
大阪府泉大津市の南出賢一市長によるSNS投稿が、XやInstagram内で波紋を広げている。Xの投稿に付けられたコミュニティノートは一時、「典型的なフリーエネルギー詐欺です」などと強い調子で断じていた(その後の編集で変更)。一体、何があったのか。
市長の投稿は7月6日夜のもので、泉大津市内にある助松公園で行われた「合成燃料製造装置」の可動式と実演会の模様を数点の写真と共に伝えている。市長のInstagramページでは動画も公開中だ。
南出市長のX投稿は「水と空気から光の力で、45分間で約20リットルの軽油ができました。その軽油を使って発電機を動かして、冷風機を作動させました。また、トヨタのランドクルーザーに精製した燃料を入れて、車を走らせました。まだまだ産まれたての技術。たくさん課題は出るでしょうが、試行錯誤を繰り返しながら、国民生活や地域産業、国益のためになる技術に成長するよう尽力します」(出典:X)。
市のWebサイトによると、今回の実演は、光とCO2を用いて合成燃料を生成し、その燃料で発電を行うというもの。「市は有限会社ティー・エヌ・プランと連携し、サステイナブルエネルギー開発株式会社の協力のもと、新たなエネルギー確保の手段として『合成燃料製造装置』により生成した合成燃料を活用した実証実験をスタートしました」とある。実証実験は10月31日までの予定だ。
泉大津市は、2024年7月8日にティー・エヌ・プラン(大阪府和泉市)と包括連携協定を締結した。この時の発表文によると、同社は触媒を使って大気中の二酸化炭素と水から人工的に石油同等燃料を生み出す「人工石油製造」技術を研究しており、その実証実験フィールドを泉大津市が提供するという内容。今回、それを実行した形になる。
しかし南出市長の投稿には、XとInstagram双方のユーザーから賛否両論が噴出。「本当にすごい試みです」と評価する人がいる一方で、その信ぴょう性について疑問を呈する声も多く、中には「何か騙されてないか?」「だから理科の授業は大事なんだよ」といった声もあった。ティー・エヌ・プランがコーポレートサイトを持たず、詳細が分からない点も拍車をかけた。
●泉大津市の意外な回答
ITmedia NEWSは、連携協定を結んだ泉大津市の担当部署に今回の実験に関連した特許や論文などがあるか問い合わせた。すると、当初は「連携協定を結ぶ際に独自に調査し、特許を確認した」との回答。「ネットで言われているような意見は以前からあった。市としては慎重に進めている」としていた。
しかし、独自に確認したという特許がティー・エヌ・プランのものであるか照会を依頼したところ、翌日になって説明が大きく変わった。「今回の実演は、ティー・エヌ・プランではなく、(協力会社として名前が挙がっていた)サステイナブルエネルギー開発が申請中の複数の特許を利用したものだった」という。また連携協定を結ぶ際に「企業の審査はしていない」とも。
連携協定は、地域の活性化や課題解決を図るため、地方自治体と企業が協力する際に交わすものだ。しかし、今回は双方の認識にズレが生じており、技術面とはまた別の議論を呼ぶかもしれない。
次回はサステイナブルエネルギー開発に、今回の実演で使用した技術とSNSでの反応について聞く。

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