雛人形の顔を作る「頭師(かしらし)」を目指す男子高校生五条新菜(ごじょうわかな/CV:石毛翔弥)と、クラスの人気者で読者モデルの喜多川海夢(きたがわまりん/CV:直田姫奈)が、コスプレを通じて心を通わせていく学園ラブコメディ「その着せ替え人形は恋をする」Season2(毎週土曜深夜0:00-0:30、TOKYO MXほか/ABEMA・ディズニープラスFODHuluLeminoTVer)。2期スタートとなった第13話は、海夢の新たな“推し”への情熱が新菜を巻き込み、二人の関係がさらに一歩進む(かもしれない)ドタバタ劇が描かれる「五条新菜 15歳 思春期」。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】バニーガール姿の海夢、煌びやかなスタジオでの1ショット

■海夢の“推し語り”がフルスロットル

海夢がハマっているアニメ「こちら月夜野カンパニー」(通称:こちカン)の劇中アニメシーンからスタート。バニースーツ姿の美少女たちが暗殺稼業に勤しむというかなり癖の強い作品ながらも、新菜が素直に面白いと感想を伝えると、ここから海夢の“推し語り”がヒートアップ。海夢の推しキャラはクール系ドジっ子の「十六夜(いざよい)ありさ」で、キャラの魅力はもちろん、バニーガール姿へのこだわりを熱く語った末、最後はなんとも言えない恍惚の表情を浮かべながら「みんなバニーが大好きだから!」と新菜に詰め寄る。新菜はその有無を言わさぬ圧に押されてたじろぐが、新しい衣装が次々と登場しても、クラシカルなバニーはなくらないという海夢の言葉を聞き、これに雛人形を重ね合わせると、ひときわ深く共感するのだった。

1期から変わらぬ、いや、むしろパワーアップした海夢のオタクっぷりが冒頭から全開。好きなものを語る時のキラキラした表情や止まらないマシンガントークは本作の大きな魅力だが、海夢がギャルであることがさらなるギャップを生んでいる。「ガチ」や「良(よ)っ」、「テンアゲ」などギャル語での推し語りは新鮮で、これが本作ならではのオリジナリティーと言えるだろう。それでいて思考回路はオタクそのもので、キャラクター設定や作中のセリフを完璧に暗唱する姿には、「わかりみが深い」「早口で捲し立てるの、まんま自分で草」といった共感の声がSNSで続出していた。また、作中作である「こちカン」のクオリティも非常に高く、これには「作中作のアニメだけで1本作れるだろw」などのコメントも寄せられていた。

バニースーツの構造問題に直面! 救世主はまさかの…

海夢の次のコスプレが「こちカン」のバニーガールに決まり、衣装制作に取り掛かる新菜。作中のバニースーツはストラップ(肩紐)がないデザインで、どうやって胸の部分を固定しているのか分からずに悩む新菜だったが、手芸用品店のベテラン店員から「コルセットのようにボーン(骨)を入れれば固定できる」というアドバイスをもらったことで思い通りの衣装が完成。さっそくスタジオへ入った新菜は、露出度の高い海夢のバニー姿に戸惑いながらも、なんとか無事に撮影を終えるのだった。

ここでの見どころは、手芸店の店員さんと新菜のやり取り。男性である新菜がバニースーツのコスプレをすると勘違いした店員さんが、驚きつつも「今はもうそういう時代」「人は皆、自分の着たい服を自由に着るべきだ」と偏見なく受け入れる懐の深さに、SNSでは「店員さんの返しが神」「この作品のこういう優しい世界観が大好き」といった温かいコメントで溢れていた。また、自身で調べることなく進めてしまったことに深く落ち込む新菜の真面目さや、胸部の布がめくれることはないと知って残念がる海夢の複雑な心境など、職人とコスプレイヤーそれぞれのこだわりも感じられる。このあたりは実際にコスプレをしている人にしか分からない領域だと思うが、作品を支える強固なリアリティを感じた一幕だ。

そして、自宅での試着シーンやスタジオでの撮影シーンは、一転してお色気ラブコメが全開。露出対策として肌色のストッキングを履き、「露出してるのに露出してない!? 完璧!」と自信満々な海夢に反し、ただの肌にしか見えずにドギマギする新菜の姿が対照的で、これにはSNSでも「五条くん、毎週キャパオーバーしてんなw」「わかってる、このアニメはこういうのでいいんだよ!」など、視聴者の興奮と笑いが入り混じったコメントが殺到していた。

■クラスみんなでハロウィンパーティー!

ハロウィン当日、海夢に誘われてハロウィンパーティに参加した新菜。カラオケで盛り上がるクラスメイトたちを横目に、自分がここにいてもいいのだろうかと気後れするも、みんなはそんな新菜を温かく迎え入れ、さらにはメイクができることを気持ち悪がらないなど、思わぬリアクションを見せる。過去のトラウマから引っ込み思案となってしまった新菜の内面に、新たな光が射し込まれんとするのだった。

ラストはカラオケルームでの会話劇。新菜は幼少期、仲の良かった女の子に雛人形が好きなことを気持ち悪がられた過去があり、それ以来友達もできずにひとりで過ごしてきた。それだけに、クラスメイトたちからポジティブに肯定されたことは新菜にとってとても大きな出来事だっただろう。このように新菜のセンシティブな内面を描いたシーンだが、その場所はカラオケルームで、バックでは菅谷乃羽(CV:武田羅梨沙多胡)がずっと歌っているという特殊な演出も印象的。とくに新菜が過去のトラウマを回想するシーンでは、神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」のサビがシンクロし、まさしくこの瞬間にトラウマを払拭するかと思わせてくれた。ところがその直後、乃羽が「五条君と海夢ちゃんって付き合ってんの?」と爆弾発言を投下したことで雰囲気は一変。シリアスエモい雰囲気から一気にコメディへと転換するという、じつに「着せ恋」らしいオチで締めくくられた。

ちなみに乃羽が一曲目に歌っていた曲はTHE PINBALLSの「片目のウィリー」。これは眼帯をしていた彼女のコスプレ衣装に合わせた選曲だと思われるが、こちらも良曲なのでチェックしてみてほしい。乃羽についてはこの歌唱シーンもそうだが、序盤の登場シーンもとても印象的で、今回は彼女の可愛さが目立った話数でもあっただろう。さて次回第14話「おっぱいは装備できるから」は7月12日放送予定。期待して待とう!

◆文/岡本大介

アニメ「その着せ替え人形は恋をする」第13話より/(C)福田晋一/SQUARE ENIX・アニメ「着せ恋」製作委員会