
新規事業担当者が知っておきたい投資のポイント
新規事業を手がける立場にあると、ベンチャー・スタートアップ企業とどう向き合うか、どこを見ればよいかは常に悩ましい。特に協業や買収といった検討が出てきたとき、「このベンチャー企業は信用できるか」「どんなVC(ベンチャーキャピタル)と組んでいるか」など、見えづらい要素が多いのも事実だ。
そんなときこそ役立つのが、資金調達の“裏側”を知っておくこと。今回は、近年海外で注目されているVCの動きと、新規事業担当者が知っておきたいチェックポイントを紹介する。
増加する「マイクロVC」──支援より“見守る”投資
かつてのVCは、資金を出すだけでなく、経営にも積極的に関与する存在だった。だが最近は、少額で多数に分散投資する「マイクロVC」が増加。特に米国では、アーリーステージの約2割を占めるようになっている。
特徴は、事前調査や役員派遣をほとんど行わず、企業の自主性を重視する姿勢。これは、「自分のスタイルでやりたい」というベンチャー企業側の変化にも対応したかたちだ。
この傾向は、新規事業の目線でいくと、将来的に協業する際のベンチャー企業の意思決定スタイルや、VCの関与度を見極める参考になる。
AIを武器にする「データドリブンVC」の台頭
もう一つの大きな変化が、AIによる投資判断の導入だ。近年では、大規模言語モデルを使ってベンチャー企業の事業計画や市場性を分析する「AIスクリーニング」が急速に普及している。
欧州の調査によれば、7割以上のVCが自然言語処理や生成AIをすでに活用中。特に、投資前の企業選定(ディールソーシング)や調査(デューデリジェンス)に使われている。
大企業がCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を立ち上げたり、外部ファンドに出資したりする場合、そのVCが「どこまでAIを活用しているか」は、今後のひとつの見極めポイントになりそうだ。
DAOによる“みんなで投資”の仕組みも登場
さらに進んだ仕組みとして、分散型自律組織(DAO)による投資も登場している。これは、出資者全員が投票で投資先を決める新しい仕組みで、特にブロックチェーンやWeb3分野での活用が進んでいる。
法制度や責任の所在など課題は残るものの、「投資判断が特定の上位層だけでなく、広く共有される」という構造は、従来型のVCとは大きく異なる。今後、特に米国などでDAO発ベンチャー企業が多数登場してくる可能性もあるため、基本的な理解は持っておきたい。
新規事業担当者にとってのチェックポイント
では、私たちが今すぐ実務に活かせる視点はどこにあるのか? ポイントは次の3つだ。
1. 出資VCの種類を確認する
関与度の高いVCか、マイクロVCのように任せる型かで、ベンチャー企業の意思決定プロセスが変わる。
2. AIをどのように活用しているか聞いてみる
VC側の選定基準や目利き力を見る手がかりになる。
3. 協業相手としての将来像を描いておく
どのような資金源・投資スタイルで成長しているかを理解すると、将来的な提携や買収時のリスク管理にも役立つ。
資金調達の裏側を知ると、事業開発の見え方が変わる
これらは、「VCの話なんて、うちは出資しないし関係ない」と思っている人にこそ、知っておいてほしい。ベンチャー企業の成長環境や支援者のスタンスを知ることは、新規事業開発の“背景”を理解することでもある。
どんな支援を受けて育ってきたのか。どのような目で見られて選ばれたのか。そうした視点を持つだけで、協業先の選び方、リスクの取り方、プロジェクトの設計の仕方まで、見えてくるものが変わる。
新規事業の相手選びをより確かなものにするために、資金調達の構造を知る視点を持っておくことが、これからますます重要になるだろう。
■本記事をもとに、生成AI(Notebook LM)を活用して構成したPodcastを配信中

コメント