奨学金が理由で「婚約破棄」されたかもしれない──。そんな悲しい投稿がSNSで注目を集めている。

投稿者によると、家庭の事情で奨学金を借りて大学に進学し、卒業後は計画通り返済していた。しかし、婚約した相手から「借金だ」と指摘され、最終的には「借金に抵抗のない、だらしない」というレッテルを貼られた可能性があるという。

結果として、関係が破綻したことが示唆されている。ここまで価値観が食い違えば、「婚約破棄」はやむを得ないようにも思えるが、当事者に未練があれば、そう簡単に割り切れるものではないだろう。

では、奨学金を返済していることを理由に婚約を破棄するのは、不当とは言えないのだろうか。また、婚約破棄された場合、相手に慰謝料を請求できるのか。鈴木菜々子弁護士に聞いた。

奨学金の返済がある「だけ」で婚約破棄したら・・・

──奨学金の返済を理由に婚約破棄するのは「不当」といえないでしょうか。

借金を理由とする婚約破棄が「不当」かどうかは、借金の理由や金額、返済状況(滞りなく返済をしているか)、収入に占める毎月の返済額の割合等の個別的事情によると思われます。

たとえば、借金が結婚後の生活の家計を圧迫し、結婚生活に悪影響を及ぼすことが予想される場合、婚約破棄は「不当」とはいえません。

ただし、奨学金は、利率が低く、毎月の返済額も比較的少ないケースが多いです。収入から無理なく返済しているのであれば、「奨学金の返済がある」という事実だけを理由に婚約を破棄することは「不当」であると考えられます。

●不当な婚約破棄には「慰謝料」請求が可能

──婚約破棄された場合、相手に慰謝料を請求できますか。

婚約の成立が認められ、それを不当に破棄した場合は、民法上の不法行為にあたり、慰謝料の請求が認められることになります。

すでに述べたとおり、問題なく返済できているのに、奨学金の返済があるという事実だけで婚約破棄をしたのであれば、破棄された側は相手方に慰謝料を請求することができます。

ただし、もし「奨学金はない」などと積極的に事実と異なることを相手に伝えていた場合は注意が必要です。あとから奨学金の存在が発覚したことで信頼関係が崩れた場合、婚約破棄が「不当」とならず、慰謝料が認められない可能性もあります。

【取材協力弁護士】
鈴木 菜々子(すずき・ななこ)弁護士
弁護士登録以降、離婚・相続を主とした家事事件に注力。千葉市の弁護士法人とびら法律事務所は、累計6000件以上の相談実績を誇る。特に離婚事件については、法的知識だけではないノウハウの蓄積に基づき幅広い案件に対応している。迅速な案件解決に力を入れている。
事務所名:弁護士法人とびら法律事務所
事務所URL:https://www.tobira-rikon.com

きちんと返済してるのに…奨学金が理由で「婚約破棄された」、これって許されるの?