
Windowsは原則ライセンスを得て利用する。さまざまな利用形態に対応するため、そのライセンスには複数の種類がある。Windowsがプレインストールされたマシンを購入して使っている場合、基本的にはライセンスを気にする必要はないはず。しかし、アップグレードやエディションの変更などをする場合に、ライセンスに注意を払わねばならないようなこともある。
また最近では、大手ECサイトなどで、OEMライセンスを持たない製品や、本来は単体販売ができないライセンスが売られることがあるようだ。トラブルを抱え込まないために、購入直後にライセンスを確認しておいたほうがいいかもしれない。
ライセンスの種類は大きく分けて3種類
Windowsのライセンスは、対象により大きく3つに分かれる。
1つ目は、Windowsのプレインストールマシンに適用され、対象のハードウェアのみで有効な「OEMライセンス」だ。このライセンスは、プレインストールマシンを製造するPCメーカーのみに販売される。
2つ目は、ユーザーが購入し、ライセンスもユーザーに対して適用される「リテールライセンス」(パッケージライセンスとも)。
3つ目は、EnterpriseやEducationといったエディションやLTSCを利用するための「ボリュームライセンス」。ボリュームライセンスは購入した組織(法人や学校など)に対して適用される。
こうしたライセンス形態とは別に、ライセンスの有効化方法として「プロダクトキー」と「デジタルライセンス」がある。前者は「コード」をインストール後のWindowsに設定することでライセンスが有効化される。リテールライセンスのうち、WindowsのパッケージまたはDSP版Windowsで利用される。
これに対して「デジタルライセンス」は、PC(Windows)側にライセンス固有の番号が組み込まれており、インターネットを経由で検証して有効化する。OEMライセンスやMicrosoftストアで販売されるリテールライセンスで採用される。
ボリュームライセンスの場合、組織内ネットワークに設置される「キー管理サービス」(KMS、Key Management Service)サーバーを使ってボリュームライセンスを有効化する場合と、「マルチライセンス認証キー」(MAK、Multiple activation key)による有効化の2つの方法がある。
後者のMAKは、特殊な「プロダクトキー」で、Microsoftの専用窓口に電話する、あるいは、ボリュームライセンスサービスセンターにインターネット経由で接続することでライセンスを有効化する。通常のプロダクトキーと異なるのは、1つのMAKで複数のライセンスを有効化が可能な点だ。
Windows上からツールを使ってライセンス情報を得る
ライセンス情報を得るには、「Windows Software Licensing Management Tool」を使う。これは、slmgr.vbsというvbscriptのスクリプトプログラムだ。このコマンドはライセンス操作などもするので、理解せずに適当なオプションで起動すると、ライセンス状態が変更されてしまうことがある。利用にあたっては注意が必要だ。
とりあえず、Windowsプレインストールマシン(OEMライセンス)やリテールライセンスのマシンでは、以下の2つのコマンドでライセンス情報を表示できる(記事冒頭画面)。
また、間違ったオプション(たとえばslmgr /?)を入力すると、メッセージボックスでコマンドの簡易ヘルプを表示する。Microsoftのサイトにドキュメントがある(https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-server/get-started/activation-slmgr-vbs-options)。
このコマンドは、応答の大半をメッセージボックスで返す。前記2つのコマンドも応答はメッセージボックスである。
PCメーカーがWindowsをプレインストールマシンに組み込む方法
「OEM Activation 3.0 System」
Windows 11のライセンスには、ユーザーがプロダクトキーを入力して有効化(アクティベーション)するものと、メーカーなどがあらかじめライセンス情報をハードウェアに書き込んでおき、インターネット接続が可能になると自動的に有効化がされるもの(デジタルライセンス)の2つがある。
パッケージライセンスでもMicrosoftストア経由の場合、デジタルライセンスとなる。これはMicrosoftストアがユーザー(Microsoftアカウント)と結びついており、ライセンスとユーザーの紐付けが可能になるからだ。
現在、PCメーカー(MicrosoftはWindowsのライセンス先をOEMと呼ぶ)が、デジタルライセンスをWindowsプレインストールマシンに組み込むための方法を「OEM Activation 3.0 System」という。番号があるのは、OEM Activationが改訂されてきたからだろう。
デジタルライセンスはWindows 10で始まった。プレインストールマシンでは、2015年11月のアップデート版(Ver.1511)からの対応だったと記憶する。OEMメーカーは製造時にACPIのMSDMテーブルにOEM Activation 3.0 Digital Product Keyという機器個別のデータを書き込む。
ユーザーがプレインストールマシンをインターネットに接続したとき、Windowsはハードウェアに記録されているProduct Keyを使って、Microsoft認証サーバーからデジタルライセンスを得る。これでWindowsが有効化される。このときハードウェア構成がMicrosoft認証サーバー側に記録される。
PCが再インストールされても、ハードウェア構成が同じであれば、デジタルライセンスを得ることができる。 なお、プレインストールマシンの場合、以下のコマンドでACPI MSDMテーブルにあるProduct Keyを調べることができる。
get-ciminstance softwarelicensingservice | select OA3xOriginalProductKey
ボリュームライセンスのアクティベーション
ボリュームライセンス(VL)の場合、組織内のクライアントマシンが25台以上であれば、Key Management Service(KMS)を利用することができる。KMSは、組織内のネットワークでWindows Serverを動かし、KMSホストを動作させることで、組織内のVLクライアントからの認証をまとめて処理できる。
クライアントマシンが25台未満の場合、個々のPCがMicrosoftのVL認証サーバーにアクセスしてアクティベーションを行う。これをMultiple Activation Key(MAK)という。

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