
参議院選挙に向けて注目されている外国人の受け入れ。不法残留者の増加や治安が悪くなるなど懸念の声もあるが、その情報は本当に信じていいのだろうか。
「不法残留者が日本の治安を悪くする」「外国人犯罪が急増している」などSNSに氾濫する外国人への言論。
「基本的に間違っている」と語るのは、国連でも移民難民政策を専門に取り組んでいた国際基督教大学の橋本直子准教授。参院選でも注目されている“外国人政策”に対してデマ情報が飛び交っていると懸念している。
「外国人観光客は去年3700万人、中長期滞在の外国人は去年末で377万人。たくさんの外国人が日本にいるのにもかかわらず、不法滞在者は国際的な比較検討しても7万4000人は驚異的に少ない。日本の国境管理政策がうまくいっていることの証左」(国際基督教大学の橋本直子准教授、以下同)
日本に在留する外国人の数は、日本の人口の3%に当たる約376万9000人。不法残留者は約7万4000人で1993年のピーク時に比べ、4分の1ほどにまで減少しているという。
そして外国人の犯罪については。
「短期・中長期でくる人(外国人)両方増えているのに、刑法犯は近年横ばい。外国人が急増しているのに刑法犯の検挙人員数・頭数がずっと横ばいなのは、日本に入ってくる外国人で犯罪をする人が割合として減っている」
数字を見ると、外国人の受け入れが上手くいっているようだが、なぜ、外国人に関連するデマが横行しているのだろうか。
「日本人が予約した席に座っていたり、ゴミ出しなど、今までは説明なしに自然に守られていたルールが、阿吽の呼吸みたいなものが通じなくなった。そういうことも『治安が悪くなった』と言うのであれば、日本語がわからない観光客がこれだけ増えたら、そういったことはあっても不思議ではない」
外国人が増えることで、「なんとなく不安」という一般市民の感情も関わっているのではと話す。
少子高齢化の日本で外国人労働者が必要不可欠になる一方、なにか対策はあるのだろうか。
「日本語教育や暗黙のルールがわかる生活オリエンテーション、なかなかルールを守ってくれない人には金銭的なペナルティを課すなど、かなり具体的な共生施策の仕組み、その仕掛けづくりと説明をもっと前々からやっておかなければいけなかった」
橋本氏「外国人との共生を考えていかないと、日本の今の社会が成り立たない」

参院選でも争点となっている“外国人政策”。橋本准教授はこの議論が、選挙期間だけのものだけにならないように進めていく必要があるという。
「今のようなときに議論されることではない。平時にやっておくべきことで、7月21日になったら少し腰を落ち着けて、右も左もないイデオロギーは関係なく、本当に外国人との共生を考えていかないと、外国人を追い返したら日本の今の社会が成り立たなくなる。冷静に腰を落ち着けて真正面から政策を作って、実施していく。そして国民に説明していく。そのような姿勢が政治家に求められている」
メディア論などが専門の成蹊大学・伊藤昌亮教授とニュース番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーターでノンフィクションライターの石戸諭は、外国人問題が注目されていることについてこのように述べる。
「外国人問題は治安や犯罪の問題だと思われているが、これだけ盛り上がっている1つの背景は、お金の問題だと思う。自分たちの高い税金、社会保険料を取られ、それが外国人に使われているという論調がすごく多い。これもデマだが、自分たちのお金が取られることの不安や不満を誰かのせいにしたくて外国人が選ばれている」(伊藤氏)
「選挙でいえば参政党、日本保守党もそうだが、外国人問題を声高に叫ぶ政党が、支持を得やすそうだというところから争点化していた。つまり、現実的な政治の流れとリンクしている。それから、外国人問題とみんな言うが、外国人問題がそもそも何なのかといったときに思い描くことはバラバラ。オーバーツーリズム、労働力、それから不動産が買われている話だったり、全部問題が違う話だが同じように外国人政策と語っていることに関してすごく違和感はある」(石戸氏)
各党の参院選の主な政策に関するワードをみると、X全量調査では「外国人問題」に強い関心があることがわかった。強い意見があるトピックほど投稿数が多くなる傾向があるが、伊藤氏はこの調査結果を受け次のように話す。
「外国人問題の次に消費税がある。実は消費税は手っ取り早い問題として取り上げられやすい。自分たちが苦しいのは消費税のせいだと。だから消費税さえなんとかなればいいんだと。消費税や財務省、何かのせいにすることが多い。そういうようなことが今回、外国人にきていて、外国人は消費税よりも人格があるから攻撃しやすい。それに対して各政党がある種、給付か減税かのようなその場しのぎ的な対応が多く、外国人問題もその場しのぎのポピュリズム的な対応で、『こういう空気があるからこういう政策を言っとこう』のようなところが全体に出ていると思う」
X全量調査調査方法 Meltwater による分析
調査期間7月3日から13日まで
調査対象 公開されている全アカウントの投稿(リポスト、引用ポスト、返信も含む)
(『ABEMAヒルズ』より)

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