
●街角でフリップ掲げ「今晩、泊めてください」
歌手でタレントのあのが、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、6日・13日の2週にわたって放送される「今晩 泊めてください2~ボクが一生続けたいこと~」だ。
もう5年も見知らぬ誰かの家を泊まり歩く毎日を続けているシュラフ石田さん(33)。後編では、現在のスタイルのきっかけを作った台湾に足を運ぶ。石田さんの今回の旅を見届け、「ただの泊まりじゃないかもと思わされてしまった」と漏らしたあのが、自身の「一生続けたいこと」についても明かした。
○異国の見知らぬ男を泊めた孤独なエリート学生
2025年1月、石田さんの姿は台湾にあった。1991年生まれの石田さんは、一浪して進んだ大学在学中に人生観が変わった。特に影響を与えられたのが、台湾への旅行。そこで見知らぬ人の家を泊まり歩いた経験が忘れられず、28歳のときから、フリップを掲げて「今晩、泊めてください」とさすらいながら生きてきた。
原点とも言うべき台湾で、今回も、石田さんはさまざまな人との一期一会の出会いを重ねていく。
台湾編で「一番気になったのは、エリートの大学生」と振り返ったあの。石田さんは台北の街で、日本でいうところの東大とされる、台湾大学に通うヤマヒコさんが一人暮らしするマンションに泊まる。異国からやってきた、“見知らぬ他人の家を泊まり歩く生活を続ける男”を前に、ヤマヒコさんが孤独をのぞかせた。
あのは「もっと見たいなぁと思ったし、見返したいなぁとも思いました。結構深いというか、日本にも、同じような子がもっといるんじゃないかとも思った」と話す。
○「この映像を見てすごくよかったと思う」
また、一人の若い女性が、フリップを掲げる石田さんに興味を示したことで、「結婚という“契約”に縛られない」と決めて同棲生活を続けるカップルと知り合う石田さん。そこから、いまの台湾の恋愛事情を垣間見る。さらに、最年長94歳のおじいさんに歓迎された大家族との出会いもあった。
そうしたいくつものエピソードに、「言っても、『家に泊まらせてください』って、人の優しさに甘えることで続けているところがあると思うんです。だけど石田さんがそれをしなかったら、ぼくは今回のような物語を知ることがなかったんだなと思うと、この映像を見てすごくよかったと思う」とあの。
「エリート大学生のこともそうだし、台湾でも恋愛事情が変わり始めてるとか、そういった社会的なところも垣間見えるし、ただの泊まりじゃないかもと思わされてしまった。最後のおじいちゃんのお話とかも、ぼくは聞く機会がなかったと思うし。それがやっぱり面白いし、ドキュメンタリーの良さだなと思いました」としみじみと心に留めた。
●河村康輔氏に感じた魅力「動じない芯の強さ」
石田さんは「いろんな人と出会って、いろんな人生を知るのが面白い」と話す。普段から芸能界という個性の強い人が集う世界に身を置くあのだが、これまで出会ってきた人で印象的な人は、「芸能人じゃないんだけど」ということで、「一緒にお仕事させていただいた方で、コラージュアーティストの河村康輔さんです」と名前を挙げた。
「すごくハードコアでパンクなディレクションやアートワークをされている方なんです。見た目から怖くてイカツい方かなと思いながら会ったら、めちゃくちゃ普通の身なりで、中身は乙女くらい恋バナ好きで」
しかし、印象に残ると挙げたのは、パッと見から来る外見のギャップによるインパクトではなかった。
「ものすごく人の良さがあって、そこに感動したんです。いっぱいお話もさせてもらったんですけど、心の奥にある強さや本当のかっこよさを感じました。河村さんは、かっこいいものとか尖ったものを作っているから、外側に尖ることもできると思うんです。それって自分を守ることにもなる。でも、河村さんは自分自身がブレないし、ズレないから、外に尖る必要がないというか。動じない芯の強さがあって、そこがかっこいいなぁと思いました」と、見た目のその奥に感じた強さを話した。
○「おばあちゃんになっても、音楽はできる」
さて、3月に34歳になった石田さん。徐々に変化も生まれつつ、「人の家を泊まり歩いて死ぬのが夢」と変わらぬ意思を語る。そんな石田さんを見守ったあのに、現時点でずっとやり続けたいと思えるものはあるか尋ねると、「音楽です」と即答。
「音楽がいっぱい、ずっと身近にあるといいなと思う。死ぬのが何歳かは分からないけど、例えばおばあちゃんになっても、音楽はできると思うんです。大きいステージに立つとかじゃなくても、家族に聴かせるとかでもそうだし、とにかく音楽には囲まれていたいなあと思います」と、まっすぐに語った。
●あの2020年9月から「ano」名義でソロ音楽活動を開始。22年4月、TOY’S FACTORYからメジャーデビュー。同年10月、TVアニメ『チェンソーマン』エンディングテーマに「ちゅ、多様性。」が抜てきされた。23年末には『NHK紅白歌合戦』にも出場。24年3月、映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』で主演声優と主題歌を担当。映画『【推しの子】-The Final Act-』にもMEMちょ役で出演。音楽活動だけに留まらずタレント、女優、声優、モデルと多岐にわたり活動する。25年9月には自身初の武道館公演を開催予定。
望月ふみ 70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビュー取材が中心で月に20本ほど担当。もちろんコラム系も書きます。愛猫との時間が癒しで、家全体の猫部屋化が加速中。 この著者の記事一覧はこちら
(望月ふみ)

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