に低く、度々工場のラインをストップする事態に陥っていたことがありました。売り上げが低迷する500eの裏では、内燃機関復帰への問い合わせが山のように寄せられていたのだそうです。ラインを止めてまでEUの指針に従うことを急ぐよりも、雇用を守り、需要に応じる方向へとフィアットは舵を切ったわけです。

500e、ドイツでコンパクトEV販売台数No.1に

2025年のドイツ国内におけるコンパクトカーのEVのなかでは、500eが販売台数No.1を獲得し、同年1月〜4月の総売り上げではシェアNo.2という地位を築いています。以前にこのコラムでもご紹介した通り、500は本国イタリアよりもドイツの方が人気で、販売台数もイタリアより多いという現象が起きています。2024年度では、内燃機関とBEVを合わせて、ドイツでは7万3246台もの500が新規登録されていました。

私の住むミュンヘン市の街角では、イタリアに行ったときよりも数多くの500を毎日のように目にします。その愛らしく洗練されたデザインは、ドイツのユーザーには老若男女問わず大人気です。とくに都市部では縦列駐車のスペースが非常に狭いことも多いため、中心部にお住まいの方にはとくに人気なのかもしれません。私のようにクルマを利用するのはほぼ遠距離のみというユーザーにはなかなか厳しいですが、市街地やその近郊で利用するには、よほどの大人数や大荷物がない限り十分でしょう。

フィアット「500」にハイブリッドモデルが年内登場

生産が再開されるモデルのエンジンは、以前と同様に1Lの3気筒、最高出力70psとなる見込みで、価格は昨今の物価高により若干の値上げが予想されていますが、それでも500の内燃機関モデルを欲しいという方々が、世界中にいらっしゃることでしょう。

ブドウの搾りかすが燃料に

EUは2035年までに欧州域内で二酸化炭素を排出する乗用車と小型商用車の販売を禁止する方針を掲げ、自動車メーカーやそれに関連するサプライヤーはもちろんのこと、一般市民にも不安と混乱をもたらしたことは記憶に新しいです。しかし、さまざまな視点から、あやふやな時期を経て、ヨーロッパは少し落ち着きを取り戻した感じががあります。

それよりも今は内燃機関を長く所有できるようにすべく、e-Fuel(合成燃料)の開発が急ピッチで進められています。まだまだ高額で一般市民が利用できるようになるまでには時間が必要ですが、世界的に有名なル・マン24時間レースやスパ24時間レース、GTワールドチャレンジが代表的なSROグループ主催のレースでは、TotalEnergies(トタルエナジーズ)が開発・製造した100%再生可能燃料「Excellium Racing 100」が全車に使用されています。これはなんとブドウの搾りかすや澱(おり)から作られているそうです。ヨーロッパにはワイン農家が多いという、研究者の方々の着眼点も興味深いですよね。

また、DTMドイツツーリングカー選手権)をはじめとするADAC(ドイツ自動車連盟)主催の主要レースや、日本のスーパーGTでも脱炭素化の取り組みが精力的に行われています。化石燃料を使用しない合成燃料を使用したレース活動を行う試みが進められており、モータースポーツの世界ではEV化一辺倒で考えるのではなく、燃料やペットボトルのゴミ削減への努力を通じて地球環境保護活動に取り組んでいます。

同時に、過酷なモータースポーツの実戦を通して研究・開発が進められ、一般的な燃料に近い価格帯まで下がって普及することを願うばかりです。

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フィアット500:黄色にステッチが入っていて可愛いです