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量産版は4ドアのグランドツアラーに

ジャガーの次世代EVコンセプト『タイプ00(Type 00)』が、英国のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで一般公開された。同社は量産バージョンを数か月以内に発表し、新時代の幕開けとする計画だ。

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このコンセプトカーは、ジャガーの再生に向けた意思表明として昨年末に発表された。現在、ジャガーは欧州向けの全モデルの販売を1年間休止し、より高価格帯の新EVシリーズの開発に専念している。

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グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで公開されたジャガー・タイプ00コンセプト    AUTOCAR

その最初のモデルが今年末に発表される予定で、最大1000psもの出力を発揮するスリムな4ドアGTになるとされている。タイプ00で見られるように、内外装ともにジャガーの過去モデルとは完全に異なるデザインを採用している。GTに続き、より大型のリムジンスタイルのセダンと、ベントレー・ベンテイガに対抗する高級SUVが投入される予定だ。

コンセプトカーは2ドア・クーペだが、このボディタイプでは量産化されないとのことだ。しかし、ジャガーの飛躍的な進歩を象徴するクルマとして知られる1961年のEタイプを彷彿とさせるレイアウトであることから、コンセプトにこのようなボディを選んだのは巧妙な戦略だったと言えるかもしれない。

同社関係者によると、このコンセプトカーのサイズ、プロポーション、そして何よりもデザインは量産車に「非常に近い」という。実際、コンセプトカーとよく似たフォルムを持つ4ドアGTのプロトタイプが、昨年11月に公開されている。

この4ドアGTは、新開発のジャガー専用プラットフォーム「JEA」を採用している。発表によると、最大690kmの航続距離と、15分の充電で320kmを走行できる急速充電機能を実現するという。バッテリーサイズは未確認だが、100kWhを超えると予想されている。

大胆なフォルム、シンプルなディテール

車名には、これまで多くのモデルに用いられた『タイプ』という言葉が再び使用されており、今後のネーミング(命名戦略)が大きく変わらないことを示唆している。

タイプ00は、コンセプトカーらしく前方ヒンジのディヘドラルドアを備え、ホイールベースは量産バージョンよりも短いという。量産バージョンは、傾斜したルーフ、ロングホイールベース、独特のロングボンネットなど、昔ながらのジャガーの伝統を受け継ぐ、低くしなやかなクルマとなる。

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2024年11月に公開された新シリーズ第1弾の4ドアGT    ジャガー

また、重量のかさむリアウィンドウを廃止し、サイドカメラとデジタルバックミラーを採用している。

ジャガーによると、タイプ00のフォルムは、美しく豊かなプロポーションを強調する、長く自信に満ちたラインによって特徴づけられているという。表面処理は非常にシンプルかつモダンで、ほぼフラットだが、必要な部分には滑らかな複合曲線が組み込まれている。

全体的な印象は大胆だが、表面処理と控えめなディテールにより、12万ポンド(約2380万円、現行世代の2倍以上)の価格帯にふさわしい洗練性と抑制感を演出しようとしている。

フロントにはグリルがなく、16本のラインからなる『ストライクスルー(Strike Through)』デザインが装飾として使われている。同じデザインが長いボンネットの上部にもあしらわれ、アクセントとなっている。巨大な23インチアルミホイールにも、同様のデザインが採用されている。

これまでになかったアプローチ

インテリアはクリーム色の内装材で覆われ、レザーを排し、現代的で持続可能なテキスタイルを採用する。センターコンソールにはトラバーチンと呼ばれる本物の石が使われ、キャビンを貫くようにスパインが走っている。

エクステリアとは異なり、タイプ00のインテリアが量産バージョンにどの程度受け継がれるはまだ不明だ。

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ャガー・タイプ00コンセプト    ジャガー

ほとんどすべての点で、タイプ00のデザインは、2018年に発売されたジャガー初の量産EVであるIペイスのプロポーションと大きく異なる。Iペイスの開発陣は、ショートノーズのフォワードコントロールレイアウトを強調し、SUVとしてブランド化することに苦心した。これにより、キャビンフロアの下にバッテリーを収納できる、滑らかで車高の高い形状を実現した。新世代ジャガーバッテリーをどのように配置し、低いスタンスを維持するかは、まだ明らかになっていない。

フロントデザインは角ばっているが、低い車高により前面投影面積が小さく抑えられ、優れた空力性能を発揮するという。しかし、空力だけを追求したわけではないようだ。

ジャガーのマネージン・グディレクターであるロードン・グローバー氏は、開発プロジェクトの初期段階から、多くの現行EVが採用する「高重心でフォワードコントロールの形状」という陳腐なデザインを避けることが大きな目標だったと述べている。

こうした大胆なデザイン戦略に大きな影響を与えているのが、チーフ・クリエイティブ・オフィサーのジェリー・マクガバン氏だ。

マクガバン氏は、10年前のジャガーではこのようなアプローチは許されなかったと指摘している。「当時、会社はまったく異なる考えを持っており、まったく異なる競合他社をターゲットとしていました」

セダンのXEやXF、SUVのEペイスやFペイスといった従来のモデルは、BMWアウディから市場シェアを奪うことを目標としていた。今では、それらのモデルはすべて廃止が決まっている。

どんな顧客をターゲットとするのか

ジャガーの幹部たちも、リスクがあることを認めている。ブランド再生により、従来の顧客の一部を遠ざけてしまう恐れはあるものの、12万ポンドの支払い能力を持った新しい顧客層にリーチする決意を固めているようだ。

グローバー氏は度々、これから待ち受ける大きな挑戦に興奮していると語ってきた。新世代のジャガーを購入する人々について、同氏は次のように説明している。

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ャガー・タイプ00コンセプト    ジャガー

「何よりもまず、彼ら(新しい顧客層)は独立心を持ち、デザインを理解し、特別なものを求めています。若く裕福で、都会的な生活を送っていると考えられます。お金は豊富でも時間には余裕がないので、わたし達との関わりにおいても、あらゆる面で楽なものが求められるのです」

世界的にEVの成長が低迷する中で、新しいジャガーが受け入れられるかどうかについては不安視していないようだ。すべてはタイミングの問題であり、ジャガー全盛期を迎えるであろう2030年を見据えていると、グローバー氏は言う。

「当社の製品はゲームチェンジャーになるでしょう。最大690kmの航続距離と、15分の充電で320km以上の走行を実現します。これは、現在市場に出回っているものとは根本的に異なるものです」


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