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 悪魔といえばどうしても悪いイメージが先行する。甘い汁で騙されたら最後、魂を抜き取るまでぴったりと取り憑かれてしまうと思いがちだけど、中世には良い悪魔もいたという。

 思わずこちらから、「僕と契約して、悪魔召喚されちゃいなよ!」っと声をかけたくなるレベルなんだそうだ。

 ここでは絶対取り憑かれたくない中世の悪魔ワースト5と、取り憑かれてみたい悪魔ベスト5を取り上げてみた。

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絶対取り憑かれたくない悪魔ワースト5

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5. アクィエル

 アクィエルは日曜日を司る悪魔である。キリスト教神話の悪魔であるため、安息日を邪魔するためにありとあらゆる手段をとる。これ自体はさほど問題がなさそうだが、よく考えてみてほしい。どこかの議員に取り付いて、突然労働基準法を無効にしてしまったらどうだろうか? 今でもそう変わらないって?

4. スルガト

 ここに挙げた多くの悪魔は、中世の魔法書『ホノリウスの誓いの書』で初めて言及されたものだ。ホノリウスとは、12161227年にかけてのローマ教皇ホノリウス3世のことであると推測されている。この説が正しかろうとなかろうと、ホノリウス3世はわざと悪魔を召喚し、地獄へ叩き落とした人物として、教皇の間では有名だった。彼はサタンとの戦いに備えていたようで、召喚された悪魔は謂わばスパーリングのパートナーのようなものだったのかもしれない。

 そんな死闘を繰り広げた悪魔の中でもスルガトは群を抜く。こいつから逃れることはできない。誓いの書にはこうある。「スルガトはあらゆる鍵を解き放つもの」と。

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3. アガレス

 アガレスは男にも女にもなれる。男性の姿のときは、ワニに乗る老人の姿で現れる。女性のときは、若く美しい姿だ。

 人間が自ら悪魔を呼び込むとき、その理由は知識と力だ。アガレスはあっという間に世界のあらゆる言語の知識を授けてくれる。

 だが、教えてくれる単語は下品で、卑猥な言葉ばかりだ。高度な教養を持ちつつも、生きにくいことこの上ないだろう。

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 そう、それからアガレスは被憑依者を強制的に実家に返してしまう。ときにはそれもいいだろう。失業したとき、友人や恋人と別れたとき、家を失ったとき、最後に帰れる場所は実家なのだから。

2. ロノウェ

 ロノウェもまた教師だ。修辞学と誰かに巧く取り入る方法を教えてくれるらしい。デール・カーネギーの『人を動かす』は、ロノウェの力を借りて書かれたに違いない。

 だが、彼は老いた魂を奪う悪魔でもある。彼が離れるとき、みすぼらしく老いさらばえた人間なら誰でも一緒に連れて行ってしまう。

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 だから、口の上手さは学んだとしても、老けて見える家族や友人、ペットを見つめてはいけない。

1. ベルゼブブ

 映画や何かでおなじみで、その恐ろしさはかなり薄れてしまった。だから、彼が最後にフランスに現れたときの話をしよう。

 それは1600年代諸初頭のことだ。マドレーヌという若い尼僧は大変な目に遭っていた。ヒステリーの発作を起こしたり、卑猥な言葉を叫んだり、悪魔や魔女といかがわしい行為に耽っていたりと、メチャクチャだったのだ。彼女は他ならぬサタン自身に憑依されたと診断された。

 憑依は彼女のみならず、修道院の他の尼僧にも広まった。ルイーズという尼僧もマドレーヌと同じ発作に襲われ、状況は悪化するばかりだった。そこで、地域の宗教裁判長セバスチャン・ミカエリが呼ばれることになった。

 それでもサタンを追い払うことはできず、尼僧たちはある僧侶を非難するようになった。マドレーヌはこの僧侶にそそのかされて、いかがわしい魔術に耽溺するようになったというのだ。

 僧侶はこれを全て否定したため、ミカエリは僧侶の裁判を行うことにした。尼僧は僧侶と行った猥褻行為の数々を彼らの目の前で演じて見せた。

 これを見た僧侶は皮肉っぽく、自分が魔女だったならば自分の魂を悪魔に与えていたと述べる。

 この皮肉を咎められ、僧侶は逮捕された。彼は繰り返し拷問を受けた挙句、火あぶりになっている。また、尼僧たちも魔女であるとして捕らえられ、投獄された。

取り憑かれてみたい悪魔ベスト5

5. アザゼル

 アザゼルの起源は古い。”スケープゴート(身代わり)”という用語は、コミュニティの罪を1匹のヤギに象徴としてなすりつけ、崖から放り投げた行為を語源としている。放り投げられたヤギが出会うのがアザゼルだ。

 アザゼル(Azazel)とはAzaz(ゴツゴツした)とel(力)を意味し、ヤギが放り投げられた切り立った崖を暗示している。

 そんな彼は、今ではかなりの有名人だ。テレビシリーズの『スーパーナチュラル』やアメコミの『サンドマン』、デンゼル・ワシントン主演の映画『悪魔を憐れむ歌』にも登場する。

 日本の漫画でも主人公の座を射止めた。アザゼルに取り憑かれて、現代のポップカルチャーについて彼の意見を聞いてみたいと思わないだろうか?

4. ベン・タマリオン

 ユダヤ神話に登場するこの悪魔についてはあまり多くは知られていない。

 彼は姫に憑依する。2世紀のラビ、シモン・バル=ヨハイは取り憑かれた姫に近づくと、「ベン・タマリオンよ、去れ!」と命じ、悪魔を祓っている。

 ところで、姫の父親である王はどうやってこのラビのことを知ったのだろうか? どうやら姫は憑依されている間、彼の名を呼び続けていたらしい。姫が回復すると、反ユダヤ法は廃止された。

 ベン・タマリオンは、自分を祓うことのできる人物の名を憑依した人間に告げさせる。そして、その後の影響はユダヤ人差別の解消だけだ。憑依がどういったものか試すには格好の相手ではなかろうか?

3. アンドラス

 アンドラスは頭の中に侵入し、人殺しのアドバイスを与える。殺人がいい行為だというわけではない…が、まったく役に立たないというわけでもない。また、その姿はフクロウの頭をした人間だ。フクロウ好きにはたまらない。

2. アスモデウス

 アスモデウスは情欲の悪魔だ。憑依が終われば、きっといくつかはいい思いをしているはずだ。現代はこの悪魔がやんちゃをするにはぴったりの時代のはずだ。

 だが、解き放たれた欲望には困った側面もある。アスモデウスが女性に取り憑くと、彼女の新婚初夜に新郎を絞め殺させるのだ。こうして7人も殺させているところを見ると、彼女はそうとう魅力的な女性だったのだろう。

 なお、8人目の新郎は魚の内臓を香炉に入れることでアスモデウスを追い出すことに成功した。

 アスモデウスは水と鳥が苦手らしい。神を思い出すからだそうだ。憑依がうっとうしくなってきたら、カモメを追いながら海水浴をしたり、釣りを楽しんだりしていれば、勝手に出て行ってくれる。

1. ベルフェゴール

 こいつは凄い奴だ。まず、供物は糞便だから、召喚は容易だ。それでいて、学者肌なところがある。

 魔界で幸せな結婚が果たして存在するのか議論になったとき、それを確かめるためにベルフェゴールはわざわざ人間界までやってきた。そして、そんなものはないと結論づけている。

 ところで、サタンはある理由からベルフェゴールフランス大使に任命した。そして、またある理由から、彼の力が一番強いのは4月である。

 つまりは、彼に取り憑かれたら4月にフランスを訪れれば、大使になれるということだ。4月のパリがどれほど素晴らしいかご存じだろうか?

  『パリの四月(April in Paris)』という歌もあるくらいだ。ベルフェゴールは怠惰の悪魔だ。

 パリの休暇中はさぞやリラックス三昧の日々で、ときおり幸せな結婚探しなんてサプライズもあるかもしれない。憑依というよりは、甘酸っぱい恋愛映画的な体験が待っている。

 2025年現在、悪魔のキャラクター性や象徴性が再評価されており、ゲームやアニメ、AI創作でも“フレンドリーな悪魔”が人気を集めている。ア

 スモデウスやベルフェゴールなどのキャラは、乙女ゲームやファンタジー作品にもしばしば登場し、「ダークだけど癒し系」な存在として親しまれることも多い。

 こうしたキャラ化傾向は、古典悪魔学の枠を超えて今なお広がりを見せている。

References: The Five Best and Five Worst Demons to Get Possessed By[https://gizmodo.com/the-five-best-and-five-worst-demons-to-get-possessed-by-1719664267]

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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