
4000MB/秒近い読み書き速度を発揮できるUSB4やThunderbolt(サンダーボルト) 4対応の外付けストレージデバイスを大喜びで導入した記憶も新しいなか、なんと転送速度が40Gbpsから80Gbpsに倍増した”Thunderbolt 5”規格に、普及の兆しがみえてきている。
Thunderbolt 5ポートは、一部のハイスペックWindowsノートPCへの搭載がみられるようになったが、Thunderboltと聞いてまず思い浮かべるのは、やはりMacintoshではないだろうか。
実際、現行のAppleプロセッサー「M4チップ」をベースに設計された「M4 Proチップ」と「M4 Max」チップを搭載したMacは、USB4/Thunderbolt 4ポートから、Thunderbolt 5ポートにグレードアップする。そのため、WindowsノートPCでの搭載ではあまり動きのなかったThunderbolt 5周辺機器だが、Mac搭載を機に、対応の拡張ドックやハブに、SSD外付けストレージ、エンクロージャーが、続々と市場に登場している。
そしてThunderbolt 5搭載の最も大きな利点と言えるのが、SSD外付けストレージのパフォーマンスアップだろう。実測で3800MB/秒台を発揮していたUSB4/Thunderbolt 4の倍速なので、8000MB/秒に迫る読み書き速度に期待できるわけだ。この速度は内蔵SSDストレージと並ぶ性能を、外付けで実現できると言える。
Appleシリコンの採用とともに、SSDの換装が困難になったMacでは、コスト面のメリットも非常に大きい。現状、Appleセキュリティチップへの対応があるためとはいえ、読み書き速度が7000MB/秒台のPC自作向けSSDストレージが、1TBで1万円弱、2TBで2万円強のなか、Mac CTOは512GBから1TBへの容量512GBアップで、なんとプラス3万円と、超強気の価格設定になっている。
容量が欲しいと思っても、その強烈な価格で躊躇ってしまうSSDストレージ容量の悩みを解決してくれるのが、Thunderbolt 5対応エンクロージャーになる。
使い方次第では常にMacBookと一緒に持ち歩くことになるが、4万円台中盤まで下がっている4TBのSSDなら、Thunderbolt 5対応エンクロージャーとあわせても、CTOの半分で済む8万円程度で、手にできるのだ。
そこで注目のThunderbolt 5対応エンクロージャーを2モデル購入。主要メーカーのSSDを使って、そのパフォーマンスをチェックするとともに、現状最大容量となる8TBの爆速外付けストレージを自作してみた。
徐々に増えている最大80GbpsのThunderbolt 5に対応したエンクロージャー。Amazonで購入できる2種類を購入し、試してみた実売3万円切りのThunderbolt 5エンクロージャー
今回選んだACASISとTREBLEETのThunderbolt 5対応エンクロージャーは、ともにAmazon.co.jpで購入でき、クーポンやタイムセールのタイミングなら、3万円で購入できる。そのうえ、6000MB/秒強の転送速度を謳っている。ケース全体で放熱できるアルミニウムケースに、高速SSDを不安なく使える冷却ファンの内蔵と、買いと思えるポイントが盛りだくさんなのだ。
まずは、そんな2つのThunderbolt 5対応エンクロージャーを紹介していこう。
USB3.2 Gen2に対応するACASIS「TB501Pro」
ACASIS「TB501Pro」のケースサイズは、実測で幅56.5mm、奥行き約116mm、厚さ約19.8mmで、重量は実測138gだ。ツールレスでSSDを着脱できるほか、Thunderbolt 5ポートの横には、内蔵ファンの回転オン/オフスイッチを備える。
内蔵ファンは、SSD温度に合わせて回転制御され、50度近くになると全開で回転するようになっている。使用状況に合わせてファンが動作するのはいいが、PCIe4.0×4 SSDは読み書きしていなくてもそこそこ発熱するので、TREBLEETエンクロージャーのように常時回転でもいいような気もする。
Thunderbolt 5コントローラーは、Intel JHL 9480で、従来のThunderbolt 3/4やUSB4との下位互換が保たれている。さらに「TB501Pro」は、最大10Gbps変換チップのRealtek RTL9210を搭載しており、USBポートでの動作もサポートしている。そのため、Thunderbolt/USB4ポートを備えていないWindows環境とのデータやり取りに良さげだ。
■Amazon.co.jpで購入
据え置きで使うのに良さげなPDポートを装備
もうひとつのは、Mac miniなどにマッチするシルバーカラーのTREBLEET製(型番なし)Thunderbolt 5対応エンクロージャー(以下 TREBLEET製TB5エンクロ)だ。デザインはシンプルというか、ややチープに感じたが、PD(Type-C)ポートを備えているのが特徴だ。
ケースサイズは、実測で幅65.6mm、奥行き約104mm、厚さ約18.6mm。重量は実測149gになる。Thunderbolt 5コントローラーは、同じくIntel JHL 9480で、Thunderbolt 3/4やUSB4との下位互換も問題ない。
■Amazon.co.jpで購入
ファンを搭載している点も、TREBLEET製TB5エンクロのポイントだが、ケース内への吸気ではなく、ケース内部の温まった空気を強制排気するように組み込まれている。これにより、SSD取り付けの側面にあるスリットから、新鮮な外気を吸気→熱で温まった空気は逆側面から強制排気といったケース内エアフローができあがる。
TREBLEET製TB5エンクロは、ケース底面と基板部の間に5.5mmほどの隙間があるので、SSD裏面に1.5~3mm程度の薄型M.2ヒートシンクを取り付けできそうだった。なにも手を加えずに使えるのがベストだが、ひと工夫で冷却効果アップを狙えそうではある。
主なメーカーのSSDでパフォーマンスを確認
ACASISとTREBLEETのThunderbolt 5対応エンクロージャーに、主なSSDを取り付けて、そのパフォーマンスをチェックしてみた。テストには、M4 Proを搭載するMac mini(macOS Sequoia)を使用し、Mac定番ストレージベンチマークの「AmorphousDiskMark」と「Blackmagic Disk Speed Test」を実行した。
パフォーマンスチェックに用いたSSDは、CTOでプラス18万円となる4TBを中心に、現在最大容量となる8TBモデルを用意した。
ACASISとTREBLEETのThunderbolt 5対応エンクロージャーに各SSDを取り付け、ストレージベンチマーク「AmorphousDiskMark」と「Blackmagic Disk Speed Test」でパフォーマンスを確認する。
まずはPCIe4.0×4 NVMe SSDの最速クラスとなるSamsung「990 PRO 4TB」、Sandisk(Western Digital)「WD_Black SN850X NVMe SSD 8TB」から確認していこう。
Samsung 990 PRO 4TB
Sandisk(Western Digital) WD_Black SN850X NVMe SSD 8TB
ACASIS「TB501Pro」製品ページのテストでも良好な結果を出していた990 PRO。どちらのエンクロージャーでも、「AmorphousDiskMark」はシーケンシャル読み出し速度6900~7000MB/秒、書き出し速度6400MB/秒を発揮している。「Blackmagic Disk Speed Test」の結果も含め、今回試したSSDのなかでは、トップクラスとなっている。
WD_Black SN850X NVMe SSDも、Thunderbolt 5ストレージとして文句なく優秀と言えるパフォーマンスを発揮している。ただ、読み出し速度こそほぼ同じだが、書き込み速度は700MB/秒前後下がった5700MB/秒前後となっている。
Samsung製M.2 SSDは、MacBook Mid2012などのSSDを換装する際に、一部のモデルで相性があっただが、Thunderbolt 5エンクロージャーに採用されているIntel JHL 9480との相性は抜群なようだ。
DRAMキャッシュレスSSDも爆速
続いてはコストを抑えた、DRAMキャッシュレスモデルをチェックしていこう。最新世代の製品では、PCIe4.0×4最速クラスと並ぶ、7000MB/秒の読み書き速度を発揮するようになっている。
Sandisk(Western Digital) WD_Black SN7100 NVMe SSD 2TB
DRAMキャッシュレスの定番モデルと言えるSamsung「990 EVO Plus」と、Sandisk(Western Digital)「WD_Black SN7100 NVMe SSD」からチェックした。
990 EVO Plusは、990 PROと比べてシーケンシャル、ランダムの書き込み速度が下がっているが、今回試したなかで二番手に位置するパフォーマンスとなっている。ランダム「RND4K QD64」の書き込み速度が130~165MB/秒台なのは気になるところだが、それ以外は優秀だ。
Windows環境下で、990 EVO Plusを超える実測速度となる読み出し7200MB/秒台、書き込み6900MB/秒台を発揮するWD_Black SN7100 NVMe SSD。残念ながらThunderbolt 5エンクロージャーでは、シーケンシャル書き込み速度がいまひとつ伸びていない。とは言え、WD_Black SN850X NVMe SSDと並ぶ結果なので、そのパフォーマンスに不足なしだ。
「Blackmagic Disk Speed Test」の結果は、990 PRO、WD_Black SN850X NVMe SSDから両製品ともに書き込み速度がダウンしているが、読み出し速度に関しては、遜色ない性能を発揮しているので安心だろう。
いろいろなNVMe M.2 SSDでチェック
ここからは、手持ちのNVMe M.2 SSDをいくつか試してみた。まず試したのは、コントローラーに定番のPHISON製「PS5027-E27T」を採用したDRAMキャッシュレスモデルのNextorage「Gシリーズ LE 4TB」。最大読み出し、書き込み速度は5000MB/秒前後になるが、4TBでも低価格なSandisk(Western Digital)「WD Blue SN5000 NVMe SSD 4TB」だ。
Nextorage Gシリーズ LE 4TB
Sandisk(Western Digital) WD Blue SN5000 NVMe 4TB
数多くのSSDに採用されているPHISON製コントローラーとTLC NANDチップを組み合わせたNextorageのGシリーズ LE 4TBは、「AmorphousDiskMark」、「Blackmagic Disk Speed Test」ともに、同じ現行世代のDRAMキャッシュレス3モデルのなかでは3番手となっている。
Nextorageは、かつてのソニー・ストレージメディア・ソリューションズを源流としたメーカーだけに、耐久性に定評がある。Amazonのタイムセールなどで特価が出ることが多いメーカーなのもポイント。価格を抑えて手に入れられるので、まめにAmazonを確認するのがいいだろう。
4TBで4万円を切っているWD Blue SN5000 NVMe SSD 4TBは、その性能を最大限に発揮している。Windows環境下での実測となる読み出し速度5500MB/秒、書き込み総度5000MB/秒に並ぶ数値を安定して発揮しているのがポイントだ。
実ファイルのコピーを試してみた
ストレージベンチマークを使ったパフォーマンスの確認の最後は、iPhoneで撮影したショート動画(MOV形式)や、RAW形式の写真データなどの読み書き速度を確認してみた。
使用したストレージは、M.2 SSD最大容量となる8TBのSandisk(Western Digital) WD_Black SN850X NVMe SSD 8TBとした。エンクロージャーは比較用に、USB4.0/Thunderbolt 4対応エンクロージャー(USB4.0/TB 4エンクロ)を用意している。
テストには容量3.02GB 51個 動画、10.52GB 1004個 RAWデータ、45.15GB 圧縮データといった3種類を用意し、コピーに要した時間をストップウォッチで計った。
まず、外付けストレージからのコピー(読み出し)時間を確認しよう。すると容量45.15GBの圧縮ファイルは、内蔵ストレージの書き込み速度が影響してか、大きな差は出ず、転送速度はいずれも約3300MB/秒となっていた。動画とRAWは1秒弱~強短縮を確認できた。
続けて外付けストレージへのコピー(書き込み)時間を確認すると、USB4/TB 4エンクロと比べて、45.15GBの圧縮ファイルで最大約6.78秒も短縮し、転送速度も5600MB/秒に達している。動画やRAWもコピー時間は半分に短縮と満足のいく結果となっている。
macOSの強みは外付けストレージからのブート!
CTOよりも、コストを抑えて最大容量8TBを実現できるThunderbolt 5エンクロージャーを使った、Thunderbolt 5外付けストレージ。組み合わせるSSD次第では、内蔵SSDストレージに劣らないパフォーマンスを発揮し、データの保管だけでなく、動画編集の作業ストレージなどにもいいだろう。
そんな好みのSSDで組んだThunderbolt 5外付けストレージのもうひとつのメリットが、mac OSのシステムドライブでの運用だろう。万が一、保証期間後に内蔵SSDストレージが故障した際にも、そのまま本体を使える。
また、普段使いとしてのデータストレージとは別のSSDを組み込んで使うのがおすすめだが、最新macOSと普段使っているアプリケーションの互換性チェックにも使える。
そこで、実際に現在最大容量となるSandisk(Western Digital) WD_Black SN850X NVMe SSD 8TBに、macOS Sequoiaをインストール。パフォーマンスを確認してみた。
Appleのサイトには、外付けストレージにmacOSをインストールする方法や、OS別のmacOSブータブルUSBメモリーストレージの作り方などが詳しく載っている。いろいろと役立つので知っておいて損はない。
システムドライブとして問題なく使えたACASIS TB501ProとTREBLEET製TB5エンクロ。システムドライブの状態で「AmorphousDiskMark」を実行すると、なにもデータストレージ使用時と変わらないパフォーマンスを発揮していた。
熱伝導パッドを追加して冷却性能アップ
データにもシステムドライブにもいい感じのThunderbolt 5対応エンクロージャー。今回試したACASIS TB501ProとTREBLEET製TB5エンクロは、パフォーマンス面に不安はまったく感じなかったが、若干気になったのが冷却面になる。
両製品ともファンを内蔵しているが、放熱の要となるのはヒートシンクを兼ねるカバーになる。しかし、付属の熱伝導パッドでは厚さが足らず、SSDとカバーの接触がいまひとつになることがある。
そこで、Amazonで厚さの異なる熱伝導パッドを購入し、WD_Black SN850X NVMe SSD 8TBに合わせて使ってみた。
「AmorphousDiskMark」の「SEQ1M QD8」を9回、データ容量64GiBで実行し、SSD温度は「Macs Fan Control 1.5.18 Free」で確認した。
ACASIS TB501Proは、ファンがSSD取り付け面とは逆側に搭載されているのもあり、最適な厚さの熱伝導パッドでカバーに熱を伝えることで、SSD温度は不安のない62度まで下がっている。
ケース内エアフローが考えられているTREBLEET製TB5エンクロも、熱伝導パッドなしでは運用するのが厳しい温度だが、最適な厚さのパッドを組み合わせることで58度までダウンしている。
熱伝導パッド代として1000円程度のコストとひと手間が必要になるが、最適な厚さの熱伝導パッドを用意、取り付けて運用するのが、いいだろう。
PCIe5.0×4 SSDでさらなる性能を引き出せる?
Thunderbolt 5エンクロージャーを触っていて、ふと思ったのが最大読み書き速度が1万4000MB/秒に達するPCIe5.0×4 NVMe SSDを組み合わせれば、さらなるパフォーマンスを発揮するのでは? というもの。
とは言え、Thunderbolt 5コントローラーのIntel JHL 9480は、PCIe4.0×4までの対応になる。そのため、最大でも8000MB/秒になるのでコスパは非常に悪くなるが、外付けストレージで読み書き速度7000MB/秒超えは夢のようではある。
そこで、PCIe5.0×4インターフェースに対応し、1万4000MB/秒のパフォーマンスを発揮するSamsung「9100 PRO」と、PHISONコントローラー「PS5026-E26」採用の前世代PCIe5.0×4 SSDのNextorage「X-シリーズ」、それに「PS5031-E31」を採用し、読み出し速度1万MB/秒を発揮する「Gシリーズ HE」を組み合わせてみた。
かなり期待して、9100 PROを取り付けたのだが、どのストレージも認識しない……。PCIe5.0×4 SSDは下位互換が確保されているので、PCIe4.0×4で動作するのだが、ACASIS TB501ProとTREBLEET製TB5エンクロに取り付けると認識しないのだ。
試しにUGREEN製USB4/Thunderbolt 3、4対応エンクロージャーに、PCIe5.0×4 SSDを取り付けると問題なく、PCIe4.0×4動作で認識、動作した。
Thunderbolt 5コントローラーのIntel JHL 9480、またはフォームウェアの問題なのか、読み書き速度8000MB/秒という夢は潰えたが、読み出し速度7000MB/秒、書き込み速度6000MB/秒台の外付けストレージでも大満足だ。
Thunderbolt 5エンクロージャーは買ってよし
冷却強化は必要になるが、Thunderbolt 5エンクロージャーとして満足ゆく性能を発揮したACASIS TB501Proと、TREBLEET製TB5エンクロ。読み書き速度トップとなったSamsung 990 PROシリーズを組み合わせれば、現在最速の外付けストレージを手にできる。
すでにM4 Pro Macを愛用している人、これから購入しようと考えている人はもちろんのこと、従来Macで外付けストレージを考えている人も、約1万円弱高くなるがThunderbolt 5エンクロージャーを選んでおけば、将来間違いなく幸せになれる。
おまけ
MacBook持ち歩き派は名刺以下のUSB4ポータブルSSDに注目
読み書き速度よりも携帯性を重視したいMacBookユーザーにおすすめの、ポータブルSSDが、Nextorageから近日登場予定となっているので、持ち運び派向けに紹介しておこう。
それが、最大転送速度10GbpsのUSB 3.2 Gen 2 Type-Cに対応する「NX-P2SEシリーズ」のUSB4対応モデル「NX-P4SEシリーズ」だ。奥行き約66mm、幅約40mmという名刺を大きく下回るボディサイズに、2TBで実測約23g(本体のみ)という日々持ち歩いても苦にならないコンパクトサイズになっている。
パフォーマンスをM2 Pro Mac miniで試すと、読み出し速度3400MB/秒、書き込み速度3100MB/秒を記録した。Windows 11環境下では、読み出し速度4000MB/秒、書き出し速度3700MB/秒と若干速度がアップしていた。
Thunderbolt 5に対応するM4 Pro Mac miniで計測すると、読み出し速度4500MB/秒、書き込み速度3600MB/秒を発揮した。Thunderbolt 5ポート搭載Macなら、USB4ポータブルSSDのパフォーマンスを超えるパフォーマンスを発揮するのは、うれしいポイントだろう。
■Amazon.co.jpで購入
■Amazon.co.jpで購入

コメント