2025年7月20日日曜日の参議院選挙が近づいています。若い方が投票を行うメリットについて、経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

若者の投票で「シルバー民主主義」を打破しよう

参議院選挙が近づいています。「国の将来に大きな影響を与える重要な選挙なので、投票に行きましょう」「投票は国民の義務だから、投票に行きましょう」などという建前を述べるつもりはありません。本稿は、特に若者に向けて投票を呼びかけるものです。それが若者の利益になるからです。

シルバー民主主義という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「高齢者は人数が多く、投票率も高いから、高齢者を怒らせたら大変だ。一方で若者は人数も少なく投票率も低いから、若者を怒らせても怖くない。それなら、若者のための予算を削って高齢者のための予算を増やそう」と政治家が考えて行動することを指す言葉です。

政治家による高齢者優先の政策採用を阻止するには、若者が投票に行くことが重要です。「最近は若者も投票に行くから、若者を軽視した政策を採用すると、選挙で痛い目に遭うかもしれない」と政治家に思わせることが重要なのです。

投票日が忙しければ期日前投票を、住民票が住所と異なるところにあれば不在者投票を選択することもできるので、調べてみましょう。

政治に詳しくなくても投票しよう

「政治のことは、よくわからない。だれに投票したらいいかわからない」という人も多いでしょう。しかし、多くの有権者も同じではないでしょうか。政治に関心を持って、日頃から「政府はこうすべきだ」などと考えている人のほうが少ないと思います。それでも多くの人が投票に行っているのですから、とにかく投票しましょう。

投票所に着いたら、10分だけ情報を収集しましょう。昭和時代と異なり、今ならスマホで大量の情報が集められるでしょうから。それで気に入った候補者に投票すれば十分です。

有権者のなかには「有名人で名前を知っているから」「お祭りに来てくれて、握手をしてくれたから」「知人に投票を頼まれたから」などという理由で投票している人も大勢いるのですから、10分も真剣に考えたなら立派なものです。 

「10分考えるのも面倒だ」「10分考えてもだれに投票すべきかわからない」という場合には、白紙を投票してもいいでしょう。望ましいことではありませんが、投票することがとにかく重要なのですから。政治家には「若者が投票した」ということはわかりますが、「若者が白紙を投票した」ということまではわかりませんから。

「若者が投票したという事実」が将来の政策に影響する

何万人もの人が投票するわけですから「自分の投票によって当選者が決まる」ということは考えにくいでしょう。実際、過去の選挙でも1票差で当選者が決まったことはまれです。しかし、それでも若者が投票することは決して無駄ではありません。「若者が投票したという事実」が将来の政策に影響するのです。

正しい選択をすることは容易ではありません。今の政府に100%満足している人は少ないと思いますが、それなら野党に投票すべきかというと、そうとも限らないからです。「与党が続投すれば何が起きるか」は何となく想像できても、「野党が政権を獲得したら何が起きるか」を想像することは容易ではありません。繰り返しますが、それでも、投票することが重要なのです。

筆者の失敗談をご紹介しましょう。新入社員当時、投票日に独身寮で麻雀をしていたのです。四人とも、支持する政党は決まっていましたが、偶然与党支持者二人と野党支持者二人だったので、「麻雀を中断して投票に行く」ではなく「麻雀を続けることで、相手が投票に行かないように麻雀部屋に縛り付けておく」ことを選んだのですね(笑)。

当然、4人が投票してもしなくても選挙結果には影響しませんでしたが、筆者たちが見落としていたのは、シルバー民主主義を助長してしまうという可能性だったのです。我々が投票しなかったことにより、与党議員も野党議員も「若者への給付を減らして高齢者への給付を増やした方が票になる」と考えるようになってしまったのです。

ちなみに、現在の筆者は高齢者ですので、若者が投票に行かずにシルバー民主主義が強まる方が筆者自身の利益にはなるのですが、それでも若者に投票をよびかけているのは理由が2つあります。

ひとつは、教育の仕事をしていたので、純粋に「若者に役立つ情報を提供したい」という気持ちがあることです。もうひとつは、シルバー民主主義によって若者が困窮し、少子化対策が進まず、日本が高齢者ばかりの国になることを危惧しているからです。

年金保険料を払う人が減り、年金を受け取る人ばかり増えるようでは困ります。さらにいえば、何千年かすると日本人が1人もいなくなってしまうかもしれません。そうならないように、シルバー民主主義の行き過ぎを防ぎたい、というのが筆者の率直な気持ちなのです。

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

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塚崎 公義 経済評論家

(※写真はイメージです/PIXTA)