
職場の従業員からの要望で「冷房」をつけたところ、別の従業員が「消して」とうったえてきたら・・・。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。相談者は、職場で「エアハラ」が起こるのではないかと心配しているようです。
たしかに職場のエアコンの温度調整をめぐるトラブルは少なくありません。
たとえば、体調を崩した従業員がエアコンを切ったところ、別の従業員が暑いと感じて再びスイッチを入れた場合、前者が「エアハラだ」とうったえるかもしれません。
逆に、後者の従業員が「みんな暑がっている」と主張して、エアコンを消したい前者の従業員を問題視する場合はどうでしょうか。
気温が30℃を超える日が続く中、ネット上でもエアハラに関する書き込みが投稿されています。
「エアハラは毎年まじで苦痛すぎる 対策で下も長袖着てるのにそれでも寒い」 「冷房効きすぎてもはやエアハラ」
実際に寒くしすぎたり、逆に暑くしすぎたりする行為はハラスメントになるのでしょうか。また、職場の温度管理はどのようにすべきなのでしょうか。
労働問題にくわしい竹内省吾弁護士に聞きました。
●「過剰で一方的な温度設定」「立場を利用」がポイント──職場のエアコンの温度調節や、電源のオン・オフがハラスメントになる可能性はある?
職場におけるハラスメントは、業務上の地位や人間関係などの優越的な立場や状況を背景に、相手に身体的・精神的苦痛を与え、職場環境を不当に害することを指します。
エアコンの温度調整がこれに該当するかどうかは、『過剰で一方的な温度設定をおこない、立場を利用して設定の変更を認めず、相手に暑さや寒さの我慢を強いて就業環境を悪化させているか』がポイントです。
なお、厚労省の『事務所衛生基準規則』では、室温は18℃以上28℃以下が望ましいとされています。ただし、個々の体調や作業内容によって適温は異なりますので、個別の配慮や判断が必要です。
たとえば、エアコンの設定温度を一応決めておき、服装などで調整しつつ、その日の天候や体調に応じて周囲と話し合いながら一時的に変更できるルールを設けている職場では、エアハラが生じる可能性は低いでしょう。
一方で、上司などが寒がりの部下に嫌がらせをする目的で、わざと温度を低く設定し、その変更を言い出しにくい雰囲気を作っているような場合には、エアハラに該当する可能性が高いといえます。
●日頃のコミュニケーションが鍵──職場の温度管理はどうすべきか?
快適な職場環境を維持するためには、共通のルールづくりと日頃のコミュニケーションが欠かせません。
小さな違和感が大きなトラブルにつながらないよう、互いに配慮しながら、意見を交換することが重要です。
【取材協力弁護士】
竹内 省吾(たけうち・しょうご)弁護士
弁護士法人エース代表弁護士。慶應大卒。銀座を本店に、全国に5拠点を構える。労働分野を中心に、一般民事、家事、企業法務など幅広く扱う。著書に「少年事件ハンドブック(青林書院)」など。社労士法人エースクルー代表。士業コンサルを扱う株式会社HINANOの代表取締役。趣味は自家製ラー油作りと家具作り。
事務所名:弁護士法人エース
事務所URL:https://ace-law.or.jp/

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