
55周年にコンセプトモデルが登場
『光岡M55』(エムダブルファイブ)を試乗する機会を頂いた。
【画像】光岡自動車55周年記念!M55のプロトタイプからファーストエディションまで 全117枚
M55は、光岡自動車がホンダ・シビックをベースにオリジナルのボディを組み合わせたモデルで、光岡がこうした様々なコンプリートカーを長年生産してきたことはご存知だろう。
現在のラインナップは、トヨタ・ヤリスをベースとした『ビュート』、トヨタ・カローラがベースの『リューギ』(セダン、ワゴン)、そしてM55となる。マツダ・ロードスターがベースの『ヒミコ』は、3月にファイナルエディションを発表した。
最近では、トヨタRAV4がベースの『バディ』、ロードスターがベースの『ロックスター』のヒットが記憶に新しい。特にバディは増産に苦労したそうで、それを乗り越えた先に登場したのがM55だ。
M55は、2023年の光岡自動車55周年にコンセプトモデルが登場。そこで実に3000通以上の市販化を望む熱いメッセージが届き、2024年11月のデビューに至ったという。最初は100台限定の『ゼロエディション』で、応募者が350人に達した時点で受付終了としたところ、予想をかなり上回る速さで締め切りとなった。
現在はゼロエディションの生産中で、3月には2026年モデルとして『ファーストエディション』を発表。最初に購入できなかった応募者へ優先的に案内しつつ、現在も購入申込を受付中だ。
ゼロエディションは改良前のシビックLX(1.5L直列4気筒ターボ)がベースで、トランスミッションは6速MTのみ。ファーストエディションは現行モデルのLXに加え、e:HEVと呼ばれる2L直4+モーターのハイブリッドであるEXとLXから選択可能。トランスミッションはATのみだ。今回取材したのは広報車として設定された前者、ゼロエディションとなる。
「これはスカイラインがベースですか?」
レジェンダリーグレーメタリックと呼ばれる専用のボディカラーでペイントされたゼロエディションは、光岡と同じ富山に拠点を置くホイールメーカー『鍛栄舎』製の18インチアルミホイールがブラックということもあり、街中に持ち出すとなかなかの存在感だ。
実はガソリンスタンドで洗車をする際に「これはスカイラインがベースですか?」と聞かれたのだが、M55のメインターゲットは55歳くらいで、1970年代国産GTカーに思いを馳せてデザインされたというから、狙いは外していないと言える。
ベースはシビックなので、いいところも気になるところも最近試乗したばかりのシビックそのままだった。MTを駆使してのドライビングはスポーティだが、その分、街中での乗り心地は若干硬め。ロードノイズが大きめに感じたのは、ベースモデルが採用しているグッドイヤー・イーグルF1の影響かもしれない。シートも弱点のひとつだ。
しかし、そういったことはこのクルマにとって重要ではなく、個人的にはよくぞこのスタイルにまとめたと感じている。長年続けたことで、デザイン力と再現能力があがっている気がしてならない。このスタイルを実現するためにシビックを選んだそうだが、結果を見れば正解だろう。
ちなみに、ゼロエディションの価格は808万5000円と決して安くはないが、国産車ならではの信頼性の高さも購入理由となっている様子。輸入車を選ぶことができる層が、人とは違うものを求めてたどり着く側面もあるようだ。
世界で一番オロチに接してきた編集者
光岡自動車はM55のようなコンプリートカーを生産する『ミツオカ事業』、中古車を販売する『BUBU事業』、4輪&2輪輸入車を扱う『正規ディーラー事業』の3本柱となっている。
個人的にはやはり、ミツオカ事業が手掛けた2006年発表の和製スーパーカー、『光岡大蛇(オロチ)』が思い出深い。当時、スーパーカー雑誌ROSSOに所属していたため、その連載を担当するなど、『世界で一番オロチに接してきた編集者』を名乗る自信がある。
オロチの走行できる車両が完成して試乗した時のこと。光岡自動車本社のある富山のカントリーロードが、かつて若き才能が集まって誕生したランボルギーニが拠点を置く、イタリアのサンタガタ・ボロネーゼと重なって見えたという原稿を書いた。
それはフェラーリへのカウンターとして、自分たちが思う理想のクルマを作ろうしたフェルッチオ・ランボルギーニらの想いと、スーパーカーを作りたいと願った光岡進会長(当時、現取締役相談役)を始めとした人々の想いに、純粋さという点において何ら変わりがないと思うからだ。
光岡のクルマに対して斜に構えている方に私は、「思っているよりも彼らはもっと純粋です」と言い続けてきた。言い換えるならば、彼らはクルマを心から愛しているのだ。
今回別の取材で一緒になった清水草一センセイに「どこのカーマニアが来たのかと思った」と言われたのだが(注:褒め言葉です)、確かに、このM55からもクルマ好きの雰囲気が強く伝わってくるではないか。
そんなオロチの頃と変わらぬ雰囲気や愛が感じられて、素直に嬉しく感じた。機会があれば、過去何度か訪れた富山の本社で、今度はM55が作られるところを見たいものである。

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