
ル・マン優勝の499Pと技術的な関係が深い
フェラーリは10年に1度、特別な1台を発表する。288 GTOにF40、F50、エンツォ・フェラーリ、ラ・フェラーリと遡れる、その系譜上にあるのがF80だ。デモンストレーションに、フィオラノ・サーキットは選ばれなかった。速すぎるから。
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発表場所となったのは、イタリア半島北東部、サンマリノにほど近いミザーノ・サーキット。筆者が予習で見たアウディR8 GT3の映像では、英国のシルバーストン・サーキットと同等の広さに思えた。ところが、ここも狭く感じられるほどだった。
AUTOCARの読者ならご存知かもしれないが、F80の開発は2025年のル・マン24時間レースで優勝を飾った、499Pと並行して進められた。技術的な関係性も、かなり深い。
ボディは全長が4840mm、全幅は2060mm、全高は1140mm。ホイールはカーボンファイバー製が標準で、鍛造アルミも選べる。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2か、2Rを選択可能。サイズは前が285/30 R20、後ろが345/30 R21だ。
キャビン部分はカーボン製シェル
カーボン製シェルでキャビン部分は構成され、ラ・フェラーリより単体での重さは5%軽く、剛性は50%高く、幅は50mm狭い。そのシェルの前後に、押出成形アルミ製のサブフレームが組まれる。
サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式。同社プロサングエの技術を応用した、アクティブ・マルチマティック・コイルオーバーダンパーが、水平にマウントされる。アッパーウイッシュボーンは、3Dプリンターで整形されたものだという。
ダンパーは減衰力が可変するだけでなく、前後のピッチや左右のロールも抑制。アンチロールバーを不要としている。ブレーキディスクは新開発のカーボンセラミックで、ディスク直径は前が408mm、後ろが309mm。ホイールベースは2670mmとなる。
3.0L V6は499Pと共有 3モーターで1201ps
エンジンはバンク角120度の3.0L V型6気筒で、499Pにも載るもの。だがチューニングが異なり、最高出力は900ps/8750rpm。バンク内側へ位置する2基のターボには、電気モーターが内蔵され、回転数を問わずブースト圧が保たれる。
クランクシャフトには81psの駆動用モーターが組まれ、8速デュアルクラッチATへ繋がる。フロント側には、143psのモーターを2基搭載。総合での最高出力は1200psに達する。エンジン頂部が膝の位置程度と、低く抑えられていることも特徴だろう。
空力も抜かりなく、3枚のフィンでフロントの気流を調整。上下へ空気を割り振り、長さ1.8mもあるリアのディフューザーと、200mm上下し22度まで傾くリアウィングへ導かれる。ダウンフォースは、249km/h時で1050kgに達するという。
前後アクスルには、ブレーキ制御のトルクベクタリング機能を実装し、電子制御式リミテッドスリップ・デフも備わる。回生ブレーキは、計3基のモーターで対応。これらを統合し自然に制御するには、想像を絶するほど複雑なソフトウエアが必要になるはず。
僅かに後方へずれる助手席 799台限定
インテリアは、スタイリングと同様に素晴らしい。実際に押せるハードスイッチが、ダッシュボードへ沢山並ぶ。キャビン下面の気流の設計上、レッグルームは僅かに持ち上げられている。シートはサポート性が素晴らしく、運転姿勢も理想的だ。
ステアリングホイールはリムが四角いが、ル・マン・マシンとの結びつきを感じられて悪くない。ドライバーの胸元まで、寄せられることにも感心。シフトパドルはコラム側に付くが、F80ではステアリング裏の方が良いように思う。
助手席は運転席より僅かに後方へずれ、肩がぶつかるのを防いでいるが、ポジションは固定されている。前後へ大きくずれる、マクラーレンF1やGMA T50より隣人と会話しやすく、居心地が良く感じた。後方には荷物置き場があるが、本当に狭い。
ちなみに、F80の生産は799台の限定。お値段は、欧州では310万ユーロ(約5億3320万円)とのこと。

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