
USB PD対応の充電器が100円ショップで販売される時代に
ただし価格は770円
スマートフォン向けのUSB PD(Power Delivery)対応充電器が登場してから数年が経つ。PD規格は、電圧と電流を柔軟に調整して効率的に給電する方式で、対応端末であれば従来より短時間での充電が可能となる。一時期は高価格帯のアクセサリだったPD充電器も、今や1000円以下の製品が登場する時代となった。
今回ご紹介するのは、ダイソーで税込770円で販売されている「超速充電器(E-PD-J1)」である。本製品はPD 20WとQuick Charge 3.0(18W)に対応し、USB Type-CとType-Aの2ポートを搭載。デバイス2台同時充電にも対応している。スマホとワイヤレスイヤフォンの同時充電といった実用的な運用にも向いているだろう。
ご存じのようにPDとは、USB Type-Cポートを通じて機器ごとに最適な電圧と電流を供給する「インテリジェント充電規格」だ。Quick Charge(QC)もまた急速充電規格の一種で、主にUSB Type-Aポートを介して動作する。
本製品の仕様を見ると、Type-C出力は5V/3A、9V/2.22A、12V/1.66A、Type-A出力はQC 3.0準拠で3.6~12Vを段階的に出力でき、最大合計出力は20Wとされている。これは同時充電時にどちらか一方の出力が制限されることを意味するが、スマートフォン+スマートウォッチやワイヤレスイヤフォンという組み合わせであれば現実的に問題はない。
実測での充電性能も悪くない。筆者がGalaxy S24 Ultraを本製品のType-Cポートに接続してPD充電を行ったところ、25%から100%までのフル充電に要した時間は約80分だった。さらに注目すべきは、25%から90%までの充電がちょうど60分で完了している点だ。この結果は、パッケージに記載された「iPhone12を60分で90%充電」という文句とも大きな誤差は無い。
近年のスマホ充電は「0%→100%」を目指すよりも、「20~30%→80~90%」という範囲内で済ませる方が、バッテリー寿命や発熱対策の点からも理にかなっている。そうした意味でも、本製品の急速充電性能は日常使いにおいて非常に有効だ。
本体サイズは実測で約10.5×5.4×5cm。重さは実測43gと超軽量で、プラグ部は折りたたみ式。このコンパクトさは、持ち運び用充電器としては非常に魅力的である。そして価格は税込で770円だ。
Type-A端子があるのも実は結構うれしい点
また、USB Type-Aポートも備えていることは地味ながらも大きな利点である。多くのガジェット類、たとえば安価なスマートウォッチやハンディファン、USBライトなどはType-Cには対応しておらず、Aポートからの電力供給が必須という製品も少なくない。本製品はそうした「非インテリジェント機器」のニーズにも応えられる柔軟性を持っている。
さらに本製品はPSE認証済み。これは日本国内で販売される電気製品に求められる安全基準を満たしていることを意味し、100~240Vのマルチボルテージ対応で海外でも使用可能だ。
今後、充電規格はUSB PDへとますます統一が進んでいくだろう。とはいえ、依然としてType-AケーブルやmicroUSB端子を使用する機器も多く存在しており、「完全なるPD時代」はもう少し先になると考えられる。今後登場するであろうスマートグラスやウェアラブル機器の中には、非インテリジェントな小型充電方式を採用するものもまだあるかもしれない。
将来的には「空間伝送型の充電」つまり数メートル離れた場所からでも電力供給ができるワイヤレス給電の技術が主流となる可能性もある。だが現時点では、熱損失の多いQi(ワイヤレス充電)方式ですら、そのエネルギー効率の低さから環境負荷の面で疑問視されている。
PDやQCに加え、今後はSamsungの「Super Fast Charging」、OPPOの「VOOC」、シャオミの「HyperCharge」なども市場を牽引していくだろう。そのような群雄割拠の中で、税込770円という価格で手に入るダイソーのPD+QC充電器は、戦略的にも大いに評価されるべき製品である。

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