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 ごきげんよう、アスキーグルメのナベコです。

 もうすぐ土用の丑。毎年この時期になると、飲食店ではこぞってうなぎメニューが登場します。ファミレス、定食屋さん、バーガーチェーンまで、様々なジャンルの飲食店がうなぎに参入していますが、カジュアル路線の代表格といえば牛丼チェーンではないでしょうか。

 中でも、2007年と早い時期からうなぎを販売してきたのが吉野家です。今年も「鰻重」を販売中。重箱に盛られた高級感ある見た目でおいしそうですよ。

 記者ナベコが吉野家うなぎメニューを見ていて、ふと気づいたのですが、他社がやっているうなぎと牛の相盛り”が、吉野家にはない!

 例えば、すき家は「うな牛」、松屋は「うなぎコンボ牛めし」と、看板である“牛”とうなぎの両方を一度に味わえるメニューを用意しています。私自身、丑の日に「今日はうなぎ」と決めて店に入ったのに、つい牛丼も食べたくなって相盛りを頼んだ経験があります。相盛りは価格的にもお得感がありますよね。

 それなのに、牛丼チェーンの老舗たる吉野家が、あえて“相盛り"を出していない。なぜ?

 そのあたりにこだわりがあるのではと思い、吉野家の商品開発に携わる担当者に直撃してきました。

衝撃!“相盛りナシ”の物理的な理由

 吉野家の商品開発部・佐元部長におききしたところ……。

 「相盛りですか? あまり企画として挙がったことがないんですよ」と返ってきました。そのわけは?

 「うちの鰻重、ぜひ見ていただきたいんですが……。お重に大きなうなぎがびっしり敷き詰められていて、牛丼の具をのせるスペースがないんです(笑)」

 言われてみれば。確かにそのとおり。吉野家の「鰻重」は一枚盛りと二枚盛りが用意されていますが、1枚盛りでもうなぎの大きさが十分にあるため、お重の上に“あそび”のスペースがほとんどありません。

 そうです。吉野家の鰻重の特徴はうなぎの大きさ。2022年から、従来より1.5倍サイズの大判の蒲焼を採用していて、価格に対して満足度高いボリューム感を誇っています。

 もちろん理由はそれだけではありません。そもそも吉野家には、相盛りのようなアレンジメニューの文化がなく、お客さんが卓上の紅生姜サイドメニューを使って自分好みにアレンジするスタイルが根付いています。背景には、かつて“牛丼一本”で勝負していた歴史があります。カレーと牛の相盛りが登場したのも、競合と比べると比較的最近のことです。

 「牛丼なら牛丼、鰻重なら鰻重。それぞれのおいしさを最大限に引き出せるよう、完成度を高めています。また、から揚げとろろキムチなどサイドメニューも充実しているので、好みに合わせて自由にアレンジしていただけます」と、広報の茶木さん。

 なお、鰻重と一緒に吉野家の牛丼の味も楽しみたい人には、「鰻重小鉢セット」(鰻重+牛小鉢)が用意されています。

「鰻丼」→「鰻重」ちょっとずつこだわり嗜好に

 ところで吉野家は現在、鰻重をレギュラー商品として通年で販売していますが、これは牛丼大手では吉野家のみ。歴史を紐解いてみましょう。

 吉野家うなぎをテスト的に発売したのは2007年で、翌2008年には夏の期間限定商品として全店で展開しました。当初は、どんぶりスタイルの「鰻丼」でしたが、2015年にはお重スタイルの「鰻重」へと切り替え、それと同時に通年販売を開始しました。

 通年販売を始めた理由は、「うなぎに固定のお客様がいる」から。季節を問わずうなぎを食べたいというニーズは一定数あり、さらに現在では訪日外国人のお客様も多く、年間を通して需要があるそうです。

 また、通年で販売計画を立てて仕入れることで、価格を安定させやすくなるというメリットもあるとしています。

 なお、販売開始から現在に至るまで、うなぎは年々改良を重ねています。タレは当初、幅広い年齢層に向けた“甘め”の味付けでしたが、より本格的で香ばしい味わいへとブラッシュアップしています。

 2023年からは、専門店さながらの「四度焼き」にこだわり、皮はパリッと、旨みはより一層凝縮された仕上がりにしています。

 商品開発部・佐元部長は「2023年までは、テリを出すような艶のあるタレを使用していましたが、2024年からはそれをやめて、より“いぶし銀”のような風合いにして、専門店に近い仕上がりを目指しました」と語りました。

 また、付属の山椒も、かつては大手メーカーの既製品を使用していましたが、2016年からはオリジナルブレンドに変更。さらに2024年からは、国産の山椒を一部に使用し、より香りを際立たせる配合へリニューアル。紅生姜や七味にも工夫を凝らしている吉野家らしい姿勢がうかがえます。

今年の丑の日は2回!売り切れは大丈夫?

 吉野家は、牛丼だけではなく「鰻重」にも本気でした。商品ごとに真摯に向き合って作り込んでいるため、あえて相盛りは用意しない点に妥協のなさを感じます。

 そんな吉野家では例年、土用の丑の日は鰻重を求めるお客さんで大盛況になるそう。特に、今年の土用の丑の日7月19日と30日の2回で、最初の19日は土曜日です。土用の丑が週末で、しかも天気にも恵まれるとかなりの来客が見込めるとか。

 売切れる心配はないかとお尋ねしたところ……。

 「吉野家では20年近くうなぎの実績を積み重ねているので、売り切れがないようにしっかり準備しています! ただし、確実に食べたい方には、テイクアウトの事前予約がおすすめです。テイクアウトの場合、前日までに予約しておくと10%オフになるメリットも。この特典を目的に事前に注文されるお客さんは多いです」と、広報・茶木さん。

 テイクアウトもよし、店内飲食に駆け込むのもよし。そもそも通年販売しているので、土用の丑じゃなくていつ食べに行ってもよし。ちょっとお高いですけど、仕事がうまくいった日に自分へのご褒美でかっこみたいです。

※価格は税込み表記です。

吉野家の「うなぎ」はなぜ相盛りがないの? 驚くべき理由……