
北海道北広島市にある球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」。2023年に開業してから丸2年が経過し、球場を含む北海道ボールパークFビレッジは2024年の年間来場者数が400万人を突破した。本稿執筆時(7月9日)、北海道日本ハムファイターズもパ・リーグ1位の座を守り、快進撃が続いている。
【画像】エスコン周辺はこんなことになっていた! 無断駐車しないように呼び掛ける看板、1日2000円の駐車場、球場付近に停車している車(全9枚)
一方、問題になっているのがFビレッジ周辺の迷惑駐車だ。一部では100台を超える迷惑駐車があるとの報道もあった。現状、球場周辺はどのようになっているのだろうか。筆者は現地に行ってみることにした。
●近隣住民「路上駐車は迷惑な話だ」
6月のある日、Fビレッジを訪問した。近くでレンタサイクルを借り、球場周辺を走って回った。球場周辺のとある駐車場には「ESCONフィールド北海道野球イベント開催日」と書かれた看板があった。駐車料金は1日2000円で駐車場は満車の状態だった。この駐車場から見て道を挟んで向かいにも駐車場があった。
「エスコン開催日1日1台2000円、軽自動車先着5台1日1500円」と手書きで書かれており、急いで作ったものなのかもしれないと想像できたが、駐車してある車はまばらだった。場所によってはばらつきがあるのかもしれないと想像しながら自転車を走らせた。
球場をぐるっと半周した。その間、球場の駐車場近くには警備員が等間隔で並んでおり、異様な光景だった。Fビレッジを運営するファイターズ スポーツ&エンターテイメントに話を聞くと「一連の迷惑駐車の報道を受けて警備員を増やしたわけではない。試合開催日のため警備員を増やしている」と回答した。
もう少し走ると、2台の車がポツンと駐車してあった。ここは札幌養護学校共栄分校付近にあるグラウンドの隣である。中には誰もおらず、車を置いてどこかに出かけているようだ。周辺で聞き込みをしたところ、とある住民は「昨年も路上駐車をしている車はあったが、それほど報道されることはなかった。今年に入って報道が増えてきた印象だ。それにしても迷惑な話だ」と困惑していた。
●近隣施設にも迷惑が及んでいる?
その近くには「無断駐車禁止」と書かれた看板も。看板には「北ひろしま福祉会の私有地につき、無断駐車禁止です。駐車許可証のない車両はレッカー移動します」と書かれていた。付近には北ひろしま福祉会の本部や、運営する障がい者福祉施設「北広島コラボ」が所在する。Fビレッジ周辺の迷惑駐車が、全く関係のない施設にも及んでいると推察できた。
一通りの取材を終え、JR北広島駅へと向かおうとしたそのとき、警備員があまり配置されていない道路に1台の車が停車していた。その車から1人の男性が降り、球場の中へと消えていった。車はしばらく止まっていたが筆者に気付いたのか、それからすぐいなくなっていた。
そのほかにも、球場正面を通る道路「ボールパーク通り」にも路上駐車している車を数台発見した。そのうち1台からは、ちょうど1人の女性が降り、球場に入っていった。このように、実際に目の前で迷惑駐車が当たり前のように行われている現状が見られた。
なぜこのような問題が起きるのか。それは、迷惑駐車が相次いでいる市道が「駐車禁止区域ではない」ためである。警察による取り締まりができず、近隣住民たちは対応に頭を悩ませているのだ。一時期は100台あまりの車が駐車していたという。
その他、Fビレッジの南側を流れる輪厚(わっつ)川辺りの河川敷でも駐車が目立っている。実際、筆者が取材に向かい、取材を終えて帰ってくる際にも、川のほとりに駐車された車がずらっと並んでいた。
●警備員に話を聞くと……
この問題の背景としてもう一つ考えられるのは、球場周辺の駐車場が基本的に有料、もしくは予約制であるという点だ。Fビレッジ内にある予約制駐車場料金は3000~3500円、周辺の駐車場も2000~3500円程度の価格で、駐車場チケットを事前に購入する必要がある。
球団は6月上旬、球場の前を通る道路「アンビシャス通り」を挟んだ向かい側に、3000円で利用できる「えふたん駐車場」も用意した。このように、球場周辺は予約・有料制の駐車場が多く、その料金を支払いたくない利用者が、無断で路上駐車をしているというわけだ。
Fビレッジ内にある予約制有料駐車場の一つ「ポリーパーキング」の警備員に話を聞く機会があった。球場の訪問者が駐車場を利用しようとしたところ、駐車券を持っていないことに気付き、別の駐車場を探しに行くケースが割と多いという。
●球団関係者は「こちらから何も伝えることはない」と回答
迷惑駐車が相次ぐ事態を受け、北広島市は近隣の時間貸駐車場を利用するよう公式Webサイトで注意喚起している。
前出のファイターズ スポーツ&エンターテイメントの担当者は、迷惑駐車について「こちらから何も伝えることはない。(問題となっている)道路は北広島市の市道なので、こちらの担当ではない」と回答している。では、北広島市の担当者はどう思っているのか。
筆者の取材に対し、市の担当者は「違法駐車はどちらかというとモラルの問題だ。市としての対策は看板の設置とチラシをワイパーに挟んでいることだけ。当初は60~70台の迷惑駐車を把握していたが、市の対策や報道もあり、苦情件数は減っている。今はあっても20~30台ほどだ」と回答。対策に要する予算については、「やみくもに増やすのではなく、今後の状況を見て判断したい」と慎重に答えた。
市は札幌市の厚別警察署と連携し、共栄町周辺に「路上駐車はご遠慮ください」と書かれた看板を設置。4月25日と5月14日には、工業団地周辺で迷惑駐車をしている車両に対して注意喚起を行うチラシを車のワイパーに挟むなど、対策を進めた。加えて、電動モビリティのシェアサービスを展開するLimeは、5月から北広島で電動キックボードの実証実験を行っており、約100台を導入する動きも出ている。
Fビレッジの盛り上がりとは裏腹に、迷惑駐車が発生していることを受け、一部では、大型イベントの開催時に道警や市などが周辺市道の一部を駐車禁止にする話も出ている。行政などはこれから課題にどのように向き合い、解決を図っていくのだろうか。まだ具体的な解決の絵は見えていない。
著者プロフィール:小林英介
1996年北海道滝川市生まれ、札幌市在住。ライター・記者。北海道を中心として、社会問題や企業・団体等の不祥事、交通問題、ビジネスなどについて取材。阪神タイガースをこよなく愛しており、道内や東京などで居酒屋巡りをするのがライフワーク。

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