日々仕事に追われる社会人が、今よりも自由な時間を確保するにはどうしたらいいでしょうか?本記事では、成功している経営者や優秀なビジネスパーソンの時間術を解説した安田修氏の著書『やらない時間術』(かや書房)より一部抜粋・再編集し、自由に使える時間を手に入れるために知っておくべきビジネスの”本質”と、究極の”時間術”ついて解説します。

転職や自分への投資をして、時間単価を上げる

ここで残酷な事実をお伝えする。

「人生を安く他人に売り渡していると、自由にはなれない」

ということだ。根本的に自由になるには、生き方を変えなくてはならない。こういう時間術の記事や本は、普通のサラリーマンや主婦の方にも響くように、誰でもできて、すぐに役立つことを書くことが求められる。ベストセラーを目指すなら、そうするしかない。本当に自由を求める人は、ごく少ないからだ。だが本記事は、その制約を完全に取っ払って「本当のこと」を書く。

時間単価が低いとお金持ちにもなれないし、時間持ちにもなれない。当たり前のことなのだが、ここを理解していない(あるいは目を背けている)人が非常に多い。時給2千円の人が月100万円を稼ごうと思ったら、必要な労働時間は500時間になる。4週で割ると125時間。週5日で割ると25時間だ。24時間しかない1日のうち25時間働かないといけないという、物理的に不可能であるという計算になる。

これが時給5千円ならば、必要な労働時間は200時間となり、同様に計算すると週40時間、1日8時間だ。かなり健全な数字になる。ちなみに僕の時間単価(もはや時給という言葉は使わない)は1時間10万円なので、10時間の稼働で100万円になる。月200時間やれば2000万円になるが、僕は自分と家族が自由に生きていくためには月300万円も収入があれば十分だと考えているので、それだと30時間だ。これはあくまで単純計算だが、自由な時間が増えるのも当然だろう。

何が言いたいかというと、時間単価を上げないと、自由な時間は増やせないということだ。今は企業の採用は売り手市場なのだから、積極的に転職をすればリスクを抑えて時間単価を上げることができる。そのためには、資格を取ったりスキルを身につけるために自己投資も必要になったりするだろう。

時間単価が上がれば、ある程度は時間をお金で買うこともできる。会社の近くに住むとか、家事代行サービスを使うとか。さらには、人生を安く他人に売り渡す生き方、つまり雇用される生き方自体に限界がある。雇う側の立場で考えたらそれも当然で、よほど特殊なスキルがあればまだしも、基本的にはリスクがなく責任も取らず、それほど頭も使わずに安定した給料を貰い続けようという人に、それほど高い給料を払えるはずがない。

「そんなことはない。うちの会社には、頑張れば報われる仕組みがある」と思える人は恵まれている。そういう人は、まずは自分に投資をして、出世を目指してみるのも悪くはない。スキルを高めて効率を意識し、時間単価を上げる仕事の仕方を追求すれば、社内でのあなたの評価も高まることだろう。そうして高めたスキルはいずれ、自分のビジネスを持つ際の武器にもなる。

ビジネスを持つと自由時間が顕著に生まれる

本業でそこまで時間単価を高められないという人は、自分のビジネスを持つしかない。と言っても、いきなり会社を辞めたり離婚する必要はない。副業から始めれば良い。副業をすると時間がなくなると感じるかもしれないが、そこは長い目で見よう。理想の状態に近づくには、時間やお金を投資する時期も必要だ。

そしていずれは、会社に雇われない生き方を目指す。「人生を安く他人に売り渡さない」ことが究極の、やらない時間術だ。ぶっちゃけて言ってしまうと、「詰め込む」「集中する」「やらない」時間術全てを足し合わせても、自分のビジネスを持つことにより生まれる自由な時間とは比較にもならない。

1年365日、朝起きてから夜寝るまで、いや寝ている間の時間さえもが「自分の時間」であり、「自由な時間」になる。忙しいのか暇なのか、それすら関係がない。自分の時間を好きなように生きてさえいれば、時間の使い方としてはそれが正しい。スキマ時間を活用してタスクを捌く、なんてのは本当に瑣末で、どうでも良い話だ。

「どうやって自分のビジネスを持つのか」というのは本記事のテーマではないので多くは書かないが、ごく簡単に言えば、まずは「商品」をつくって売れば良い。「商品」といってもモノではなく、コーチングやコンサルティングといったスキルをあなたの強み、そしてあなたが助けたい人と組み合わせて、求める人がいるサービスをつくるということだ。「商品」を作ったらイベントやセミナーを開催して、オンラインサロンをつくり、情報発信をする。至ってシンプルなやり方だ。

「起業するからには、世界を変えるようなサービスをつくりたい」と思うかもしれない。スタートアップという発想だが、ほとんどの人にとっては、最初からそれはハードルが高すぎる。できる気がしないから、何もしないということになりがちだ。それよりは、手軽に始められるスモールビジネスで「稼ぐ力」を身につけることからスタートするのがお勧めだ。名だたる起業家も、最初はシンプルな商品の販売やホームページの作成代行からスタートしたりしている。

世界を変えるビジネスをつくりたいなら、育てたスモールビジネスでの収入を基盤にして、そこから挑戦すれば良い。スタートアップとスモールビジネスは別の発想が必要なのは確かだが、スモールビジネスで月100万円を稼ぐことができない人が、スタートアップで成功して売上100億円の企業をつくることができるとは、僕には思えない。まずは小さく早く、副業からスモールビジネスで始めるべきだ。

自由になりたいなら、スモールビジネスがゴールになることも多い。僕個人の考え方としては、自由な時間が十分にあり、かつ月300万円の自由に使えるお金があれば、それで良い。「幸せな小金持ち」というゴールだ。数十億円はないと自由ではないと感じる人もいれば、月収50万円のサラリーマンでも満足できる人もいるだろう。何がゴールになるかは価値観の問題なので、好きな生き方を選べば良い。

徹底的に仕組み化・自動化する

自分のビジネスをつくったら、それを仕組み化・自動化していく。これが、やらない時間術のクライマックスだ。仕組みをつくるには時間がかかるから「やったほうが早い」となりがちだが、一度つくった仕組みはそのあとずっと動き続けるため、時間を生み出し続けていく。

『「週4時間」だけ働く。(ティモシー・フェリス/青志社)』という名著がある。著者のティモシー・フェリスは著名な経営者かつ投資家で、かつてはハードに働いていたが、あるとき、生き方をがらっと変えた。その結果、会社の経営もうまくいくようになり、自由を手に入れることができた。本書では、その考え方・やり方を徹底的に説明している。

厚い本だし、ツールの説明などは古くなっている部分もあるが、僕はこの本に大きな影響を受けている。いや、正直に言えば、サラリーマン時代に読んだときはあまりピンと来なかった。最後のほうは飛ばし読みしたし、今でもこんなに分厚い必要はないと思っている。だが、その考え方は10年以上もかけてじわりと染み込み、どうしても気になって、3回Amazonで売ったこの本を3回買い戻した。気がつけば、自分もそういう生き方を目指している。こういうのがきっと、名著なんだと思う。そういう本を、僕も書きたいと切に願う。

話が逸れた。仕組み化・自動化の話だ。例えば、セミナーを動画化するとする。動画を収録するときは何度か撮り直す場面もあるし、編集も必要になる。それをどこかにアップして、購入した人が視聴できるようにする仕組みも必要だ。フォローのメールなども組まなくてはいけない。結構な手間がかかるので、だったらリアルタイムでセミナーをしたほうが楽だ、となりがちだ。1回限りなら、確かにそうだろう。しかし仕組みをつくれば、そのあと100回でも10000回でも、自分の労力はゼロでセミナーをお届けすることができる。

人を使って、ビジネスを自動化することもできる。社員を育てて、あなたがやっていることをほとんど全て渡してしまうことも可能だ。僕は社員の管理よりもシステムを使った自動化が得意なので社員を雇ってはいないが、それでも作業をマニュアル化すれば、事務代行のサービスなどに外注することも可能になる。「自分しかできない」という感覚は多くの場合は思い込みであり、権限・作業の譲渡を突き詰めていくと、自分の手元に残る作業はほとんどない。

そうやって仕組み化・自動化をすると売上が減るのかというと、そこにはほとんど相関関係がない。むしろ、そうして生み出した時間で新しい「商品」を開発して売り出したり、外に出て活動するか情報発信を強化したりすることで売上は増える。社長が暇になるほど会社の売上や利益が増えていくのは、僕の会社だけでなく、僕がサポートしてきたクライアントさんに共通する傾向だ。

ビジネスには、お金を投資してお金を生み出すこともできるし、時間を投資して時間を生み出すこともできる。時間を投資してお金を生み出すこともできれば、お金を投資して時間を生み出すこともできる。いわば「魔法の箱」だ。ビジネスじゃなくても、日々の生活でもできることはある。いつかは自分のビジネスを持つことをイメージしながら、できることから始めたら良い。

投資にリスクはつきもの

もちろん、そんなに甘い世界ではないことも、最後にお伝えしておく。システムや人に投資をしてレバレッジをかければ少ない時間で大きな利益を生み出すことも可能だが、方向性を誤れば大きな損失が出ることもある。スモールビジネスに留まれば、そのリスクは小さくなるが、それでも変化への対応は常に必要になる。常に次の一手を考え続け、風を読む。そういう生き方。自由には、責任が伴うということだ。

それでも本当に自由になりたいなら、自分の時間を生きたいなら、自分のビジネスを持って育てるしかない。仕組みをつくり、効率化することで、膨大な時間が生み出せる。副業から始めればリスクはないので、ぜひあなたも、チャレンジしてみて欲しい。

安田 修 株式会社シナジーブレイン 代表取締役 信用の器 フラスコ 代表

(写真はイメージです/PIXTA)