
突然の病気やケガで働けなくなったら? 会社を辞めて収入が途絶えたら? そして、老後を迎えた時、年金はいくら受け取れるのか――。多くの人が漠然と抱えるこれらの不安への備えとなる「社会保障制度」。「働き方」によって、いざという時に頼れる保障の内容は大きく異なります。本稿では、横山光昭氏監修『いちからわかる!お金のきほん 2025年最新制度対応版』(インプレス)より、社会保険の給付金・公的年金制度について解説していきます。
会社員と自営業者とでは、保障内容が大きく異なる「社会保険」
働き方によってもらえるお金が異なる
社会保険で、受けられる保障は5つありますが、受けられる保障は、働き方によって異なります。そのため公的年金のように「もらえるお金」についても差が出てくることになります。会社員・公務員の場合は、すべての保障に加入しているので、もらえるお金が手厚くなりますが、自営業者・フリーランス、専業主婦(夫)の場合は、対象外となる給付金があります。
そのため、万一の備えに不安がある人は、民間の保険に加入する、貯蓄などで確保するなど必要の有無を確認するようにしましょう。ここでは、どんな給付金をだれが受け取れるのか、(図表2)にまとめています。

雇用されていない自営業者は対象外の給付が多い
「公的年金」は自営業者などは「老齢基礎年金」しか受け取れませんが、会社員は、それにプラスして「老齢厚生年金」を受け取ることができます。
「公的医療保険」は、医療費が高額になった場合の負担額が軽減される「高額療養制度」については、全員が対象。病気やケガで休業した場合に給付される「傷病手当金」は会社員のみが対象です。
「介護保険」は、医療保険と同じように、1カ月にかかった介護サービスの自己負担額が超えた場合の負担額を軽減させる「高額介護サービス費」と、介護のための住宅改修費の一部が軽減される「居宅介護住宅改修費」は、全員が対象です。
「雇用保険」と「労災保険」は、主に会社員が加入する保険。失業した場合や育児・介護などで、収入が減った場合をサポートしてくれる「失業給付」「育児休業給付金」などは「雇用保険」から受け取れます。勤務中・通勤中の病気やケガなどの治療費は「労災保険」により全額補償を受けられます。

自営業は、これらの給付金は対象外なので、万が一のお金を自分で確保しておく必要があります。
会社員の年金受給額は自営業者の2.5倍
働き方によって異なる年金制度
公的年金は1階部分に国民年金、2階部分に厚生年金、3階部分に企業年金と3階建てです。ただし、3階部分は公的年金ではなく私的年金の位置づけで、勤務先に制度がある場合のみ上乗せされます。また、1階建てか2階建てかは働き方によって異なるため、詳しく見ていきましょう。

第1号被保険者は、20〜59歳の自営業者、農業・漁業者、学生、無職の人など。国民年金のみに加入します。保険料は年度ごとに毎月一定額を納付します(2025年度は 月額1万7,510円)。
第2号被保険者は、会社員や公務員などで、国民年金に加えて厚生年金にも加入します。保険料は国民年金保険料と厚生年金保険料の合算。保険料率は月給やボーナスの18.3%に固定されており、半分を会社が負担します。
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養される20〜59歳の配偶者(年収130万円未満)で、国民年金のみに加入。保険料は、厚生年金制度が全額負担します。
会社員は高収入なほど将来の年金も増える
公的年金は受給時、どのくらいもらえるのでしょうか。まず、1階部分の国民年金(老齢基礎年金)は、20歳から60歳まで40年間保険料を納めた場合、月額6万9,308円(2025年度)を受け取ることができます。なお、この受給額は、物価上昇などを踏まえて毎年改定されます。
一方、会社員・公務員が加入する2階部分の厚生年金(老齢厚生年金)は、仕組みがやや複雑ですが、基本的に加入期間が長く給料や賞与が多いほど保険料は高く、その分受給額も高くなります。つまり、国民年金+厚生年金の2階分が受け取れる会社員・公務員の方が必然的に受給額も高くなります。2023年度の平均受給額は、国民年金は、年69万2,400円である一方、厚生年金は年176万8,320円でした。受け取れる額で比較すると、約2.5倍もの差が出る結果となります。


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