
この記事をまとめると
■2028年から発売される新車にペダル踏み間違い時加速抑制の装着が義務化となった
■高齢運転者による暴走事故が社会問題化したことで法改正が実現
■運転者個々が細心の注意を払って安全運転に努めることがなにより重要だ
踏み間違い事故は高齢ドライバーによるものが大半
国土交通省は2025年6月17日(火)、道路運送車両の保安基準等の一部改正を行い、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の搭載義務付けを行うことを発表した。国産車に関しては2028年9月1日より、輸入車は2029年9月1日より販売される新車へ装着の義務化が実施されることになっている。
高速道路や一般道路での逆走事故とともに、ブレーキとアクセルの踏み間違いにより店舗に突入するなど暴走する事故についての報道はいまだにあとを絶たない。逆走事故については日本での運転に不慣れな外国人なども多いが、ペダルの踏み間違いによる事故は高齢者によるものが圧倒的に多い。
警察庁の資料によると、自動車運転者による年齢別死亡事故要因として、75歳以上の高齢運転者では「操作不適」が全体の27.6%でトップとなり、そのなかでブレーキとアクセルの踏み間違いが6.6%となっていた(75歳未満の運転者では0.8%となっていた)。アクセル全開となって道路上で暴走したり、駐車スペースの先にある店舗に勢いよく突っ込むといった事故が全国で頻発しているのである。
重大な事故を起こしたばかりという状況のなか、事故当事者として現場検証時に警察官から尋問を受けるとき、けっして誘導しているわけではないのだろうが、「ペダルを踏み間違えたのでは?」と聞かれれば、実際のところがはっきりしないなか、「そのとおりです」といった受け答えをしてしまっているケースもあるようだとの話も聞く。
とにかく、高齢運転者による車両暴走事故というのが社会問題となっているのは間違いないことであり、このような事故防止について、単にドライバーの自己責任にだけ任せるのではなく、社会全体で取り組む時期にきていることは間違いない。
踏み間違い防止装置の条件は?
義務装着されるペダル踏み間違い時加速抑制装置について、国土交通省によると、1994年11月開催の「国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)」において制定された国際基準を満たすものとされている。
主な要件としては、急発進抑制に関するものでは「障害物の手前1メートル及び1.5mに停止状態でアクセルをフルストロークまで踏み込んだ場合」、「障害物に衝突しない」、「障害物との衝突時の速度が8km/hを超えず、障害物がない状態に比べて30%以上速度が低下していること」となっている。
ドライバーへの警報に関する要件では、視覚警報が必須などとなり、機能の解除条件に関する要件では、解除中のドライバーへの表示、機能の復帰条件などとなっている。なお、義務装着の対象は運転者がクラッチ操作を必要としない乗車定員10人未満の乗用車としている。
現状販売される新車では、安全運転支援装置がほぼ全車に標準装着されている。このようになってからは目に見えて衝突事故全体は減少傾向にあり、板金修理入庫も目に見えて減っている(クラッシャブルボディの普及で事故を起こすと全損扱いになることが多くなったことなども影響しているようだが)。
ペダル踏み間違い時加速抑制装置の義務装着により、ペダル踏み間違いによる事故が目に見えて減少することを願うばかりである。ただデバイス頼みにするだけではなく、運転者個々が細心の注意を払って安全運転に務めることこそ、悲しい事故を減らしていくことにはもっとも重要であると、最後に付け加えておく。

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